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 どこへ逃げれば、この悪夢から脱出できるのか。



「ユーリ、あなた、記憶はどのくらい残ってる? 男だったときの記憶」

「しっかり残っているよ。あ、だけど、こうなる前の仕事のことが、よく思い出せない。俺はPMCのスタッフだった。そして、多分君を含む何かのチームの護衛をしていた……はずだ。だけど、その前後の詳細はあまり思い出せない……」

「ふむ。私も同じ。どこかの町で護衛の人たちと合流して……たしか船で出発したはず。船の中でパーティーみたいなことをしたことも覚えているわ。だけど、その後どうなったのか……」

「パーティー? ええ。目的地までは時間がかかるからって言って。日本のサムライがイアイギリとか見せてくれたわ」

「ああ。それ俺」

「え? あなた、サムライだったの?」

「まあ、見世物芸だけどね。一部の人に受けるので、要人護衛とかで、よく披露していた」

「ふむ。あれがあなただったのね。今はずいぶんかわいらしいけど」

「それはお互い様。パーティーの間もタブレットを手放さなかった、若い女性の研究者がいたのは覚えてる。たしか、プラチナブロンドで眼鏡かけていた気が」

「そう。眼鏡かけてたの。私。だけど、今は裸眼で結構見えているの。この若返りのメカニズム、文字通り眼が悪くなかった頃の私に戻っているのよ」

「そうなのか。まあ、こっちは、体力とか運動能力が子どもレベルなので、思うように動かないストレスばかりだけどな」

「ふむ。いろいろとわからないことが多いわね」

「そうだな。で、何か考えはある? 今の状況を打破する何か」

 俺はエマに問いかけた。

「悪夢みたいな世界。おそらくはアメリカのロサンゼルスっぽいのだけど、変な化け物の闊歩する世界。幻覚やVRゲームにしちゃ、できすぎよね」

「ああ。幻覚というには、君と俺との記憶が噛み合いすぎる。もっとも、どっちかが、よくできたNPC、ノンプレイヤーキャラクターの可能性はあるけど」

「どちらかというと、MMORPGみたいな気もするわ。だけど、多分そんなものじゃない気がする。それにしちゃ、《《できが良すぎる》》わ」

「そうだな」

「ただ、ゲームと言われると、何か怪しい部分がある。あの化け物車は俺が放置されていた倉庫の中に入ってこれなかった。なぜだろう。でも、ゲームだったら、セーフティエリアに設定されていた、みたいな感じもする。アイテムも、工夫できるようなものが残っている」

「ゲーム……」


 エマは、少し黙って考え込んだ。

「ゲームのステージだとすれば、どこでクリアかな?」

 先ほどのイラスト地図を手にもって考える。

 俺のいたスポーツ店、そしてこのダイナーの位置。

 俺が、この地図でゲームを作るとなると、ステージのゴールは、この店の逆側。

 商店街のゴールにあるショッピングセンター。

「ゴールはここかな」

 そう言って指さす。


「ここがスタート位置、ないしは序盤って取ればね」

「だけど、他に何もヒントがないからね」

「いいわ。納得してあげる。と、いうか悪くない考え方の気がする」

「いいのかw」

「ゲームのステージで言えば、外にいる敵のレベルがどこかで上がる」

「感覚でいいかな」

「いいわよ」

「ストリートが基本ステージ」

 そう言って、店の立ち並ぶ道路を指さす。

「俺らは、この間で、アイテムを確保する。そして、本番ステージはショッピングセンター。なぜなら、ここで移動の方向が変わるから。車も入ってこれないだろうから、敵も変化するんじゃないかな」

「いいわね。これだけのショッピングセンターなら、1Fに銃砲店くらいありそうな気がするし」

「アイテム、か。攻略的に考えれば、そういうことだね。そこまでうまく行くかわからないけど」

「ゲーム好きなの?」

 む、そこに引っかかるのか?

「日本人なら、大体好きなんじゃないかな、主語大きいけど」

「そうね、サブカル大国だもんね。この店もそうじゃない?」

「そうだね、多分」

 見回すとアニメキャラクターのポスターで埋まっている。


 俺自身、子どもの頃からアニメは好きだったし、自衛隊は意外にもオタクが多かったので、そういう意味で肩身せまい思いはしなかった。

 そのため、視聴は今も続いている。

 さすがにサブスク経由だが。

 日本国内のコンテンツがあふれている感じがなつかしい。


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