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【シン屋根裏の散歩者】  作者: 石田ヨネ
第四章 急展開、頭の悪い鳥

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17 手がふさがっていては、もし、【次のカンチョー攻撃】された際に対処できない




          (2)





「マ――?」


 と、携帯電話を耳に当て、開口一番、綾羅木定祐が驚きの声をあげた。

 場面は変わって、【神楽坂事務所】の執務室にて。

「理事長の郷田が、逮捕された、だと……?」

『ああ、俺も、【マ】と叫びたい。世界の中心で、小一時間【マ】と叫びたい』

 と、電話の向こうから答えたのは、先ほど調査に行ってた碇賀元である。

『やれやれ、何も出てこないと思って、見張っていたんだがねい……、急に、なんか、中が騒がしくなったかと思ったらさ? 歯科技工室のテーブルに、まさかの【爆弾】が置かれてあってさ。例の、詰め物にも仕込めそうなくらい、【小っちゃい】のが――』

「はぁ、そんな、バカな……。本当に、爆弾なのか? それは?」

『俺も、そう思ったけどねい……、鑑定したら、間違いなく爆弾だったそうだ』

「はぁ? しかし、そうする、と――」

 と、綾羅木定祐は話している途中、


「う、ん……?」


 と、何かの視線を感じた。

 その先には、

「……」

 と、まるで、シモヘイヘ・スナイパーのような目で、こちらにカンチョーのシリンジを向ける、上市理可の姿があった。

 恐らく、【口】に向けようとしているのだろう。

 そのまま、上市理可がカンチョーを突き立てたまま、

 ――スッ、スッスッ――

 と、ロックオン気味のすり足で、距離を詰めてくる。

 そんなことなど、電話の向こうの碇賀元は露知つゆしらず、

『そうする、と――? の、続きは? どうなんだい? 綾羅木さん?』

「あ、ああっ! そ、その、爆弾は分かったとして、なッ――!」

 綾羅木定祐は通話しながらも、身体をくねり、上市理可のカンチョーを回避しようとする。

「(や、やめロッテ!! 理可氏!!)」

 と、電話の向こうに聞こえないように声をおさえ、上市理可を制止しようとするも、

「……」

 と、上市理可は、相変わらずのシモヘイヘ・アイのまま、エロチックかつ、くねくねと追尾をやめない。

『ん? どしたん? 綾羅木さん?』

 さすがに、碇賀元が違和感に気づくが、

「い、いやんっ! 特に……、その、仮に郷田か、医院の誰かが犯人だ、としてもッ……!」

『……?』

「そ、そのっ、だっ! わっ、わざ、わ、ざ! そんな分かりやすッ――」

 と、口へ30センチほどまでロックオンされ、ついに耐えかね!!

「や、やめろんっ!!」

 と、綾羅木定祐は拒絶の声をあげるも、


 ――ぴゅっ……!!


「うっ!? うわぁぁぁんッー!!」

 と、顔面に、カンチョー器から発射された液を浴びてしまう!!

 そんな、液を滴りつつ、

「もうっ!! だ! か! らッ! よい子は人に、カンチョーを向けるもんじゃありま、せんッ!!」

「え? だって、私? よい子じゃないもん?」

「ないもんじゃないがっ!!」

 綾羅木定祐が、抗議の声をあげた。

 なお、その間。

『……』

 と、碇賀元は唖然としつつも、『何ってんだよ、こいつら……』と思うより他なかった。



          ******



 気を取りなおして――

 手がふさがっていては、もし、【次のカンチョー攻撃】された際に対処できないということで、テレビ電話へと切り変え、話の続きをする。

「――で? 話を戻すと、無二屋たち、連中が、『郷田か歯科技工が犯人として話を進めていく』のは、分かる。物的証拠が見つかった以上は、仕方がない」

 まず、綾羅木定祐がそう切り出しながら、そのまま続けて、

「――だ、が? そもそも、警察が捜査してくる可能性がある中で、そんな分かりやすく、机の上に爆弾なんておくかね? ――ってのを、さっき、言おうとしてたわけだ」

『それに関しては、俺たちも、同じ感想だ』

『何か、置かれてたのも、わざとらしいしね』

「それは、外部の何者かが、郷田理事を陥れようとして、わざと置いた感じがするってことです?」

『ええ』

 と、聞いた上市理可に、賽賀忍が答える。


『それに、“木に隠れて見張っていた”限りでは、郷田や医院の人間の様子からは……、何か、隠し事をしているような感じは、なさそうだったけどねい。“わざわざ”、“木に隠れて見張っていた”限りでは、ねい』

「ふーん、あっそ」

『おいおい、もっと労ってくれよ、綾羅木さん。いくら忍者の末裔とはいえ、小一時間、【木に隠れる】のは大変だったんだぜ』

 冷たくあしらわれて、碇賀元がそう言っていると、


『ツッ――?』


 と、その碇賀元は突然に、何か頭痛でも感じたのか? 頭をおさえだした。

「お? どうした?」

『ん? どしたん? 元?』

『いや……、だぶん、アレだよ、【アレ】。さっき、木に隠れて調査してた時に、な? 頭の上で、【キツツキ】が、狂ったように木を突いたときの――』

 と、碇賀元は、賽賀忍と綾羅木定祐のそれぞれに答える。

『え? 何? その時のが、【フラッシュバック】したわけ?』

『まあ、そんな幹事』

「フン、そのまま、頭突かれとけばよかったのにな」

『ひどいこと言うねい』

 と、幹事イントネーションで答える碇賀元に、綾羅木定祐が冷たく言う。

 今度は、上市理可が、

「てか、そのキツツキって? 何でしたっけ?」 

『ああ……、あの、イカレタように木を突っついて、開けた穴にドングリとか入れるアイツ』

「ああ、あの鳥」

『そっ。けっこう、うるさかったんだぜ。小っちゃい重機みたいに、頭上で音が響いて』



「小っちゃ、い――?」



 とここで、上市理可と、


「む、む……?」


 と、続いて綾羅木定祐が、【小っちゃい】との言葉に反応した。

 そこへ、賽賀忍が、

『ああ、そうそう? それで思い出したんだけど……、ふたりの云う、その【小っちゃいナニカ説】、例えば? キツツキのような鳥の可能性とかって、ないかな?』

「はいぃ?」

 と、顔をしかめる綾羅木定祐と、

「キツツ、キ……ですか?」

 と、いっぽう、特には表情を変えないものの、上市理可が聞き返した。

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