5. ステータス
メールの時と同じようにステータスがウィンドウに表示される。
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サクラ(男)
年齢:18 階級:自由民 レベル:3 職業:剣士
筋力:5 耐久:5 敏捷:4 器用:4 知力:3 魔力:1
スキル
剣術:1 投擲:4 見切り:3 教養:2
SP:14
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「これが俺のステータスか」
もうはっきりと目が覚めてしまったので、自分のステータスをしっかりと確認する。
「もっと早く気がつきたかったな」
何回か「ステータス」とは口に出して言っていたが、どうやら「オープン」とつけなければいけなかったようだ。
確かに「ステータス」と口に出すたびにこの画面が表示されたら鬱陶しい。
「投擲が4で、教養が2か」
まさしく、俺の学生時代を象徴とするようなステータスだな。
そして注目したいのはやはり魔力。
能力が1なのはこれまでの人生で使ったことがないのだから当然だろう。
最悪、剣士ということで魔法が使えないことも想定していたので、これはかなり嬉しい。
この異世界転移をさせられてから、初めて期待を持つことができた。
「最後のSPってなんだ」
ポチッ
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SP:14
剣術:1→2 投擲:4→5 見切り:3→4 教養:2→3
獲得可能スキル
気配感知、消息、採取、調理、調合、生活魔法
身体強化、簡易鑑定、火魔法、水魔法、風魔法、土魔法
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「うおーっ、魔法だ!」
SPはスキルポイントか!
色々なスキルがあるがやはり最初に目が行くのは魔法。
生活魔法に基本となる4元素だろうか。
夢が広がる。
試しに生活魔法をタッチしてみる。
ピコン『生活魔法Lv.1を取得しました』
取っちゃったよ。
情報が見れるだけでよかったのに。
スキルの詳細とか必要なSPとかを教えて欲しかったんだが。
必要なポイントは同じなのかな。
まあ、名前からして今後必要になりそうだしいいか。
「ステータスで確認するか」
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サクラ(男)
年齢:18 階級:自由民 レベル:3 職業:剣士
筋力:5 耐久:5 敏捷:4 器用:4 知力:3 魔力:1
スキル
剣術:1 投擲:4 見切り:3 教養:2 生活魔法:1
魔法
『水生成』『着火』
SP:13
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「おお、魔法を覚えてる。『水生成』『着火』ね・・・」
『水生成』 水がでた。飲用水としては十分だろう。
『着火』 ライターより強そう。
あれ、今日の俺って何してたんだっけ。
最初にこれ覚えておけば、あんなに急いで動き回る必要なかったんじゃ。
多分、SP最初から10くらいはあったよねこれ。
レベルアップで2P、2回で4P。
がっくし、てのはこういうことを言うんだな。
それもこれもチュートリアルをすっ飛ばした、運営が悪い。
「はぁ〜、今更言っても仕方がないか。必要なSPは1と」
これは嬉しい。
思ったより必要なSPが少ない。
「必要そうなスキル全部取っちまうか」
しかし、大体予想できるが、取得前にスキルの情報は知っておきたいな。
ひとつそれが可能そうなスキルがあったのでまず取得してしまう。
ピコン『簡易鑑定Lv.1を取得しました』
早速、簡易鑑定でスキルの情報を見てみる。
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SP:3
剣術:1→2(2P)投擲:4→5(16P)見切り:3→4(8P)教養:2→3(4P)
生活魔法:1→2(2P)簡易鑑定:1→2(20P)
獲得可能スキル
1P 気配感知、消息、採取、調理、調合
10P 身体強化、火魔法、水魔法、風魔法、土魔法
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「えっ、悉く裏をかいてくるじゃん」
