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筒抜けの輪が顔だった。
人間大のバケモノが真正面にいた。
おおもとはマネキンなんだろう。
四肢がある人間のような化け物。
化け物と言い切るのは、顔の部分がすっぽりと抜けた、ドーナツみたいな頭を持っているからだ。
そして、ドーナツの輪の中にびっしりと鋸のような牙が並んでいる。
ヘッドショットはあきらめて、胸と腹に一発ずつぶちこむ。
赤い血とともに、もんどりうって倒れる。
ブティックであろう店舗から、ぞろぞろとやってくる。
ルールが書き換わった。
店舗は安全地帯ではなくなった。
「ショッピングセンターまで走ろう。もう、店舗は安全地帯ではなくなったようだ」
「そうね。賛成」
「ついていく!」
俺たちは走った。
そして、エントランスの階段を上って、入り口へたどり着く。
自動ドアは開かない。
俺は銃弾をたたきこみ、ガラスのドアを割る。
砕け散ったガラスドアを抜けて店舗へと踏み入れる。
目の前の柱に店内図。
そして、スポーツ用品売り場を探す。
「左へ!」
マネキンがひたひたと迫ってくる。
先頭のヤツを撃つ。
「あったわ」
ショッピングセンター内らしい、地味な売り場だ。
ウッドストックのライフルとショットガンがメイン。
ガラスケースの中、金属製のコードにつながれている。
「弾丸を!」
鍵のかかっている引き出しを壊して、M4で使えるマガジンと弾丸を探す。
ヘンリーは、レミントンで使える弾丸を箱で取り出している。
周囲からマネキンが迫りつつある中、マガジンへの装填の時間を稼ぐ必要があった。
そして俺は《《それ》》を見つけた。
日本の鎧甲冑と一緒に飾られている日本刀。
鎧甲冑と飾られている割には、反りも長さも、幕末あたりの打刀だ。
ガラスケースをたたき割り、それを手に取った。
重さ、バランスともにしっかりとした《《本物》》だ。
「時間を稼ぐ。エマのライフルのマガジン装填とショットガンは二丁持って。あと、グロック19のマガジン探して。なければ、適当にピストル用意してマガジン何本か。エマ、頼めるか」
「わかった。まかせて」
俺は、その言葉を背に、マネキンに正対した。
そして、メイド服のエプロンに刀をさす。
「さて、一人残らず叩き切ってやるから、かかってこい」
襲い掛かるマネキンに対して、居合一閃。
首を飛ばし、返す刀でもう一体を袈裟懸けにする。
二体とも動かなくなった。
そう、殺せるのだ。こいつらは。
マネキンの腕には、びっしりとトゲが生えていた。
両手を広げて、抱き着いてくるのが、こいつらの攻撃だった。
それ故に、攻撃のタイミングが実にわかりやすい。
とは言え、捕まったら逃げ出すのも難しそうだ。
実質、即死はなくとも、死は間違いない。
それを躱しつつ、刀を振る。
数が増えてくるとさすがに厳しい。
「お待たせ!」
その言葉とともに銃声。
それも複数。
エマのM4とヘンリーのレミントン。
俺はもう一度、刀の柄を握る。
そしてマネキンたちの中に躍り込んだ。
俺たち以外のものが動かなくなるのに、そう時間はかからなかった。




