第15話 アルクスカ大陸に到着。
そんな生活が十五日くらいも続いた。
俺は今部屋のベッドに横たわっている。
同じことの日々で精神的にきつい。
暇というのがこれほどきついとは思わなかった。
多分、二十日くらいは経っただろうから、もう少しでつくのか?
俺は外に出て、横の柵に手をのせて船が向かってる方角を見た。
なんか見える。あれがアルクスカ大陸か。
その大陸は黒く邪悪なオーラを放っていた。
その大陸の空は赤黒く染まっていた。
近づくにつれ、徐々に空の色が赤黒く変わるのを見ると、妙に緊張感が走る。
俺は運転席のところに行って、船員に訊いた。
「もう少しで着くのか?」
「ああ。でも後、三時間くらいかかるかもな」
「え、あの近さで!?」
「近くに見えるのは、幅が広いからだ。よく見ろ。あそこの森の木とかまだ小さく見えるだろ」
「あ、確かに」
森とか岩山ばかりあるな。
人工物とかないのかよ。
あるとしても魔王城くらいだろうな。
多分、魔物は森とかで自然に暮らしてるんだろう。
「後、三時間で着くのか。ワクワクと緊張が混ざってよくわからん気持ちになるな」
「緊張はわかるけど、ワクワクするっていうのが理解できん」
俺は部屋に戻り、みんなにもうすぐ着くと伝えた。
「ええ!?もう着くって!?」
「ついにこのときが来たでござるか」
「ちょっと、まだ心の準備ができてないわよ?」
「そんなの俺が知るか。覚悟しろ」
「私たち、本当にアルクスカ大陸に来たんですね」
「確かに、そう考えると、私たちがいかに恐ろしいことをしてるのかがよくわかるわね」
「もし殺されそうになったらどうしようかしら」
「大丈夫だ。そのときは俺がお前等を守ってやる」
「本当にできるんでしょうね?あまり信用できないんだけど」
「なんか地味に傷つく」
そもそもライカとエリカは、俺を守るためについてきたんじゃなかったっけ?
なんで、俺が守るみたいになってんだよ。
やっぱり一人の方がよかったかも。
まあいいか。複数だといいこともあるだろう。
一時間が経過した。
窓の外を見ると、空はもう赤黒く染まっていた。
二時間後が経つと、船が止まった。
着いたか。
俺たちは部屋を出て外の様子を見た。
「まだ魔王城にも着いてないのに、こんなに闇のオーラを放ってる」
船員の方を見ると、ガタガタと体の全身を震わせていた。
そんなに恐ろしい存在なのか、魔王ってのは。
ま、俺のチートに比べればどうってことないだろう。
「エリカ、その人をちゃんと守っておけよ」
「はい、任せてください」
「じゃあ、俺たちは魔王城に向かうか」
俺はみんなの緊張をほぐそうと少し口角をあげて言った。
「そうね」
「そうでござるな」
俺とライカと美月は陸に降り、歩き出した。
歩いてから数分が経過した。
俺たちは今森の中を歩いている。
ライカは腰をさげて俺の服をつまみながら、周りをキョロキョロしていた。
さっきのやるぞ、みたいな雰囲気はいったいどこに行ったんだ。
美月は平然と歩いてるから、まだいいけど。
美月はライカを見て、不満を抱いていた。
少し、距離が近すぎでござる。
「ライカ殿、そんなに引っ張ると輝殿の服が伸びるでござるよ」
「だ、だって~。この森なんか不気味だし」
悪い気分じゃないけど、服が伸びるのは困るな。
「そうだ。俺から少し離れて歩け」
「……わかったわよ。あんたに頼らなくたって私は強いんだから」
するとその瞬間、岩の陰から大きな牙を持った兎が現れた。
「ぎゃああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
俺はその瞬間に剣を振り上げ、斬撃を出して兎を粉砕した。
「ライカ、もう大丈夫だ」
ライカの方を見ると、体がガタガタと震えて目は揺れていた。
「もういやああああああああ!」
耐えきれなくなったのか、そう叫びながら走り出してしまった。
「ライカ!」
「ライカ殿!」
俺たちはライカを追って走った。
ライカは魔王城に向かわず、横に走った。
だから、俺たちは今魔王城から遠ざかってる。
急いでライカを落ち着かせないと。
空から雷が何度も落ちてきたり、氷の塊が落ちてきたりしている。
そのたびに魔物の悲鳴が聞こえるのは気のせいだろうか。
きっとライカがパニックで魔法を使ってるんだろう。
どうやって追いつけばいいんだ。