表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

隣のアイツと夏の都会

作者: 詩雨


「山行きたい」

「ヤ・ダ」

「何で」

「虫に刺されたくない」

「あー、あるわ」


 自販機で買った缶ジュースを片手に、外を見つつ喋る。夏の暑さと手の体温にも負けず、オレンジジュースは冷たさを保っている。


「……木下さん、お付き合い始めたんだって」

「山藤とだっけ」

「何で知ってんのさー!」

「有名じゃん」

「基準おかしいよ、どうなってんだ」


 一口あおると、みずみずしい果汁が身体を駆け巡る。口内に固形物を感じる。どうやら果肉入りを買っていたらしい。

 夏特有の、生暖かい風と冷涼な風のミックスが、ゆらゆらと陽炎のように髪を揺らす。ちょっと明るく染めたはちみつ色の自分の髪と、生まれたときからいじっていない、隣のアイツの真黒髪。くるくるふわふわな自分の癖毛と、指通りの良くてサラサラな、隣のアイツのストレート。


「ねー、都会って結構ちっちゃいよね」

「上から見下ろしてるからでしょ」

「下行けばでっかい?」

「世界で見れば小さい」

「何なんだよ」


 あまりに周りが明るいと、都会が白く光って見える。眩いビル群、輝く道路、ときたま通る電車まで、まあまあ大げさな表現だけれど、世界がきらめいて見えたりする。

 朝とも昼とも付かない頃合い、2人して別々のベランダで、淵に体重を預けながらいつもの缶ジュースを飲んで、白い都会を見下ろす時間がどうしようもなく、幸せ。


「海行きたーい」

「ヤ・ダ」

「何で」

「クラゲに刺されたくない」

「んー、いないわ」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