15 ――ヒュー……、ストン……
――というわけで、碇賀元は、いま木に隠れているわけだった。
先ほどの回想どおり、無二屋に盗聴器を仕掛け、なおかつ、妖狐の【葛葉】と結びつけた“それ”によって、建物の中の様子、人物の挙動を、強力に感じ取れることを可能にしているという。
「しっかし……、【葛葉】を使ってんなら、ここで見張りをする必要あるんかねい?」
碇賀元が、そう言った。
まあ、そのとおりではある――
木に隠れる必要は、【ある】か【無い】かと問われれば、特には【無い】。
忍者の家系であること……、それから、特別調査課に所属しているというプロフィールからか、【それっぽい雰囲気的なナニカ】のためだけにしているにすぎない。
それはさておき、碇賀元は木に同化しつつ、電子タバコを咥えて、
「ふぅ……。しかし、【見た】感じでいえば、この歯科医は、犯人ではなさそうだが、ねい……」
と、呟いた。
根拠は特にないが、勘のようなものだ。
また、中の様子を【見る】に、郷田の怒り具合は、何かを隠しているときの、演技のようにも見えなかった。
「まあ、もうしばらく、見てみっか」
碇賀元は言った。
このまま、特に何も出てくることなく、調査は終わるだろう。
そう考えた、その時、
――カン!! カン!! カンカンカンッ!!!
「――!?」
と、突如として!!
木の頭上のほうから――!!
まるで工事機械のような、けたたましい音が鳴り始めた!!
「ちっ――!?」
まさか、何者かに襲撃でもされたか――?
そう思いきや、
「……お、ほ?」
と、よく見るに――
そこには、丸っこい目をした鳥が、
――カン、カン、カンカンッ……!!!
と、何かに取りつかれたように、木を嘴で突っついていた。
「んあ? 【キツツキ】、か……?」
碇賀元が、言った。
そう、である――
その鳥こそ、【木を狂ったように突くことで有名】な、【キツツキ】だった。
「……」
碇賀元が、ジッ……と見ていると、
――カンカンカン!!! カンカンカン!!!!
と、キツツキはさらに、イカレタように木を突きはじめる!!
「ああんっ!! うるさいっての!! お前さん!!」
碇賀元が文句を言う。
そこへ、
――ヒュー……
――ストンッ……!!
と、恐らくは、あけた【穴】に入れようとしていたのだろうか――?
木の実が、落っこちてきた。
「おいおいっ、ドジっ子かーい?」
碇賀元が、「やれやれ」と呆れつつも、
「ん、ん……?」
と、地面に落ちていった木の実を目で追いながら、【モヤッとしたナニカ】が、頭を過っていた。
「……」
それが、何なのか……?
あるいは、気のせいか……?
そう考えているところ、
『――どう? 元?』
と、イヤホンから、相方の賽賀忍の声が聞こえてきた。
「どーもこーも、あるかーい……!!」
碇賀元は、そう返すと、
『……』
「……」
『……』
「え? 何か、反応してくれないの……?」
『はい』
と、特に、何の反応も得られなかった。
なお、そのイヤホンの向こうの賽賀忍であるが、ここから少し離れた高層物の上で観察しているという。
『てか? さっき、何か音がしたよね?』
「んあ? ああ、鳥だわ。あの……、何だっけ? あの、頭の悪そうに、木を突っつくヤツ?」
碇賀元は、先ほど口にした名前をド忘れしつつ、
『へ? ああっ、キツツキじゃん』
「ああ、そっそ、キツツキ」
と、話していると、
――カン、カンカンカンカン!!!!
ふたたび、こんどはもう少し近くの頭上で、その【頭の悪そうといわれた鳥】が、重機のごとく木を突きはじめる。
「ああっ!! うっるさ!!」
『これは、うるさいかもね』
「うるさいに決まっとろがーい!!」
碇賀元は、つっこむ。
そのようにしながらも、ふたりは互いに情報を交わしていき、
「それで、そっちからは、何か怪しいことはないかいね?」
『今のところ、特にはなさそ。狐さんの【葛葉】の情報を見ても、このGOG……、プフッ――!?』
「おっほ? いま、笑った? てか、確かにダッサいな……、この、GOGO……? 郷田歯科って」
『プッ……!! ちょ、やめて、口にしないで、』
「何、今さら、笑いのツボに入ってんの?」
『お、ほん、おほん……。いや、あんまし面白くないのは分かってるんだけど、微妙にツボって……。それで、話を戻すとさ、医院やその付近の人や物の出入りや通信記録をみるに、さっぱりって感じなの――』
「はぁ、」
碇賀元は、相槌しながら、
「そうすると、やっぱ、ここの歯医者は関係ないってことかねい?」
『まだ、分からないけど……。あとは、ここに関しては、群麻さんと無二屋さんが、郷田理事の周辺の人間関係を調べている感じかしら』
「はぁ。……そんで? まだ、こんなとこにおらんといかんかね?」
碇賀元が、嫌気がさした様子で聞いていると、
――ヒュー……、ポフッ!!
「うぉっ!? ――とぉッ!? おっま!? さっきから、落としすぎでないかい!?」
と、例のキツツキが木の実を落としてきて、それが電子タバコに当たってしまった。
『ん? どしたの?』
「ああ、さっきのキツツキが木の実を落としてきやがってからに、俺の電子タバコに当たったんよ」
『狙って、当てたんじゃない? 悪口、聞こえてて。てか? その鳥さんも、【犯人の候補】に加えとく? 【小っちゃいナニカ】の――』
「【アイツ】に、そんな能力なんかあるかーい」
碇賀元が、賽賀忍につっこむ。
そうしながらも、
『まあ、そうね……、とりま、もうちょい、我慢してそこにいてくれない? 元?』
「あん、いいけど……。あとで、タバコでも買ってちょ」
『分かったよ』
と、そのように交わして、木に隠れて調査を継続しようとしていた、その時――
――ザワザワ……!!
「――むぅ?」
と、歯科の建物の中が、何やら騒がしくなり始めていた。
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