はい、簡易鑑定10Pでしたー。
一本取られたね。
ウィンドウの幅の都合の改行じゃなくて、必要Pでの区分けだったのね。
もうここまでくると笑えてきてしまう。
「まあ、損したわけじゃないしな」
ある程度知識のあるやつなら、取得ポイントの低さに疑問を持ったんだろう。
なんとなく法則は分かったが、どちらにしても、必要になるSPの量がとんでもないことになるな。
早いうちに、1つのスキルを極める一点突破タイプか、満遍なくスキルを育てる器用貧乏タイプか決めておかないとな。
「スキルの情報も見ていくか」
色々と情報を見たが、結局生活魔法を2にすることにした。
その理由として、
「『クリーン』、おお、本当にきれいになった」
生活魔法を2にしたことで、体と衣服を綺麗にできる『クリーン』を覚えられるのだ。
正直これを覚えてしまうと、今日やった作業がさらに無駄になる気がしたのだが、ここは裸族としての矜持が汚れた服のまま眠ることを許さなかった。
マントも同様にきれいになったが、濡れたままだったので使えない。
ちなみに水を沸かす『ボイル』という魔法も同時に覚えた。
「本当に今日の俺の苦労の大半が、生活魔法に無駄にされた気がする」
思いの外、精神的ダメージがデカかったのか、魔法を使った影響か、眠気がすごい。
最後に残った1ポイントを気配感知に振る。その名の通り周囲にいる生物の気配がわかるらしい。
「Lv.1でもないよりはマシだろう」
ダメだ、これ以上は目が開けていられない。
さむ・・・。
マントはこういう時のために必要なのか、薪たしとこ。
ゾクッ
「な、んだっ」
悪寒を感じて飛び起きる。
毛穴が無理やり広げられているような、これまでに経験したことのない感覚だ。
その感覚はバリケードがわりにしていた岩の一つに向いている。
岩そのものというよりも、その向こう側に違和感がある。
「これが気配感知か」
心当たりは昨日取得した気配感知スキルしかない。
枕もとに置いていた木剣を手に取る。
初めての感覚に叩き起こされて、冷や汗が止まらない。
気配は漠然としかわからないため耳をすましてみたが、心臓の音がうるさくて何も聞き取ることはできなかった。
茂みが揺れる。そこかっ!
方向と距離が把握できたため、少し気持ちに余裕ができる。
「まだ、暗いじゃねぇか。早起きさんかよ」
もう少しで日の出なのだろう、森の向こう側の空が白くなってきている。
早朝も早朝だ。
森の生き物達も起き出した頃なんだろう。
「うさぎか」
相手が見知ったうさぎであることに安心する。
目覚めたタイミングで未知の魔物とエンカウントだったら最悪なところだ。
ちなみにうさぎは木の蔓バリアの内側にいた。
幸いなことにまだこちらには気づいていないようだ。
足音をなるべく立てないように近づきたいが、足元は川辺ということもあり石だらけでそれは難しい。
「石か」
昨日のステータスで、投擲が4だったことを思い出す。
(どうせ気づかれずに近づくのは無理だしな)
試しにと石を拾い、うさぎに向かって投げてみる。
コントロール重視で、そこまで力は入れていない投石だ。
「こう見えても投手だったもので」
石を投げる瞬間、うさぎもこちらに気づき逃げようとしている。
(避けられるか、こりゃ)
そう都合よくはいかないかと苦笑するが、次の瞬間思いがけない光景に驚愕する。
「キュィィ」
石は信じられない速さで、うさぎの腹に大きな穴を開けた。
貫通した石が後ろの地面に突き刺さっている。
「まじか」
間を置かず光になるうさぎを呆然とみる。
魔石と肉をドロップした。
こりゃ、2度とキャッチボールはできないな。
ピコン『Lv.3→4↑』
「お、レベルも上がったか」
ステータスを確認する。
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サクラ(男)
年齢:18 階級:自由民 レベル:4 職業:剣士
筋力:5 耐久:5 敏捷:4 器用:4 知力:3 魔力:1→2↑
スキル
剣術:1 投擲:4 見切り:3 教養:2 生活魔法:2 簡易鑑定:1
気配感知:1
魔法
『水生成』『着火』『クリーン』『ボイル』
SP:2
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「やっぱりレベルが上がるとSPがもらえるのか」
