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弁護人質問(2)
「被告人が治療を受けた怪我は、貴方達が負わせたものですか?」
私は、被告人を逮捕した警官にそう質問した。
「異議あり、裁判長。明らかな誘導尋問です」
被告人の罵声を聞いた裁判長の顔には「何からツッコミを入れれば良いんだ?」と言いたけな表情が浮かんだ。
「気にせずに答えて下さい」
「は……はぁ……逮捕の時点で、被告人は体中に傷を負っていました」
「被告人の逮捕には手間取りましたか?」
「いえ、それほどでも」
「何故ですか? 何故、被告人を逮捕するのに大きな手間を要しなかったのですか?」
「それは……被告人が……2人目の被害者に下腹を蹴られて、のたうち回って苦しんでいたので……」