第5話 説得して許してもらった。
今日も俺はずっとベッドに寝て過ごした。
暇だ。
でも、この時間ももうすぐおさらばだ。
勇者になったら、スリル満点の楽しい冒険が待ってる。
そして魔王を倒して帰ったときにはハーレムライフが待っている。
俺の人生はバラ色だ!
くぅ~、オタクの血が騒ぐな。
今日は家でゴロゴロして明日鎧とか武器とか揃えるか。
すると、扉を叩く音がした。
「ニシカタくん、入ってもいいですか?」
この声はエリカか。
「ああ、いいぞ。用はなんだ」
すると扉を開けてエリカが入ってきた。
「ニシカタくん、さっき話してたことなんだけど」
「勇者になるってことか?」
「はい。さっき話してた勇者になるって本当なんですか?」
「当たり前だろ?そのためにこの世界に生まれてきたといっても過言ではないよ」
「俺は、勇者になって魔王を倒す」
「魔王、ですか。後悔しませんか?」
「するわけないだろ?やりたいと思ってやるんだから」
「でも、魔王はそう簡単には倒せないんですよ?」
「ああ、知ってるよ」
「あのエルクス族ですら倒せなかったんですよ?」
「エルクス族がなんなのか知らんけど、とにかく魔王は強いってことはわかった」
「私、ニシカタくんが本気だってことをみんなに伝えてきます」
すると部屋を出ていった。
多分あの二人のところに行ったんだろう。
少し時間が経つとどんどんと大きな足音が聞こえた。
するといきなりドアが激しく開いて、
「ニシカター!」
そこにはライカが立っていた。
「なんだよ、ライカ。静かにしろよ。近所迷惑だろ?」
「そんなことはどうでもいい!」
そう言いながら俺のところに詰め寄ってきた。
「いや、よくはないだろ」
「やっぱり本気なのね!魔王を倒しになんて絶対行かせないんだから」
言い方ツンデレみたいだな。
「なんでだよ。職業を選ぶのは俺の勝手だろ!」
「私はニシカタに死んでほしくないのよ!」
「……なんで」
「あんたは私にとって可愛い弟だからよ」
「ライカ……お前、何言ってんだ?」
「な、そこは感動するところでしょ!?」
「そもそも俺はよそ者だろ?お前等の家族じゃねえし」
「血が繋がってなかったら家族じゃないのですか?」
エリカが言った。
「え、だってそうだろ」
「私はそこが問題じゃないと思います。愛さえあれば家族だと私は思います」
「へえ、お前はそう思うのか。って、そこはどうでもいいんだよ。とにかく俺は勇者になる!」
「ダメって言ってるでしょ!?」
するとライカは俺の手を掴んできた。
「大丈夫だ。俺は死なない。何があっても絶対に」
俺はライカに笑顔を見せてそう言った。
「し、信じられるわけないでしょ?そんなの」
「さっきも言ったが俺はチートだ」
「そのチート?ってなんなのよ」
「えーと、ゲームで裏技とか改造して強くするってことだ」
「「「ゲーム?」」」
「はい、今のなし。要するに世界最強ってことだ」
「それって魔王より強いってこと?」
「まあ……そういうことになるのか?」
「…………わかったわ。勇者になることを認める」
「マジか!?やったー!」
「ただし、私もついていくわ」
「え!?」
「だ、だって心配だし死なれちゃ困るから私が守ってやるのよ。悪い?」
「い、いや、別に」
ま、仲間がいることに越したことはないし、それに可愛いからな。
「じゃあ、俺は勇者になっていいんだな」
「私は許したわ」
「他の二人は?」
「私はいいわよ。魔王を倒したらお金ががっぽがっぽ手に入るからね」
「私も一緒に行くなら認めます」
「え、お前も行くのかよ!?」
「嫌なんですか?」
「いや、嫌じゃねえよ。むしろ嬉しい」
すると、いきなり音がなってステータスが表示された。
―――――
あなたは勇者になりました。
―――――
これ、いちいち伝えるのか?
なんか面倒くせえな。
「どこ見てるのよ?」
「え、ステータスを見てたんだけど、もしかして見えないのか?」
「当たり前でしょ。え、もしかして今まで自分のステータスは他人の見えるって思ってたの?」
「え、違うの?」
「違うわよ。あんた、自分のは見てても他人のは見たことないでしょ?」
「確かに」
ステータスは他者には見えないのか。
まあ、個人情報だからな。
「じゃ、ライアはここで残ってくれよ?」
「わかったわ……でも、ちょっと寂しいわ」
「大丈夫だって絶対生きて帰るから」
「そう信じてるわ」
「じゃ、行くかって、もう夜かよ。何時間喋ったんだ?」
「旅に出るのは明日にするか」
そしてその日は眠った。
「その服でいいの?」
「ん?これか?これは俺の故郷の服だ。これがあると、あのときの思い出が蘇るんだ。だからこれを着て旅に出る」
「へえ~、変わった服ね」
「俺にとってはお前等のほうが変わった服だけどな」
必要なものは、お金と食材だけでいいか。
「じゃあ、これはエリカが持っててくれ」
俺はお金と食材が入ったバッグをエリカに渡した。
これが勇者になる記念すべき第一歩だ。
「じゃあ、行くか」
俺は玄関のドアを開けてライカとライアと外に出ていった。