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第19話 魔王討伐。

「ついに魔王と戦うときがきたか」

「やっぱり緊張する」


俺たちは階段を上り最上階に向かった。


そこには黒い服を着た男が偉い人が座るような椅子にドンと構えたように座っていた。

こいつが魔王か。

最初の中ボスと同様、頭に角が生えている。

でも小さい。


「俺を倒しに来た勇者か。ここに来たということは報告を受けたが、まさかここまで来れるとは」

「お前が魔王か」

「魔王、そうだな」


想像していたより結構若い。

見た感じ、十七歳くらいか。


「俺は人間を皆殺しにするために魔王になった」

「なぜそんなことをする!」

「クズだからだ。人間は醜い。信頼していた人を簡単に裏切るし、自分の命のためなら他者の命などどうでもいいというような考えを持ってる」


魔王は下を向き、恨みの籠った声でそう口にする。


「人間は表面上は優しく見えて、裏は黒く残虐な考えを秘めている。それが人間だ」


確かに、それはあってるかもしれない。


「ニシカタ、魔王の話に耳を貸したらダメ!」


「ふん、俺は正論を言ってるだけだぞ?」

「確かに魔王殿の話には一理あるでござる。でも、だからって人を殺していいわけじゃないでござる」

「そうか、もう言い残すことはないな」


魔王は立ち上がり、見下すように俺たちを睨む。


魔王は空間から波紋が出たところに手を入れたかと思うと、ナイフのようなものを取り出した。


一見ただのナイフに見えるが、もしかしたら魔法とかで危ない物になっているかもしれない。


「なんだよ、それ」

「教えるわけねえだろ!」


魔王はそう言いながら、ナイフを俺に向かって投げた。

ぎりぎりのところで避けようとしたが、左腕がかすってしまった。

魔王はそれを見てニヤリと笑う。

そんなことなど知らず、俺はかすっただけでよかったと、安堵のため息をついた。


「次はこれでいくか」


次は普通のサイズの剣を取り出した。

そして歩いて、俺たちまでの距離を少し縮める。


「さあ、俺を楽しませてくれよ!」


魔王はそう叫ぶと、俺たちのところに向かって剣を振った。

すると、ライカに向かって、黒い斬撃が放たれる。


俺はライカの前に立ち、魔王に背中を向けた。

次の瞬間、俺の背中に激痛が走る。

後ろを見ると、大量の血が背中から出ていた。

一気に地面が赤く染まる。


チートでも傷はつくのか。


「闇は、全属性の中で一番強い」


確かに闇って強そうだよな。

他の属性に比べれば闇の強さは圧倒的、か。


「そんなに出血して、まともに動けるか?」


魔王は俺を煽るような言い方をする。


「っ!どうやら無理のようだな」


本当はまだ動けるが、ここは二人に戦わせよう。


「よくもやってくれたわね」


ライカは尖った氷を何本も出し、魔王に向かって放つ。

魔王にあたる寸前のところで、魔王の前に黒い渦が出てきた。

そして氷を飲み込むと、消えた。


次に美月が魔王のところまで走りながら、刀を鞘から抜くと同時に魔王の腹に向かって振った。

魔王は少し後ろに行って簡単に避ける。


そして煽るように、くらってねえよとアクビをした。


「お前等、勇者なんだろ?いくらなんでも弱すぎだろ。そんなんで俺に立ち向かおうって、俺もナメられたもんだな」


魔王は一瞬で空間に手を入れて、ものを取り出す。

それは、筆のようなものだった。


一見ただの筆に見えるが、きっと危険なものなんだろう。


筆を見た二人は危険な物でも見てるような目をしている。


魔王は逃がさぬよう美月の服を掴み、胸元になにかの紋章をかいた。


「あいつと戦え」


魔王がそう呟くと、美月はライカの方を向き、走り出した。

近くまで来ると、ライカに向かって刀を振り出す。

ライカは攻撃しないようにずっと避けていた。


「な、なんで攻撃してるんだ」

「体が勝手に動くんでござる」

「あの筆は紋章をかく道具。あいつは奴隷紋をかいたのよ。だから美月はあいつの命令には逆らえない」


ライカは美月の攻撃を避けながら、俺に説明をする。

よそ見してると切られるぞ。


「そのまま仲間同士で戦え。そして全員仲良く死んでしまえ」


少し手を貸すか。

魔王も二人の戦いに集中してるから俺のことは目に入ってないだろう。

俺はさりげなく剣を振り、小さな斬撃を飛ばす。


そして魔王の手に当たると、魔王は一瞬驚き、手から筆を離してしまった。

飛んできた筆を、俺がうまくキャッチする。

ん?


―――――

『紋章の刻筆』

―――――


この筆の名前か。


どうやって解くんだ?

筆の向きを変え、全体を見たが、どうすれば解けるのかわからん。

解く以外でどうにかするか。


いいこと思いついた。

多分これを持ってる人が命令できるから、これで美月に命令すればいいんだ。


「魔王と戦え」


俺は美月に向かって命令した。

すると、美月はライカの攻撃を止め、魔王のところに振り返る。


そして走り、刀を何度も振る。

が、全部避けられた。

さらに、剣に闇を纏い、一方的に美月を攻撃しはじめる。


美月に集中している隙に、ライカが雷を落とす。

それを魔王は美月に攻撃している状態で上に闇の渦を出し、飲み込んだ。


やっぱり、まだこいつらには魔王の強さには敵わないか。

俺は立ちあがり、剣を振ろうとした。


「ニシカタ!」


いきなり俺の名前を呼ばれる。

するとライカは俺の方に振り向き、


「ありがとね」

「え」


意味がわからなかった。

なんでお礼を言われるんだ?

