第6話 武器を買いました。
まずは武器を手に入れるか。
「この近くに武器屋はあるか?」
「ここから右に曲げれば武器屋があるわ」
俺たちは武器屋のところに向かった。
ここか。
上の看板に剣とか盾の絵が描かれてるからすぐわかった。
でもなんだあの変な文字。
この世界の文字か?
そういえばまだこの世界の文字はわからんな。
勉強とかしたほうがいいかも。
中に入ると壁に武器がたくさん飾られていた。
カウンターの方を見ると、禿げたおっさんが立っていた。
「よう、いらっしゃい」
「あ、ども」
「ん?どこ見てんだ!禿げてるの悩んでるんだよ」
「あ、ごめん」
「お前等、武器を買いに来たのか?」
「いや、買いに来たのはこいつだけで私たちは付き添いで来ました」
「え、お前等は武器を買わないのか?」
「私たちは魔法があるからいいのよ」
ライカは手から雷を出しながら言った。
「魔法か。それってできる人とできない人といるのか?」
「誰でもできはするわ。この魔石の指輪をつけてればね」
ライカとエリカの指には紫色の石が埋め込まれた指輪がはめられていた。
「それって、俺にも使えるかな」
「はい、使えますよ。私ので試してみますか?」
俺はエリカから指輪を受け取ると、指にはめた。
どうやったら出るんだ?
力を込めると指輪から火が出てきた。
他のも出せるか試してみるか。
すると次は水が出てきた。
次は氷がでてきた。
その次は雷を出した。
その他にも風を巻き起こしたり、土を出したりした。
なんとなくコツは掴めてきたぞ。
これ、出そうと思っただけで出るんだな。
魔法を出すのって簡単だな。
二人の方を見ると二人とも唖然としていた。
「ど、どうした。二人してその顔」
「どうしたってあんた何者?」
「え、なんでそんなに驚いてるんだよ」
「だ、だってすべての属性を出したから」
「?どういうことだ」
「魔法は三つの属性を持ってるだけでも凄いのよ?」
「全部の属性を使える人なんて、この世に存在するはずがありません」
「え、そこまで?」
どうやら魔法は一つか二つの属性を持つのが普通らしい。
全部使ってそんなに驚くってことは、この世界には全属性を持ってる奴はいないってことか。
俺はチート能力があるから全属性が使えたのか?
全部って言ってたけど全属性て何があるんだ?
さっきなんの属性出したか忘れてしまった。
「魔法ってどんな属性があるんだ?」
「魔法は火、水、風、土、氷、雷の六つにわかれています」
「おい!」
びっくりして声のした方を見るとおっさんが凄い顔してこっちを見ていた。
「は、はい」
「何も買わないから出てってくれ」
「あ、すいません。買ってから出ていきます」
「話は後にするか」
魔石の指輪をエリカに返すと、どの武器にするか悩んだ。
どの武器にすればいいんだ?
槍とか弓もあるけどやっぱり勇者といったら剣だよな。
「おっさん、どの剣が一番強いかな」
「そうだな。どれも性能はいいが、これが一番いいかもな」
おっさんは壁から聖剣らしきものを取った。
「それは?」
「これは魔剣だ。さっきお前等の話を聞いてたら、お前全属性が使えるらしいな。俺も初めて見た。全属性が使えるのは世界でお前だけかもな」
「この魔剣は、魔法との組み合わせ技がいいんだ。例えば火を出して剣に纏って攻撃できるし、他にも色々できる」
「へえ~、じゃあそれで」
「お金はいくらですか」
「金貨八枚だ」
「高っ!?」
この世界のお金って金貨とか銀貨を使ってるのか。
金貨八枚がどのくらいの価値かは知らんが高いってことはわかった。
「でも、今銀貨五百枚持ってるからいいんじゃないか?」
「………そうね。いい武器だと魔王に勝てる確率があがるからね」
「じゃあ、これ買うよ」
「毎度あり」
銀貨八十枚を渡すと、剣を受け取った。
かっこいいな~。
俺は剣を持ってまじまじと見つめていた。
「そういえば、お前なんで剣が欲しかったんだ?冒険者なのか?」
「いや、俺の職業は勇者だ。魔王を倒すために武器を買いに来たんだ」
「魔王!?やめた方がいいと思うぞ!絶対死ぬ!」
見た目で決めてるだろ、それ。
「死なねえよ。俺、強いから」
「本当に行くのか………じゃあ、もう俺と会うこともないかもな」
おっさんは涙を流し、目に手を当てる。
いい年したおっさんが泣くんじゃねえよ、情けない。
「じゃあ、行ってくる。あ、おっさん、この近くに魔石の指輪が売ってある店はないか?」
「ん?ああ、それならこの店の隣にあるぞ」
「え!?マジか」
俺は外に出て、隣の建物を見た。
字はなんて書いてあるかわからんが、それっぽい建物だな。
中に入ると、前には魔女の服を着たおばさんが立っていた。
横の壁には、たくさんの本が並べられていた。
魔導書かなんかか?
「おばさん、ここってどういうところ?」
「ここは魔術屋だよ」
やっぱりここか。
それにしても本がたくさんあるな。
図書館みたいだ。
机には水晶玉が置いてあった。
占いもするのか?この人。
「何してんのよ?指輪を買いにきたんでしょ?」
「あ、そうだった。おばさん、魔石の指輪ってある?」
「ああ、あるわよ」
おばさんは机の引き出しを開けると指輪を取って俺に見せた。
「いくらだ?」
「銀貨十枚だよ」
「銀貨十枚って高いのか?」
俺は二人に向かって尋ねた。
「高いですけど……魔法を使うためだから仕方ありません」
「買っていいわよ」
俺はおばさんに銀貨十枚をやると指輪を受け取った。
これで俺もチートな魔法が使える。
「じゃあ、行くか。二人とも」
「そうね」
「はい」
俺は、指輪を右手の人差し指につけて、魔術屋を出て行った。