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【シン屋根裏の散歩者】  作者: 石田ヨネ
第四章 急展開、頭の悪い鳥

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16 この技術を、世に、バラまくぞッ!! 




          (1)




 時間は、若干前後すること――

【GOGO郷田歯科医院】の中で、群麻と無二屋のふたりは調査を続けていた。

「もう!! ぱぱっ――!! とやって終わって!! 30分で、5万だよ!!」

 90年代か00年代のサーファ系ギャル男風の理事長の郷田剛が、機嫌悪そうに急かす。

「さっ、30分ですか!?」

「何か、急かしているのかようで、余裕与えているのか分からない時間ですけど……」

 群麻と、無二屋は答えるも、

「それで、さぁ? これで、何もなかったらさ? アンタたち、どうしてくれんの?」

「い、いやぁ……」

「それは……」

 と、郷田からプレッシャーをかけられる中、調査を進めていくより他ない。

 そんな風にしつつ、今までの被害者たちのリストをあげたり、彼らの治療について聞いたり、またあるいは、

「……そのぉ? 逆に、何か? 郷田さんに対して、恨みを持った人物とか、は? 心当たりは、ないのですか?」

 と、群麻が、すこし趣向を変えて聞いてみた。

 被害者がすべて郷田歯科の客ということから、郷田もしくは、院内の誰かが犯行に関わっているという説を考えるのは、もちろんのことだ。

 また同時に、何者かが――例えば、ベタであるが、ライバル、敵対関係にある他の歯科など、郷田のことを面白く思ってない人間が、めようとしているという可能性もある。

 ゆえに、群麻は、この【両輪】で以って、調査・捜査を進めていく必要があると思ったのだ。

「恨み? そんな、ないない!! 俺は、聖人君子だからさ? 【アポロン(太陽神)】だからさ? そこんとこ、ヨロシクゥ!!」

 郷田が、白い歯を見せてスマイルする。

 そのようにしながら、【GOd――】、いや、郷田は次に、群麻と無二屋のふたりを、歯科技工室へと案内する。

 そこで、トンデモないことが起きることになる。


「――これが、最新の、【すっげぇ再生技術を用いた義歯】なんだよね」

 郷田が、そう言いながら、置かれてある義歯を見せる。

 口の中の型をとった土台という、歯医者でよくイメージする、【アレ】――

 まあ、一見すると、セラミック製の義歯のように見えるが、

「この【義歯】を、さ? 歯の欠損した箇所に差し込むと、さ? 歯の再生と再成長が始まって、だいたい数か月か半年もすれば、残った土台の歯や顎の骨と、完全にくっついた状態になるってわけ? この技術を、世に、バラまくぞッ!! ――ってのが、ウチの理念でさぁ?」

 郷田が、技術資料を見せながら、得意げに話す。

 すると、その時、


「う……、ん? これって、何でしょうか? 医院長?」


 歯科技工士の男が、同じ卓上に置かれてあった、【何か小さなもの】に気がついた。

 何か、米粒三つ分くらいの大きさだろうか? 

