神々の遊戯2
明日より新連載小説
「まるで小説のような人生を歩みたくて〜うさぎとモフモフパラダイスをするので、自分を追放した祖国に呼ばれても、もう戻れない...」
がスタートします。 是非こちらも見てみて下さい。よろしくお願い申し上げます。
「この話は、ナルシス神様が、降臨する事となった過去の経緯であります」
(ナルシス神様視点)
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ここは地上世界に呼ばれていない、神々が暮らす、神様の世界。
ナルシス神様は今日もまた、花壇の水やりに精を出していた。
なぜなら彼は薔薇が大好きだったからだ。
数百年前に、花畑神様からこの花壇を譲り受けて以来、神々の世界を彩る花々の面倒は、ナルシス神様が行っていた。
「はぁ〜私は地上世界に呼ばれる日が果たして来るのだろうか?」
ナルシス神様は本日もため息を吐く。
ナルシス神様が地上世界に降臨するには、その国の初代王は必ず吟遊詩人の職業を持っていないといけないのである。
初代王の職業により、降臨する神は決まるのは、神々のルールであった。
人が求める職業はいつの時代も似る。武芸関係の神や宗教の神などはひっきりなしに、地上世界に何度となく降臨している。
しかし、吟遊詩人が王になるなんていう、ギャグみたいな国は今まで存在しなかったのであった。
吟遊詩人ーー英雄の物語を読み聞かせ伝聞する語り人である。
地上世界に一度も呼ばれた事のないナルシス神様は、地上世界の歴史本を発行する神々達の話を聞いては、地上世界に思いをはせる。
とにかく、神々の世界は平和で暇なのである。
そんな折、神々の世界でどうやら、新しい国が出来そうであるとの噂を聞いた。
ナルシス神様も興味津々で情報を耳にする。
「初代王ユウト職業は吟遊詩人」
ナルシス神様は遂に来たかと思い、ガッツポーズを取る。
早速、降臨の準備をしていたら、ライバルの神々が現れた。音楽神様と暗殺神様と癒しの神様である。
「ナルシス神よ! 吟遊詩人というだけでソナタが選ばれる訳ではない! ユウトは暗殺者や忍者などの職業も取っている。だからこの暗殺神も候補に入るのだよ」
「いやいや、ユウトは吟遊詩人だけでなく、ロックスターという大変レアな職業までとり、バンドも組んでいる。この音楽神こそが相応しい」
「何をいうか? お前らが地上に降りても、人間に利がないのではないか? ユウトは賢者の職業がある。この癒しの神様が相応しいに決まっている」
四人は言い合いを続けている。
しかし、ナルシス神様はどうしても行きたかった。
「この儚くも美しい薔薇のような私は、未だ地上世界に降臨した事がないのです! 今回は譲ってもらえませんか?」
しかし、残り三柱の神様達はそんな言葉では納得しない。
まぁ新しい国が興ると、たまにこういう事態も起こる。
そんな時は決まって、神々の遊戯で勝負を決める。
今回の対決はどうやら名作である、神々の野望らしい。
ナルシス神様は、こういう時のために、ゲームを色々やり込んでいた。
神々の野望は、プレーヤーが好きな種族を選び、その種族の土地、兵士、文明、武器を発展させながら、国とりをしていく、戦略ゲームである。
ナルシス神様はすぐ様、一番見目麗しいエルフ族に決めた。
エルフ族は弓矢や魔法が得意な、長寿の種族であり、森林生活を好む。
暗殺神様はドワーフ族を、音楽神様は人族を、癒しの神様はなんとハーフエルフ族を選んだ。
ドワーフ族は生産技術が高く、酒が大好きな種族である。主に山岳地帯を好む。
ハーフエルフ族はエルフ族に他の種族を掛け合わせた種族である。長寿よりも少し寿命は短くなるが、他種族の長所をも取り入れた、良いとこ取りの種族である。
ナルシス神様はもちろん大森林を拠点に、暗殺神様は山岳地帯に、音楽神様は平野部に、癒しの神様は牧草地帯に拠点を構えたのであった。
この神々の野望は通常では考えられないスピードで物語が進む。一ターンが四ヶ月である。
ナルシス神様はとにかく、最初は子作り政策に力を入れた。長寿種族はなかなか子供ができないからだ。
それと並行して、文明力と技術力を中心にあげる。
食料なら森にいくらでも山の幸があるからだ。
もちろん、各陣営は他陣営に関しては、見れない作りになっており、知りたければ、偵察隊を組織する必要があった。
