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4. 休息

あれからまた1時間ほど歩いているが、森の中はかなり暗くなってきている。


暗い整備もされていない森を一人で歩き続ける。怖い。


ここまで進むのに何度振り返ったことだろう。


実際に、振り返ると何度かうさぎいたし。


ただ、あれからうさぎが襲いかかってくることが減った。


ばったり出会い頭にfight、というのが2回。


サクラは毛皮と肉を手に入れた。

レベルアップYeah!


うさぎが襲って来なくなったのは、多分マントについている返り血が原因だろう。


肉食獣の縄張りに入る前に洗っておきたい。


「それにしても、ここまで歩いて小川のひとつも見つからないか」


俺の歩いている速度はかなり早い。


時速6〜7km、向こうなら小走りくらいのペースだが、これぞ異世界クオリティ。


3時間ほど歩いているが、ペースは落ちない。


「とはいえ、もう20kmくらい歩いているからな。疲れた」


不思議と足に乳酸が溜まる感覚はないが、体全体の倦怠感は否めない。


やはり精神面での負担が大きいのだろう。


うん、やっぱり初ログインからの異世界転移はおかしいよね。


ここまでのところ、全くゲーム感ないし。


なんで俺、剣と魔法の世界で木剣で戦って、3時間森の中で水場探して歩き続けてるの?


このままだとにわか知識で火おこしチャレンジが待ってるわけだろ。


薪拾っとこ。

重い。邪魔。

捨てる。


ちなみに森に入っている間に「ファイヤー」とか「ウォーター」とかポーズをつけながら試してはみた。


まあ何も起きないよね。


これも普通ならテンプレゲームの技とか試すんだろうなー。知らないなー。


まあ、そこは恥の上塗りをせずに済んだと思おう。


「ウォーター」すらうさぎに見られて、つい水筒をスタイリッシュに飲んで誤魔化してしまった。


「うわっ」


歩いているといきなり足場が滑り、転んでしまう。


「痛ぇー」


体が変わって、レベルが上がっても転んで痛いのなんでだろう。


手を地面につくと何かぬるぬるする。


「苔か、暗くて気がつかなかったな」


もうかなり森は暗い。


そのせいで苔に気がつかなかったわけだが、森に入って初めて水の気配を感じることができた。


とりあえず苔の生えている方向を進んでいくと、水が流れる音が聞こえてくる。


転ばないように気をつけながら、急いで音の方向に向かう。


「こりゃ渓流ってやつだな」


川の幅は少し狭いが、森を横切る水に感動を覚える。


最初の難関を乗り越えた気分だ。


「今日はここで野営だな」


川の近くだと色々な生物が寄ってきそうだが、だからといって安全な場所がわかるわけでもない。


川の近くなら匂いが広がることもなさそうだし、疲れたし、お腹すいたし、もう歩きたくないから、ここでいいだろう。


なるべく岩に囲まれたところをベースとする。

木の蔓バリアを張っておこう。


「次は火おこしだな」


薪になりそうな乾燥した枝などは、近場にいくらでも落ちている。


とりあえず一晩くらいはもつだろう。


あとは板のような木に、木屑をまぶして、枝を擦り続ける。


どっかのDがこうやって火を点けていた気がする。


他にやり方も知らないし、とにかくチャレンジ。



5分後 焦げ臭い匂いがしてきた。


15分後 一瞬赤くなる、急いで木屑の山に放り込んで息を吹く、消える


30分後 ファイヤッーーーーーーーーーーーーーー!!!!!



汗だくだよ、もう。今日で一番疲れたわ。

あったかーい、あっつーい。


この体じゃなかったら絶対に体力もたなかったな。


むこうの世界で火つけてた人たち絶対超人だろ。


動画配信者たちは絶対ズルしているわ、あんなやつらにこの努力ができるわけがない(偏見)。


「燃ーえろよ、燃えろーよー。ほのおよもーえろー」


夜の森で歌うのはやめたほうがいい気がするが、そんな理性はこの達成感の前では無意味だ。


ちょうど水筒の中身も空になった。川を見る。


「異世界の生水そのままは、ちょっとな」


え、世の主人公たちこれ直接飲んだの?

