表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
殷周演義  作者: 諸橋カムイ
【第一章】
8/23

「子牙出廬」4

子牙(しが)(れん)散宜生(さんぎせい)閧夭(こうよう)の前で、楽人たちが(かな)でる華やかな楽曲に合わせ、踊り娘たちが(そで)や帯をひるがえし、流麗な群舞を披露していた。


姫昌(きしょう)の子、(はつ)廟堂(へや)の奥壁にある玉座(いす)に腰かけていた。


けばけばしい原色の衣服と金銀珠玉の装飾品を身にまとった、幼さを多分に残しているこの青年こそ、父が辛王(しんおう)(とら)われているにもかかわらず、豪華な屋敷を建て続け、美酒と美食と美女に囲まれた遊蕩(ゆうとう)を行い、家臣たちから不興を、領民たちからひんしゅくを買っている張本人である。


長らく西方、遊牧民族との領境に赴任し、主君幽閉の報を聞いて急ぎ西岐(さいき)へ戻った散宜生と閧夭は、姫発のあまりの豹変ぶりに目と口を丸くした。


───子牙は何度めかの生あくびをする。


「こら、子牙先生! だらしがないぞ」

背筋を伸ばし、姿勢正しく椅子に腰かけている蓮は、視線を演舞のまま子牙の脇腹をつねった。


「うるさいなぁ。ひまなんだからしょうがない」


子牙はたっぷり倍にして少女の頬をつねる。蓮も負けじと師の足を踏みつける。


たがいが相手を殴ろうと腕を振りあげたとき、音曲が止み、舞踏が終わった。ふたりはあわてて賞賛の拍手を贈る。


「子牙とやら」


姫発は手招く。


子牙は席を立って蓮に舌を見せると、姫発に拱手(きょうしゅ)する。


───恭しいが、恐縮の(てい)ではなかった。


「お主の髪の色は親譲りか?」


姫発は彼の黄金の髪をまじまじとみつめる。


「さて、もの心をついた時には、父も母も死んでいたので、わかりかねます」


「そうか」


それだけ言うと、子牙の金髪からあきらかに興味を失くしたようであった。


「お主が岐山(きざん)より持参した『宝』を見せてもらおうか」


「御意」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