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【シン屋根裏の散歩者】  作者: 石田ヨネ
第三章 調査、GOGO郷田歯科

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15 ――ヒュー……、ストン……


 ――というわけで、碇賀元は、いま木に隠れているわけだった。

 先ほどの回想どおり、無二屋に盗聴器を仕掛け、なおかつ、妖狐の【葛葉】と結びつけた“それ”によって、建物の中の様子、人物の挙動を、強力に感じ取れることを可能にしているという。

「しっかし……、【葛葉】を使ってんなら、ここで見張りをする必要あるんかねい?」

 碇賀元が、そう言った。

 まあ、そのとおりではある――

 木に隠れる必要は、【ある】か【無い】かと問われれば、特には【無い】。

 忍者の家系であること……、それから、特別調査課に所属しているというプロフィールからか、【それっぽい雰囲気的なナニカ】のためだけにしているにすぎない。

 それはさておき、碇賀元は木に同化しつつ、電子タバコを咥えて、

「ふぅ……。しかし、【見た】感じでいえば、この歯科医は、犯人ではなさそうだが、ねい……」

 と、呟いた。

 根拠は特にないが、勘のようなものだ。

 また、中の様子を【見る】に、郷田の怒り具合は、何かを隠しているときの、演技のようにも見えなかった。

「まあ、もうしばらく、見てみっか」

 碇賀元は言った。

 このまま、特に何も出てくることなく、調査は終わるだろう。

 そう考えた、その時、


 ――カン!! カン!! カンカンカンッ!!!


「――!?」

 と、突如として!! 

 木の頭上のほうから――!!

 まるで工事機械のような、けたたましい音が鳴り始めた!!

「ちっ――!?」

 まさか、何者かに襲撃でもされたか――? 

 そう思いきや、


「……お、ほ?」


 と、よく見るに――

 そこには、丸っこい目をした鳥が、

 ――カン、カン、カンカンッ……!!!

 と、何かに取りつかれたように、木をくちばしで突っついていた。

「んあ? 【キツツキ】、か……?」

 碇賀元が、言った。

 そう、である――

 その鳥こそ、【木を狂ったように突くことで有名】な、【キツツキ】だった。

「……」

 碇賀元が、ジッ……と見ていると、

 ――カンカンカン!!! カンカンカン!!!!

 と、キツツキはさらに、イカレタように木を突きはじめる!!

「ああんっ!! うるさいっての!! お前さん!!」

 碇賀元が文句を言う。

 そこへ、



 ――ヒュー……


 ――ストンッ……!!


 と、恐らくは、あけた【穴】に入れようとしていたのだろうか――?

 木の実が、落っこちてきた。

「おいおいっ、ドジっ子かーい?」

 碇賀元が、「やれやれ」と呆れつつも、



「ん、ん……?」



 と、地面に落ちていった木の実を目で追いながら、【モヤッとしたナニカ】が、頭をよぎっていた。

「……」

 それが、何なのか……? 

 あるいは、気のせいか……? 

 そう考えているところ、 

『――どう? はじめ?』

 と、イヤホンから、相方の賽賀忍の声が聞こえてきた。

「どーもこーも、あるかーい……!!」

 碇賀元は、そう返すと、

『……』 

「……」

『……』

「え? 何か、反応してくれないの……?」

『はい』

 と、特に、何の反応も得られなかった。

 なお、そのイヤホンの向こうの賽賀忍であるが、ここから少し離れた高層物の上で観察しているという。

『てか? さっき、何か音がしたよね?』

「んあ? ああ、鳥だわ。あの……、何だっけ? あの、頭の悪そうに、木を突っつくヤツ?」

 碇賀元は、先ほど口にした名前をド忘れしつつ、

『へ? ああっ、キツツキじゃん』

「ああ、そっそ、キツツキ」

 と、話していると、


 ――カン、カンカンカンカン!!!!


 ふたたび、こんどはもう少し近くの頭上で、その【頭の悪そうといわれた鳥】が、重機のごとく木を突きはじめる。

「ああっ!! うっるさ!!」

『これは、うるさいかもね』

「うるさいに決まっとろがーい!!」 

 碇賀元は、つっこむ。

 そのようにしながらも、ふたりは互いに情報を交わしていき、

「それで、そっちからは、何か怪しいことはないかいね?」

『今のところ、特にはなさそ。狐さんの【葛葉】の情報を見ても、このGOG……、プフッ――!?』

「おっほ? いま、笑った? てか、確かにダッサいな……、この、GOGO……? 郷田歯科って」

『プッ……!! ちょ、やめて、口にしないで、』

「何、今さら、笑いのツボに入ってんの?」

『お、ほん、おほん……。いや、あんまし面白くないのは分かってるんだけど、微妙にツボって……。それで、話を戻すとさ、医院やその付近の人や物の出入りや通信記録をみるに、さっぱりって感じなの――』

「はぁ、」

 碇賀元は、相槌しながら、

「そうすると、やっぱ、ここの歯医者は関係ないってことかねい?」

『まだ、分からないけど……。あとは、ここに関しては、群麻さんと無二屋さんが、郷田理事の周辺の人間関係を調べている感じかしら』

「はぁ。……そんで? まだ、こんなとこにおらんといかんかね?」

 碇賀元が、嫌気がさした様子で聞いていると、


 ――ヒュー……、ポフッ!!


「うぉっ!? ――とぉッ!? おっま!? さっきから、落としすぎでないかい!?」

 と、例のキツツキが木の実を落としてきて、それが電子タバコに当たってしまった。

『ん? どしたの?』

「ああ、さっきのキツツキが木の実を落としてきやがってからに、俺の電子タバコに当たったんよ」

『狙って、当てたんじゃない? 悪口、聞こえてて。てか? その鳥さんも、【犯人の候補】に加えとく? 【小っちゃいナニカ】の――』

「【アイツ】に、そんな能力なんかあるかーい」

 碇賀元が、賽賀忍につっこむ。

 そうしながらも、

『まあ、そうね……、とりま、もうちょい、我慢してそこにいてくれない? 元?』

「あん、いいけど……。あとで、タバコでも買ってちょ」

『分かったよ』

 と、そのように交わして、木に隠れて調査を継続しようとしていた、その時――


 ――ザワザワ……!!


「――むぅ?」

 と、歯科の建物の中が、何やら騒がしくなり始めていた。



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