異世界だよ、だって。


あんな禍々しい生き物を作り出す生態系なんだよ。

やめなよ、汚い。えんがちょ。


それとも運営への信頼の差だろうか。


俺は確信している。

スタート地点の近くの川が、飲用可能か運営あいつらが確認しているはずがない。


「よし煮沸しよう」


ここで使うのが、先ほど採るのに1時間ほど要した顔のサイズほどある木の実。


重いし、でかいしで歩いている最中になんども採ったことを後悔したが、やはり正解だった。


ナイフで真っ二つに切り開く。


中には実がぎっしりと詰まっていた。


ナイフで実の中身を削り、少し食べてみる。


生水はダメで、木の実は良いという自分ルールがよくわからないが、気にしたら負けだろう。


というか空腹で死ぬだろう。


もぐもぐ、うんアボカド。


どうしよう、味の感想が何も浮かばない。

不味くもないし、当然うまくもない。


とりあえず身を石の上に全部取り出し、2つに分かれた固い皮を水の煮沸消毒に使う。


あとはうさぎの肉だな。


それなりに大きな塊が2つドロップしていた。


「今日の分はこの塊の半分でもあれば十分だろう」


残りは川につけて冷やしておいたほうがいいだろう。

低温熟成?とかいうやつだな。


まずうさぎ肉を木の串に刺し火で炙る。


また、すでにお湯となっている1つの皮の中に肉を放り込む。


そこに携帯食料も放り込んでみた。


ここまで歩いてくる途中でこの携帯食料も食べたが、何かの穀物を固めてあり、味は文句をつるけるほどではないが、とにかく硬かった。



「いい匂いがしてしたな」


肉が焼き上がり、雑炊ももうできるだろう。


うさぎの肉串、サラダ(アボカドもどき)、雑炊


「思ったよりもちゃんとした飯なんじゃないか?」


サバイバーとしての才能が目覚めだしているのかもしれない。


まずは、うさぎの肉串から


「いただきます」


うん、すごいタンパク質。

それ以外に感想が浮かばない。


そりゃそうだよな、調味料どころか塩もつけていないわけだし。


これが続くようだときついな。


かといって薬味や香辛料なんか、インドア大学生の俺じゃ見ただけじゃわからないしな。


とりあえずアボカドで誤魔化しながら食べるか。

向こうの世界にいるときには感じられなかったアボカドのありがたみを噛み締める。


「そろそろ雑炊の方も食えるかな」


穀物がかなり柔らかくなってきたようなので、枝を削った箸を使い雑炊を食べることにする。


「おぉ、これは結構うまいんじゃないのか」


うさぎの肉から出汁もでているのだろう。


携帯食料にも味はついており、まさしく雑炊といった味だった。

暖かい汁で体も温まる。


「今になって醤油の偉大さがわかるな」


贅沢を言うならば、醤油が欲しかった。


ほんの少し入れるかどうかでここまで違いが出るものなのか。


余裕が出てきたら是非手に入れたい。


とりあえず、つくったもの全てを平らげる。


「ごちそうさまでした、と」


腹も膨れた。


水筒に水も補充し、あとは眠るだけなのだが、汗でベトベトする体を洗いたい。


「せっかく川があるんだし、水浴びでもするか」


隙が多くなる水浴びは我慢するべきなのかもしれないが、裸族の俺としては汗で張り付いた服のまま寝るなんてことは我慢できない。


「森に放置するなら、バスタオルぐらい初期装備に入れとけよ」


運営にはイマジネーションを働かせて欲しいもんだ全く。


タオルがわりにうさぎの毛皮を持って川に近づくと、様子が少しおかしい。


先ほどうさぎの肉を置いた当たりでバシャバシャと水飛沫が上がっている。


「ピラニアかよ、この川肉食魚がいるのか」


肉に群がるのは、鋭い牙をもつピラニアのような魚。


とりあえずサクラが肉に近づくと、魚たちは逃げていく。

性格は臆病なのかもしれない。


「こりゃ入れないな」


とりあえず残っている肉の塊を回収する。


本来の塊肉1/3ほどしか残っていない。


1匹、魚が肉に食いついたままだったので釣り上げた形になった。

とりあえずナイフで締めておく。


インドア大学生でも釣りはするんです。


尾鰭を押さえることでできれば、牙があろうと怖かない。


うさぎ肉は無くなってしまったが、たぶん補充はできるだろう。


それよりこの魚は食べられるのだろうか。


魚なら捌けば可食部の判別くらいはできるだろうと思っていると。


「ああ、そうかドロップしちまうのか」


魚が光に包まれていく。


「わあ、綺麗なウロコ」


手に残ったのは小さな魔石と鉱石のような鱗。くそ、魚肉よこせや。


しょうがないので、火の元まで戻りお湯を作り体を拭くことに。


「ハンドタオルくらい初期装備に入れておけよ」


イマジネーション、イマジネーション。


ついでにマントの血の汚れもお湯で洗う。

思いの外がんこ汚れで苦戦した。


正直、この程度のお湯で綺麗になった気は全くしないが、濡れたマントは岩に干しておく。


「あ〜、疲れた」


一応今日はそれなりに体を動かしたので、ストレッチを行う。


柔軟をしていると、体のどこに疲れが溜まっているのか、よく分かる。


バッドと剣じゃやはり違うらしい。


今まで意識したことのない筋肉が硬くなっている。


「そろそろ寝るか、夜明けと同時に行動したいし」


硬い地面に大きな葉っぱを敷き詰め、その上にうさぎの毛皮をひいて寝転ぶ。

少し肌寒いが、火もあるので眠れないこともない。


「明日の朝まで生きていられるかは運次第」


遠くの方では狼の遠吠えのようなものが聞こえている気がする。


やはり夜の森は怖い。


いきなり転生させるなら2、3人くらい一緒によこして欲しかった。


今日1日だけでもあまりにも孤独で辛かった。


異世界転移ですぐに個人行動するやつよくいるけど、あんなの寂しくなってすぐに戻るに決まっている。


「そうだよな、異世界なんだよな。ここ」


おかしい。


今日1日の生活を思い出しても異世界らしさが、うさぎにツノが生えていることと、ドロップ以外に思い出せない。


魔法はどうしたの、スキルは? 剣と魔法の世界の剣が木剣でいいの?


なんの自信があってこの世界に人を招待しようと思ったのか、俺にはまだわからない。


玄人プレーヤー達ならすでに人助けイベントこなした上で、街に辿り着いたりしているんだろうか。


とりあえず、街に着いたら教会に行って神様とやらを罵倒しよう。


「ファイヤー」「ウォーター」「サンダー」「ライト」「ヒール」


眠るまでの暇つぶしで思いつく限りのワードを羅列していく。


「ステータス」「アイテムボックス」「鑑定」「索敵」「じゃあ、『ステータスオープン』」


ピコン『ステータス:サクラ』

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サクラ(男)

年齢:18 階級:自由民 レベル:3 職業:剣士 

筋力:5 耐久:5 敏捷:4 器用:4 知力:3 魔力:1

スキル

剣術:1 投擲:4 見切り:3 教養:2

SP:14

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「あ゛ぁ?」


あるのね、スキル。


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