レベルアップでもらえるSPが2ということは、初期段階で10あったと考えていいだろう。
せめて、異世界に連れてくる前にこのSP:10を振ることができていれば、昨日の苦労はかなり軽減されたはずだ。
「朝っぱらから汗だくだ、『クリーン』」
朝寒で冷えている体に汗という状態を気持ち悪く感じ、魔法を使う。
「異世界してるわー」
朝シャンがわりに魔法を使っていることに少し感動。
ただ、感覚的な刺激が足りないため川に顔を洗いにいく。
「冷てー、無理だこりゃ」
自然の川の冷たさに驚く。これでは刺激が強すぎる。
手のひらに水をすくい魔法を試してみる。
「『ボイル』アっちゃー!」
魔力を込めすぎて熱湯にしてしまったようだ。
慌てて川に手をつけて冷やす。
「冷て〜、助かった」
しばらく川に手をつけていると、川の中に気配感知が反応した。
昨日のピラニア達がこちらの様子を伺っている。
サクラの手が餌かどうか判断に迷っているようだ。
「魚食いてえな」
よし、釣りだな。
昨日の反応をみる限り、警戒心はあるようだが、スレてはいないだろう。
適当な木の枝に蔓を巻き、蔓の先端にうさぎ肉の一口塊をくくりつける。
あまりにも原始的な釣り道具だが、現状ではこれくらいしか用意はできない。
ダメ元で川に餌を投げ入れる。
川に糸を垂らしているだけで気持ちが落ち着いてくる。
「って、早いなおい」
木の枝に強い引きを感じたため一度引き上げると、餌を丸呑みにしたピラニアがかかっていた。
「こりゃ、大漁だぞ」
ここまでスレていない魚というのは初めてだ。
やばい、楽しくなってきた。
これからの釣果にウキウキしながら魚を絞める。
「なんだ、また鱗か」
まあ、しょうがないか。
そう都合よくドロップするはずがないと気を取り直して、釣りを続ける。
餌を投げ込むとすぐにまた引きが来た。やばい、楽しい。
魚との駆け引きが楽しいという釣り人もいるが、俺は釣れれば釣れるほど悦ばしい。
魚を締めてドロップ品を確認する。
「なんだこれ、石?」
川の底にでも敷き詰めらる石にしか見えないが、どういったアイテムなんだろうか。
「こういう時こそ、簡易鑑定の出番だな」
石を鑑定する。
『スカベンジャーフィッシュの胆石:石』
おい、アイテム名より説明の方が短いってどういうことだ。
どうやら、ただの石らしい。
確かに生き物である以上、人間にとって役に立たないドロップ品も当然あるのだろう。
釈然としないが。
ゲームでもこの仕様だったのかな。
釣りのミニゲームとか定番のはずだけど。
ついでに、鱗の方を鑑定してみたところ、こちらは装飾品の材料にもなるし、高温加工することでガラスの材料にもなるらしい。とっとこ。
石は川にポイ。
「まあいいか、本命は肉だし」
石が役に立たないのは残念だが、釣りを続ける。
その後も餌を投げ入れるたびヒットは続く。
ヒットは続くが、
石、石、石、鱗、石、石、鱗、石、石、石、石、石、鱗、ピコン、石、石、石、石、鱗、石、鱗、石、石、石、石、石、鱗、石、石、石、石、石、石、石、ピコン、石、石、石、鱗、鱗、石、石、鱗、石、石、石、石、石、石、石、石、石、石、石、鱗、石、石、鱗、石、石、石、鱗、石、石、鱗、ピコン、石、石、石、石、石、鱗、石、石、ぅ
「ぅう、ウガァーーーーッ!」
石、多っ。
最初に鱗2連続はラッキーだったんだな。
途中から鱗でも嬉しくなっちゃったよ。地味にレベルアップしてる、やったね。
流石に、ここまで釣ると魚達も学習するのか、段々反応も鈍くなってきた。
「こりゃ、肉は出ないのかもな」
しかし、ここまでやってしまったからには肉を手にするまでは引くことはできない。
もはや作業と化している、投入、引き、締めを嘆きながら繰り返してると、ドロップの反応が今までとは違うことに気づく。
「この感触は」
手にはこれまでの硬い感触とは明らかに違う、ぶよぶよと生々しい感触が伝わってくる。
「やった、ついに魚肉が・・・」
感触や見た目は間違いなく魚肉だった。
しかし、その身は極彩色を放っていた。
ここまで毒々しさを表現した食材をみたことがない。
「で、でも、異世界だし。食べられる可能性も」
簡易鑑定
『スカベンジャーフィッシュの身:毒、食うな』
とてもわかりやすく簡潔な結果に絶望する。
釣りを始めた時はぼんやりと白む程度だった空も、完璧に明るくなっている。
