叩き起こしたい記憶
玄関からは懐かしいコーヒーのかすの匂いがした。消臭効果があるとかで、ペットボトルの下の部分を切り取った容器にコーヒーかすが入れられている。
玄関を抜けるとすぐに廊下に出る。左が通常教室棟で右が特別教室のある棟だったはずだ。メアとのやり取りを思い出す。
①特定の誰かの記憶はその人との思い出の場所にある
②そこで思い出したい記憶を思い出せる
とこんなことを言っていたはずだ。そして、思い出の場所ならば間違いなくあそこだろう。俺は左に体を向けてゆっくりと食事でも噛み締めるように歩き出した。
なお、このときは忘れていたが、
③思い出してから恐怖してはならない
④恐怖し動揺すると過去のトラウマが襲いかかってくる
⑤襲われてもし気絶したが最後、二度と夢からは覚めない
という重大なルールもこの時に教えて貰っていた。もちろん、この時の俺はそんなこと覚えていない。
一階の廊下を進むと、この階の教室と二階へ上がる階段に別れているので階段側に進む。
その階段を上り、右左ある分かれ道を右に進み、教室が並ぶ廊下へと進む。
そして、前から数えて二番目にある教室こそが俺が在籍していた6年2組の教室だ。
教室の扉を開けて中に入る。教室内は気持ち悪いぐらい静かで、それでいて日の光が差していて明るかった。直接日光が当たって心地よい。
黒板から見て一番右奥にある元自分の席に座る。
さて、なぜ俺がわざわざ名も知らぬ女性からよく分からんミサンガを貰い、そしてなぜそれで夢の世界にある小学校を訪れたのか、いったん整理しよう。
その中できっとあの頃の事もはっきりと思い出せるはずだ。