第17話 魔人の中ボス。
「来たわね、人間」
人間って動物みたいに言うなよ。
頭に角が生えてる。
魔人かなんかか?
「あんたたちは魔王にすら会えずに殺されるわ、この私にね!」
すると、こっちに向かって走りだした。
近くまで来ると、攻撃をしかけた。
俺に攻撃すると思ったら、急に眼の向きを変えて手から雷を出してライカに放った。
俺は素早くライカの前に立ち、剣を振り上げた。
すると、雷は切れ、二つに分かれた雷は壁に当たるとバチンと音をたてて消えた。
「美月!」
「はいでござる!」
美月は背後に回ると、刀を振りかざした。
「そんなので私が倒せるとでも思ってるの?私もなめられたものね」
魔人は振り返ると手を美月に向けて闇を出した。
そしてそれは一瞬で美月を取り囲む。
「は、はなすでござる!」
「「美月!」」
「フフフ、あの闇からは絶対にはなれられないわ。徐々に闇に呑まれて苦しみながら死んでいく」
女はニヤッとしながら、そんなことを言った。
悪趣味にもほどがあるだろ。
「よくも美月を!」
ライカは氷で凍らそうとしたが、あっけなく避けられてしまった。
要するにあの闇を切ればいいんだろ?
普通ならできないが、俺はチートだからすることができる。
俺は剣を振り下げた。
すると、その瞬間に斬撃が飛び、美月のところに向かった。
「ちょ、ニシカタ!何やってんのよ!?」
「大丈夫だ。人は切れないようにしてある」
「フン、そんなもので切れるわけないわよ。なめてんの?」
美月は斬撃が当たるのを覚悟して目をギュッと瞑る。
だが、切れたのは闇だけで、美月は切れなかった。
美月は恐る恐る目を開け、自分が切れなかったことに驚いていた。
「どういうことでござる?」
「これもチートのおかげだ」
女は俺を見て唖然としている。
そういえばさっきはなれることは絶対にない的なこと言ってたな。
俺はあいつにとって今までの常識を覆すようなことをしたのだからな。
唖然としても仕方ないだろう。
「ど、どうして?ありえない。これはきっと夢よ。そうよ、夢だわ」
その隙をついてライカは女の上から雷を落とす。
女は痺れて動けなくなった。
避けれるだけで当たれば効果が効くのか。
「残念ながら現実だ」
そろそろ俺が攻撃するか。
俺は女の後ろに一瞬で移動し、肩の上に剣を突き付けた。
後ろ姿だから表情は見えないが、怯えた表情をしているだろう。
「最後になんか言うことあるか」
「わ、私に負けてもあいつには負けない」
「あいつ?」
「魔王のことよ。あいつはこの大陸にいた人間を一気に皆殺ししたからね」
なんて残酷な……さすが、魔王だな。
「それが、最後の言葉か」
「私を殺せたらね!」
女はこっちに振り向き、手を腹に当てた。
そして雷を放つ。
超近距離だからか、かなりの衝撃が腹に当てられた。
結構痛いが、我慢はできる。
俺は少しの間、痺れていた。
チートでも攻撃が無効ってわけじゃないのか。
ただ、少しの耐性があるようだな。
「強くても所詮は人間。私に敵うはずがない」
女はそう言いながら、その場から離れた。
それが本当の最後の言葉か。
痺れが治まると、俺は女に向かって剣を軽く振った。
そこから大きな斬撃が出て、女のところに向かった。
当たると、女は消し炭になった。
本当はやりたくなかったが、悪い奴だ。仕方ない。
シュ~と、女がいたところから煙がたつ。
ごめんな!
俺は手を合わせ、心の中で謝る。
「じゃ、終わったことだし、次の階に行くか」
振り向くと、二人ともぽかんと情けない表情をして、俺を見ていた。
そんなに驚くって、俺が強いのがそんなにおかしいか?
前にチートで強いって何回か言っただろ。
信じてなかった的な?
それだとちょっと俺悲しいよ?
俺は二人の前に立って同時に頭を軽く叩く。
すると、ハッと正気を取り戻した。
「い、今のはなんでござる!?」
「どう見ても人間技じゃないでしょ!?」
正気を取り戻した途端、二人は一気に質問しだした。
「そんな一気に質問されてもわかんねえよ」
「俺は前にも言った通り、チートなんだよ。だから強くて最強。本気を出さなくても一撃で倒せるし、普通じゃできないこともできる」
「な、なるほど」
こいつ何言ってんの?って顔に書いてあるぞ。
「ま、強いってことだ」
「でも、さすがに魔王は一撃で倒せないでしょ」
「さあ、わからんな。まだ、戦ってないし」
きっと魔王も一撃だろう。
でも、俺は白を切った。
それも、一撃で倒せると言えば、二人は戦おうとしないだろう。
美月は修行のために俺についてきたし、ライカも精神的にまだ弱いし。
だから二人が強くなるためにも、俺は手を抜く。
「そんな話は後にして、次の階に行くぞ」
「そうね」
「そうでござるな」