これだけの時間と労力をかけて手に入れたのは、すぐには役に立たないだろう鱗と、うさぎと比べると小さい魔石のみピコン、うるせえなおい、考え事してんだこっちは。
「唯一の成果といえばレベルアップくらいか」
なんとこの釣りだけで、レベルが4から7まで上がった。
「器用が1上がっただけか。毎回上昇するわけじゃないんだな」
ステータスを確認するが、能力は器用が4から5に上がったのみ。
あとは釣りLv.1が増えていた。
「さすがに釣りをしていれば強くなれるほど甘くはないか」
それにしても、朝から疲れてしまった。
あまり良い目覚めでもなかったし、体が少し重い。
「今からもう一回寝るのは無理だよな」
気配感知の影響か、生物の動く気配を漠然と遠くにいくつも感じる。
夜まで安心して眠ることはできないだろう。
昨日の夜の感覚を思い出すと、昼に比べて夜の方が圧倒的に活動する生物は少なかった。
また、太陽が登ってきた方角、東でいいのか。
そちらの方に意識を集中するととてつもない気配を感じる。
ていうか昨日この気配の方に向かってたな。あぶねー。
「こりゃ、フラグってやつだな」
なるべく旗は回収しないように、真逆の方向に今後は進もう。
取っておいてよかった、気配感知。
「釣りで肉を使いすぎたか」
もううさぎ肉がほとんど残っていない。
朝食で食べてしまったら、もう終わりだ。
流石に工夫して調理を行う余裕はなかったので、肉串だけを焼いた。
携帯食も残りは3食分。
本格的に食べ物を確保しないとまずいだろう。
「うさぎも焼くだけじゃ味気ないしな」
肉串を食べるが、味付けもせずに焼いただけのそれは、あまりにも淡白で量を食べたいと思えるものではなかった。
うさぎなどの食べ物だけでなく香辛料や薬味も集めていかないとだめだろう。
簡単な食事を終えて、部活時代からの習慣となってしまっている朝のストレッチを行い、支度を整える。
「ドロップ品もこのままだとすぐにいっぱいになるな」
今はまだ余裕があるがすでに背嚢の半分は埋まっている。
その内、ドロップ品も捨てないといけないかもしれない。
「それはもったいないよな、アイテムボックスとかほしいなー」
あると思うんだよね、アイテムボックス。
そのうち獲得可能スキルに追加されるはず。
そんなことを考えながら、昨日からSPが溜まっていることを思い出す。
「強化しとくか」
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SP:8
剣術:1→2(2P)投擲:4→5(16P)見切り:3→4(8P)教養:2→3(4P)
生活魔法:2→3(4P)簡易鑑定:1→2(20P)気配感知:1→2(2P)釣り:1→2(2P)
獲得可能スキル
1P 消息、採取、調理、調合、工作、耐性
10P 身体強化、火魔法、水魔法、風魔法、土魔法
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「2日目にしてスキルも随分と増えてきたな」
もう少し増えてきたら整理したいが、できるものなのだろうか。
「それにしても戦闘系スキルが少なくないか」
剣士という近距離ジョブなのに、残る戦闘スキルの選択肢が身体強化しかないのはどういうことだろうか。
魔法スキルの方が豊富という。
どちらにしても、今は10Pスキルをとる余裕なんてないんだが。
「とりあえず食料確保には採取だよな。あとは森の中だし消息も必要か」
サバイバルに必要そうなスキルを片っぱしから取っておく。
あ、耐性もゲットしとくか、病気になったら嫌だし。
変な寄生虫とかいそうだし。
「さて残りのSPで新しくスキルをとるか、今あるスキルの強化をするか」
調理も調合も工作もあれば便利だろうが、なんとなくこれじゃない感が強い。
通販サイトで一目惚れ購入をするときの感覚に似ている。
「だいたいああいう時に買ったものって、使わなくなるんだよな」
うん、いらないな。
無難に剣術を2に上げておこう。
残った3Pは残しておいてもいいだろう。
だいぶスキルが見にくくなってきたな。
まあ、ゲームの世界でもあるのなら、ここら辺はしっかり対策が立てられているのだろうけど。
「やっぱりそこら辺は、人に会って聞くのが一番手っ取り早いよな」
とりあえず、強い気配は避けつつ西に直進だな。
異世界冒険物語2日目スタートです。