わけがわからず混乱していると、


「本当はすぐに倒せれるのに、私たちに戦わせてくれて」


な、バレてたのか?


「え、もしかしてバレてた?」

「当たり前でしょ?あんなのバレバレよ」


隠し通してたつもりだったのに、なんか恥ずかしい。


「エリカも美月もわかってたのか?」

「さあ、わからないわ。でも、私はわかってたわよ」



「ニシカタ、もうちょっとだけ戦わせてくれる?」

「……危なかったら、すぐに倒すからな」

「かっこつけてるところ悪いけどよ、こいつ俺に殺されそうだぜ」


声のした方へ顔を向けると、美月が尻餅をついて魔王に剣で刺されそうになっていた。


俺が剣を持って走ろうとすると、ライカに手を横に広げて止められる。


「私だってやればできるのよ」


ライカは俺にそう囁くと、手を前に向ける。

何も出なかったように見えるが、胸を貫かれる寸前のところで魔王が吹っ飛んだ。

なるほど、風魔法か。

見えなかったから、魔王も闇で防御しなかったということか。

魔王は壁に当たり、地面にたたきつけられていた。


「なん…だと…」


魔王はバカな、とでも言いたそうにライカを見る。


ライカは上から雷と尖った氷を魔王に向かって落とした。


「ああああああぁぁぁぁぁぁ!」


雷は魔王に当たり、氷も刺さった。

美月も刀を振り、斬撃を飛ばす。

それが腹に当たると、血が噴出した。

それとほぼ同時に口からも血が流れる。


「くっ!あり得ない。人間クズに負けるなど、あってはならない!」


魔王はそう叫び、ライカを睨みつける。

そして立ち上がり、ライカに攻撃しようとするが、華麗に避けられた。


「今のあんたの強さじゃ、魔王でもなんでもないわね」



魔王は下を向きながら、ゆっくり立ち上がる。

傷だらけなのに、まだ立つというのか。

魔王は声のトーンを落として言った。


「なめやがって。少し本気を見せるか」


その瞬間に、フッと顔を上げる。

目は赤く光っていた。


闇のオーラも放っている。

これはちょっとやばいかもしれない。


すると、魔王が手に持っていた黒い剣を振り、闇の斬撃を飛ばす。

その先にはライカがいた。


「っ!ライカ、避けろ!」


咄嗟に叫んだが、ライカは突然のことにフリーズしてるのか、微動だにしない。

俺は剣を振り、巨大な斬撃を飛ばす。

それが闇の斬撃に当たり、ライカに直撃することはなかった。


だが、ライカは後ろに吹っ飛んだ。

見ると、いたるところに傷を負っている。

当たってないのに、こんなに?

もし、直に受けてたら、どうなってたんだろう。

魔王の威力に恐怖を抱きながら、魔王を睨みつける。


「お前えええ!」

「そうだ、それだよ。人間はそうやって苦しんでおけばいいんだよ」


魔王は快感を感じているような笑みを見せる。


「じゃあ、次は」


すると、今度は美月に向かって闇の斬撃を飛ばした。

俺は素早く美月の前に立ち、斬撃が目の前にきた寸前のところで剣を振る。

だが、切れなかった。

威力が強すぎる。

力を抜けばおされて壁に飛ばされそうだ。


どういうことだよ、俺チートじゃなかったのかよ。

いや、こいつが俺と同じように強いってことか。


すると、斬撃が爆発し、俺は吹っ飛んだ。

そして思い切り床に叩きつけられる。


「いってえ、俺、ちょっとなめてたな」


俺は立ちあがり、魔王を睨みつける。

少し恐怖を覚え始めてる自分がいる。

恐怖を感じるのが怖い。

だって、恐怖で正気じゃなくなるかもしれないから。


はやく倒そう。


「美月、ここは俺に任せてくれ」

「わ、わかったでござる。拙者はライカ殿を安全な場所に移動させておくでござるよ」

「ああ、頼んだよ」


美月はライカのところまで走ると、ライカを背負い階段に向かって走った。

だが、魔王がそれを阻止する。


「逃がすか!」


魔王は手を美月たちに向けて、闇を放つ。


俺は二人を守ろうと走ったが、間に合わずに闇は美月たちに当たり、壁まで吹っ飛んだ。

勢いがよすぎて壁にひびが入るほどだった。


二人は床に叩きつけられ、微動だにしない。


「おい、どうした。死んでないよな…?返事してくれよ」


だが、返事はない。


「現実見ろよ。どうみても死んでるだろ。たかが人間が二匹死んだくらいで何一々悲しんでんだよ」


俺は魔王を思い切り睨みつける。

ふざけるな。

人が死んで悲しむのは当然だろ。

なんで、お前は平然としている。

人間を虫けらとしか思ってないのか?


そういえばこいつ魔王だったな。

クズなのも仕方ない。


はやく殺した方がいいだろう。


「よくも、あの二人を!許さん」


俺は剣を握りしめ、魔王のところに走った。

そして剣を振りかざす。

が、魔王も剣でガードして、鍔迫り合いになった。


「たかが人間が俺に勝てると思うな!」

「俺は神から力を貰ったんだ。そんな俺があっさり死んだら神に申し訳ない」

「はあ?お前何言ってんだ」

「俺が負けるわけには行かないんだよ!」


剣に全属性を纏い、力を込める。


魔王が唖然とした表情をしている。


「終わりだああああ!」


剣を振り、魔王の剣を飛ばす。



次の瞬間、魔王の首は飛び、地面に落ちた。



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