第4話 俺、勇者になる!
「あの、君の名前も教えてほしいんだけど」
「ああ、私?私は、ライア・エラクスカで、この子たちのお母さんよ」
「そうなの?同い年に見えるけど」
「よく言われるわ」
「あの俺って、ここに住んでもいいんですよね?」
「ええ、いいわよ。あんたよく見たら可愛いし」
可愛いって、あまり言われるのは好きじゃないんだけどな。
てか、そんなにあっさり認めていいのか?
しかもいい理由が可愛いからって、この人、顔で判断しそうだな。
まあそんなことはどうでもいいか。
今はとりあえず、住む家が手に入ったことを喜ぼう。
「じゃあ、この家には空いてる部屋があるからそこがニシカタ――」
「西加です」
「——の部屋ね?」
「あ、うん、わかった」
「その部屋まで案内してほしいんだけど」
「こっちよ」
俺はライアについていき、二階にあがった。
「ここよ」
ライアがドアを開けると、そこにはまあまあ広い部屋があった。屋根裏部屋か。
ここが俺の部屋か。
まあ、いいや。居候してるわけだし、文句は言ってられない。
「じゃ、私は仕事があるから、もう出るわね」
ライアが出ていくと俺はベッドに飛び乗って横になった。
俺、これからここで暮らしていくのか。
そして勇者になる。
チート能力も神から手に入れたし、魔王は絶対倒せるはず。
俺はこの異世界を、隅々まで謳歌してやる!
そして、俺はそのまま眠ってしまった。
住み続けて、約一週間が経過した。
そろそろ魔王を倒しに世界を旅したいな。
てか早く行かないと、俺ただのヒキニートじゃね?
全然外に出てないし、食っちゃ寝してるからな。
早く勇者にならないとダメだな。
朝ご飯の時に勇者になるという話をするか。
それから少し時間が経つと、階段をあがる足音が聞こえてきた。
誰だ?
すると、エリカがあがってきた。
朝ご飯か。ナイスタイミングだな。
「ご飯か?」
「はい。できましたので、呼びにきました」
「じゃあ、行こうか」
俺たちはキッチンのところに向かった。
ライアとライカがもう座っていた。
「もっと早く来なさいよ。早く食べれないじゃない」
「すまんすまん」
俺はライアの横の椅子に座った。
「それじゃいっただきまーす」
するとライカはがつがつと食べ始めた。
美味そうに食うな、ライカは。
俺も早く食べよう。
そろそろ仕事の話題を出そうかな。
そんなことを考えてるとライアが言った。
「そういえば、ニシカタ」
「……はあ、もうニシカタでいいよ。で、何?」
「あんた一週間もここにいるけど、働いてるの?」
「え、まだだけど」
「確かにニシカタって、ずっと家の中でゴロゴロしてるだけで他には何もしてないわよね。それじゃただのニートよ?」
この世界にもニートという言葉があることに驚きだわ。
「俺もそろそろ仕事をしようと思ってるんだけど、どんな仕事があるんだ?」
「村人とか商売人とか他にも色々あります」
村人って農業をする人のことか?
てか、二つとも安全な仕事を教えてるな。
俺に危険な目にあってほしくないのか?
「俺、最初からやろうと思ってる仕事があるんだけど」
「「「え、どんな仕事?」」」
「俺、勇者になるよ!」
「あんたねぇ、勇者になるって簡単に言ってるけど勇者は結構危険な職業なのよ?」
「ああ、知ってるよ」
「じゃあ、なんでその職業をしようと思ったんですか」
「楽しそ……みんなを守りたいからだよ」
「今楽しそうだからって言いかけたよね?絶対言いかけたよね?」
「ああ~もうわかったよ。楽しそうだから、これでいいか?」
「開き直るな」
「いい?勇者の歩む道は残酷なの。危険だからもしかしたら大事な仲間を失うかもしれない。それにあんたも死ぬかもしれないのよ?」
「それはないから安心しろ」
「なんでそう言い切れるのよ?」
「だって俺、チートだから」
「「「ニート?」」」
「チートだよ!俺をニート扱いすんな!」
「そもそも俺の職業に勇者って書かれてるんだから、もう決まったようなもんでしょ」
「でも、職業を変えれることはできるのよ?」
「俺は勇者以外の職業に就くつもりはない」
そんな話をしてると気づいたらご飯は食べ終わっていた。
俺は茶碗を持つと台所のところにいった。
「茶碗くらい洗いなさいよ?」
今やろうとしてるだろ。
「わかってるよ、まったく。親かよ」
「え、親でしょ」
「何言ってんだよ。ライアはこの二人の親ではあるけど俺の親じゃないからな」
「一緒に住んでるんだから私にとっては可愛い息子よ?」
「うげ~、気持ち悪」
「なんか最近ニシカタの喋り方が変わってるような気がする」
ああ俺、最初会った時は敬語だったっけ。
「この家での生活に慣れてきた証拠だと思います」
「あんたは相変わらず敬語のままだけどね」
「とにかく俺は勇者になるからな!理由は楽しそうだから、それだけ。じゃあ後は頼んだよ」
俺は洗ってる途中の茶碗を置くと自分の部屋のところに戻った。
「あいつ、本気で言ってるのかな」
「きっと本気でしょうね。だってあの表情、早く勇者になりたくて仕方がないって顔してるから」
「どんな表情だよ、それ」