眠った記憶の蓋
昔、いじめられていたことがある。
俺ではなく俺の幼なじみの女の子が。その幼なじみは樹という名前で、いじめた奴はいわゆるガキ大将のような、小学生にしては体のデカい奴で、名字は照井。
そいつが取り巻き3人と共に筆箱を隠したり、周囲の子達にイヤな噂を流したりしていた。その過程で俺にも被害が及んだため、俺は樹をかばうようにそのガキ大将に対して怒った。するとそいつとそいつの取り巻きが
「痛い目見せるぞコラ」
とか
「オイいいのか?ぼこすぞ」
とか言ってきたので、
「あ、やってみろよ。おれはどうなっても知らねーぞ」
と照井とその取り巻き全員の頭をぶっ叩いてやった。
その中の一人は鼻血を出し、肝心の照井君は3発はこらえたが4発目で泣きじゃくって担任の先生のところに逃げてしまった。
その後、担任がいじめに厳しかったこともあり、そのいじめっ子達は全力で叱られ、ついでに殴った俺もこっぴどく叱られ、さらには樹の証言からいじめを指示していたのがクラスの中心的な女の子達だと判明、その子らもすげー怒られた。
結果的に俺のクラスからいじめは無くなったが、以来樹とはあまり話せていない。今はもう二十歳だ。人なんか殴った日には警察にしょっ引かれる。
ちなみに、樹とは今でも交流が続いている。
家も近いし、たまに電話もする仲だが、その関係は絶妙な距離を保ったまま8年近くも続いていた。端かちなみに、樹とは今でも交流が続いている。家も近いし、たまに電話もする仲だが、その関係は絶妙な距離を保ったまま8年近くも続いていた。
端から見たらどうでも良いことだろう。俺だってそう思う。でも、彼女にとっては自分の無力をさらした黒歴史だ。樹の親は未だに世間体を気にする家庭なのか、自身の子がいじめに遭っていると知るや否や、事件に関わった子の親御さんに謝ろうとして、あげく樹を叱りつけたらしい。
現在の樹は一人暮らしで、家族や親戚とも疎遠だと聞く。ただ、俺とは今でも連絡を取り合っているし、たまに遊ぶ約束もする。
ちょっとよそよそしいが。きっと今でもあの頃を思い出して悩んだりするのだろう。だからなんとかしてあげたい。