ーーはじめの十年は、どの陣営も仕掛けない。
なぜなら、神々の野望にはこの四ヶ国以外にも国があり、適当に攻めてくるからである。
他神の拠点制圧の前に、自軍の防衛で手一杯であったのだ。
そして、二十年が過ぎた時に、オーク族という、豚に似た種族が音楽神様率いる人間の国に攻め入るタイミングで、暗殺神様率いるドワーフ族も動く。
「人族は技術力が高いからな! 早めに潰させてもらう」
暗殺神様は悪い笑みを浮かべる。
暗殺神様は偵察部隊をかなりの数編成して、情報戦を重要視したのだ。
オーク軍三万にドワーフ軍二万が人族の首都を囲む。
音楽神様は、頭を抱えている。
なぜなら、たった二十年程度では、製鉄文明までいかないからであった。
音楽神様率いる人族は、首都の外壁に弓矢兵を置き、護りを固める。
オーク軍はガムシャラに攻めてきた。
人族は必死に抵抗する。数の上では勝っていても、力や素早さなどのスペックが違いすぎるのだ。
やがて、各所で押され始めた。
暗殺神様率いるドワーフ兵はチャンスと見るや、穴を掘った。
ドワーフは穴掘りや武器の類を作らせたら、天下一である。
やがて、その穴が、王宮近くまで通じると、ドワーフ兵が王宮に雪崩込んだ。
音楽神様GAME OVER
さてさて、残りは三柱である。
ナルシス神様は、エルフ秘伝の結界魔術を発動させた。
これは敵軍が森に入ると、迷子にさせる結界魔法である。
暗殺神様率いるドワーフ族の偵察部隊は、ナルシス神様率いるエルフ族の動きを掴めなくなった。
ーー更に十年が経過する。
癒しの神率いるハーフエルフ族は、NPCの人族と、暗殺神様率いるドワーフ族は力をつけたオーク族と争っていた。
ナルシス神様率いるエルフ族はというと、
植林をして、領土を堅実に増やしていた。
ーー更に十年が経過した。
ナルシス神様率いるエルフ族は連弩を開発する事に成功した。
これはボーガンに近く、一定以上の力があればだれでも矢をつがえることができるし、トリガー部分の装置を操作するだけなので訓練をちゃんと受けていなくても扱うことができます。
エルフの森林に足を踏み入れた他種族達は、たちまち、この連弩で撃退された。
ナルシス神様もまずは、防衛に力を入れたのでした。
ーー更に十年が経つ。
暗殺神様率いるドワーフ族は、癒しの神率いるハーフエルフ族と運命の戦いを挑みます。
「さっさと白黒つけようぞ」
「望むところだ」
ドワーフ族は近接タイプである為に、遠距離攻撃を警戒します。だから煙玉を投げて、視界を悪くしました。
ハーフエルフ族は遠距離タイプである為に、近距離が苦手です。大楯兵を前面におき、弓矢で敵兵を狩る作戦にでます。
膠着状態が続き、痺れを切らした暗殺神率いるドワーフ族は夜襲をかけます。
しかし、癒しの神率いるハーフエルフも夜襲対策は万全で、火矢や篝火を焚いて、応戦しました。
両軍引き分けの色が濃厚になった頃。
何と! この状況を待っていたかのようなタイミングで、ナルシス神様率いるエルフ族が登場して、両軍に連弩を浴びせました。
連弩は弓より遥かに強力でガトリングガンの弓バージョンと認識して貰って大丈夫です。
癒しの神率いるハーフエルフ族も、暗殺神率いるドワーフ族も堪らず敗走します。
ナルシス神様率いるエルフ族は二手に分かれて、敗走兵を追いかけ、首都を包囲しました。
ナルシス神様率いるエルフ族もこの十年は勝負の年であると考えて、偵察部隊を派遣していたのでした。
連日の連弩攻撃で、癒しの神様率いるハーフエルフ族も、暗殺神率いるドワーフ族も物凄い勢いで、兵士が死んでいきますが、何とか耐えます。
そんな折、ナルシス神様率いるエルフ族が攻城兵器を運び込んで来ました。
投石器です。読んで字の如く、石を遠くまでぶっ飛ばします。
たちまち、癒しの神率いるハーフエルフ族の王宮も、暗殺神率いるドワーフ族の王宮も崩れ落ちました。
ナルシス神様 WIN
「はっはっはっは! この三千世界でもっとも華麗にして、超絶な美の持ち主であるこのナルシス神に決まりだな! では行って参るぞ」
さてさて、これから興るナルシス王国は、どんな国になることやら...
ナルシス神様は期待で胸が一杯になるのであった。
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