 金属製の、小さな部品ようなもの――

「え? 何って? 歯科技工用の、器具とかじゃないの?」

 郷田も、思わずキョトンとした様子で聞く。

 そんな突然のことに、

「ん? 何か、あったんですか?」

 無二屋も、顔に“はてなマーク”を浮かべる。

 まあ、歯科医師の郷田でさえ知らないのであれば、歯科技工の知識などない無二屋がそのような反応をするのも当然だろう。

 だが同時に、

「うむぅ……」

 と、群麻のほうは、ナニカの予感がしながら、事態を注視していた。

 ちょうど、義歯や詰め物に埋め込めるサイズ――

 それから、おそらく精巧に作られていると思しき、この【ちっちゃいナニカ】に、嫌な予感がした。

 その【予感】に、群麻は思い切って言ってみる。


「これって……、もしか、して……? 中に、【爆発物】が内包されてませんか?」


「「「――!?」」」

 群麻の言葉に、一同は驚愕する。

「「な、何だってぇー!?」」

「ば、爆発物!?」



          ******



 ――と、そのようして、いまに至る。

 応援の警察はもちろんのこと、外から中の様子を見張っていた碇賀元と賽賀忍のふたりも、このGOGO郷田歯科にやってきていた。

「おいおい、本当に爆弾なのかい? そいつは?」

 碇賀元が、怪訝な顔で電子タバコを咥えつつ、開口一番にそう聞いた。

「フン……、いま、鑑定中だっての。てか? だからよぉ? 現場でタバコ吸うなっての!!」

「ああ、しいま、しぇん」

 碇賀元が、オッサン刑事につっこまれる。

 その間にも、刑事が答えたように、例の、【謎の金属の小物体】の鑑定が進んでいた。

 そして、


「――か、鑑定結果が出ました! 確かに、【爆弾】で間違いありません!」


 と、小太りの鑑定の男が、まるでドラマのように叫びながら入って来た。

 直後、

「「「な、何だって――!?」」」

 と、驚きの声が同時に上がる。

 ただ、その傍、

「へっ……?」

「……」

 と、碇賀元と賽賀忍が、「噓、でしょ?」と言わんかのような、唖然とした表情をしていた。

 だが、そんなふたりをよそに、話は進む。

「中には、強力な爆薬と、精密な起爆装置がありますね。本当、よくこんなものを作れたな――、という感想ですが……」

 鑑識の男が、そう補足する。

「ま、マジかいね……?」

「まあ、そうみたいね」 

 と、「冗談だろ?」との顔で聞いてくる碇賀元に、賽賀忍が答える。

 すると、

「ほら! 我々の【仮説】のほうが、あってただろ? 【神楽坂事務所】とかいう、変人どもの、なんちゃってな仮説より」

「まったく、お前らも、何をしてたんだ? 特別調査課とやらは?」

 と、オッサン刑事たちが嫌味を言ってきた。

「はぁ、すんませんねい……」

 碇賀元が嫌そうな顔しながらも、適当に流そうとする。

 その横で、

「おっ、俺は何も知らない!! 知らないから!!」

「わ、私もですよ!!」

 と、郷田と歯科技工士の男は弁解しようとするも、

「いいから、詳しい話は署で聞かせてもらいます」

「いッ、医院長!!」

「だ、大丈夫!! へ、へーき!! へーき!! すっげぇ潔白だからッ!!」

 と、スタッフの女が心配する中、連行されて行ってしまう。

 そうして、現場が一旦静まった中、

「ま、まさか本当に……」

「わ、私たちが、言ったみたいになるんなんて……」

 と、とうの群麻と無二屋も、どこか半信半疑そうな様子で唖然としていると、

「何だ? お前たち? 自信がないのか?」

「ここで、爆弾が見つかったんだ。このまま、医院長の郷田か、歯科技工士の男のどちらか、もしくは両者が犯人で確定だろう」

 と、中年刑事たちが間に入ってきた。

 そのまま、彼らは碇賀元たちのほうを向いて、

「いずれにしろ、だ――、この、郷田が犯人でほぼ決まりだろ」

「我々の仮説があってた。そろそろ認めろ?」

「はぁ、ま、まぁ、そうなんでしょけどねい……」

「ああ”? 何だ?」

 と、ヘラヘラしながらも何か言いたげな碇賀元に、オッサン刑事が聞く。

「いや、ねい……、何か、その……、卓上に、ちょこんと置かれていたってのがねい? ちょい、【不自然】に感じるんすよね」

「【不自然】――、だと?」

 碇賀の答えに、刑事が顔をしかめつつ、

「ええ。何ていうか、その……、リスが置いた【ドングリ】みたいな、不自然な感じで」

「どんなドングリでござるか?」

 と、賽賀忍が、碇賀元につっこんだ。




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