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第13話 只今、航海中Ⅳ

無事、小舟で魚を全部とったわけだが、これ本当に食えるのか?

カラフルで見るからに毒々しいが。てかこれ触って大丈夫か。

皮膚が猛毒とかだったら俺どうしよう。死ぬのかな。


魚をとってから一時間は絶対経っただろう。

俺は今食べようか食べまいか悩んでいた。


どうしたものか。

毒持ってそうだからいっそのこと捨てるか。

いや、でももし毒持ってなかったら、めちゃくちゃ損してる。

みんなを起こして食べれるか聞くか。

でも、気持ちよく寝てるのに起こされたら嫌だよな。

すると、耳の近くで、


「何してるんでござる?」


という声が聞こえた。


「うわああああぁぁぁ!」


いきなり声をかけられたから、思わず叫んでしまった。


「な、なんだ美月か。驚かせんなよ」

「驚かせるために話しかけたんじゃないでござる」


美月はほっぺを膨らませて怒った。

怒った顔も可愛いな。


「そういえば、なんで起きてるんだ?トイレか?」

「そんなデリカシーのないこと言うと嫌われるでござるよ」


「じゃあ、なんで起きてるんだ?」

「………トイレでござる」

「結局トイレなんだから別に怒らんでもいいだろ」

「輝殿は女心がわかってないでござるな」


いや、男だから当たり前だろ。

わからなくて当然だ。



「それで何をしてるんでござるか?」

「俺、昼に寝てたから全然寝れないんだ。それに今日の夜なにも食べてないから、ず~っと空腹が治まらないんだ。だから、釣り………魚を取ったんだけど、これ食べていいものなのかをずっと考えてるんだ。美月、これ食べれるのか?見た目はカラフルで毒々しいんだけど」


すると、美月は魚をじ~っと眺めた後に、


「大丈夫でござる。食べれるでござるよ」

「マジか。すげえな。どこでわかったんだ?」

「ほら、ここでござる」


美月は魚の丸い背ビレを指差して、説明をしだした。


「この背ビレが丸ければ食べれるとわかるでござる。刃物のように尖っていれば猛毒を持ってるでござる。だから、これとこれとこれは食べたらダメでござる」


美月は背ビレが尖った魚をとると海に落とした。


「あれは猛毒だったのか。触っても大丈夫だったのか?」

「体内に入らなければ大丈夫でござる」


俺は安堵のため息をつく。


「じゃ、食べるか」

「え、今食べるんでござるか!?」

「当たり前だろ。だってお腹がすいて仕方がないんだから」


「ちなみにどこにも毒はないんだな?」

「輝殿は拙者を信頼してないんでござるか?」

「そういう意味で言ったんじゃないんだけど……まあいいや」


今日は生って気分じゃないから、焼いて食べるか。

俺は魚を持つと、上に投げてその魚に向かって火を放った。

強すぎず、弱すぎず、ちょうどいい熱さの火を俺は放った。


そして落ちてきた魚を無事キャッチする。


「あち!あち!なんだこれ、熱すぎる!」


熱すぎて手が痛い。

思わず、魚を交互に持つほどだ。


皿とかないのか?

倉庫に入ろうとすると、視界になにかの扉が写った。

なんだこの扉。

開けるとそこは、キッチンだった。


「なんだよ、キッチンあるじゃねえか」


明日このキッチンを使うか。

俺はそこから皿を何枚かとって魚をのせた。



どうやって食べればいいのか、わからない。

そのままかぶりつけばいいのだろうか。

俺は少し、魚に恐怖を抱きつつ、腹の部分をかぶりついた。



「うまっ!空腹の状態で食うとこんなに美味いんだな」


ぐうぅ~~


「ん?」


美月を見ると、お腹をおさえて顔は真っ赤になっていた。

お腹がなったのか。

こいつ、さっき大食いしたんじゃないのか。

どんな腹してんだよ。


「食いたいのか?」

「いいんでござるか!?」


パアッと満面の笑顔を浮かべ、俺に訊く。


「いや、食べさせるとは言ってないんだが」


それを言った途端、一気に顔が暗くなった。


「………ああもう、わかったよ。ほら」


俺が魚を美月に向けると、さっきと同じような笑顔を取り戻した。

それにつられて俺も笑う。


「あふあふ、熱いでござる」

「急いで食べるからだ」


二人で食べていると、美月がこっちをジッと見ていた。

いや、俺じゃない。後ろを見てる。


振り向くと、そこにはライカとエリカが怒った顔をして俺を見ていた。

否、美月を睨んでいた。

なんとなく理由はわかる。

俺と美月がそういう関係と勘違いしたんだろう。


「二人で夜中に何やってんのよ!」

「何って魚でござる」


状況を理解してないのか、真顔で答える。


「そういうことを言ってるんじゃないわよ!」

「まあまあ、落ち着け。俺が説明す——」

「ニシカタくんは黙ってください」

「あ、はい……」


俺の言葉を遮ったから、一瞬怖くなってしまった。

やっぱり女って怖いときは怖い。


「コウヤさんは昨日ニシカタくんと寝ましたよね?今日は私の番です。独り占めしないでください!」


美月はなんで怒ってるんでござるとでも言いたげな顔をしていた。


美月は正座して二人を真顔で見上げ、二人は美月を見下ろして怒っている状態だった。

そもそも、なんで俺じゃなくて美月を怒ってるんだ?

普通そんな勘違いするんだったら、俺が怒られるだろ。


「落ち着いてほしいでござる。ライカ殿もエリカ殿も少し勘違いしてるでざる」

「勘違いってどういうことよ」

「私が起きたときに外で輝殿が魚を見つめて何か考えてたから何してるんでござるんだろうと思って近くに行ったんでござる。そして一緒に食べることになったんでござる」


それを聞いた二人の顔は、みるみるうちに穏やかな表情に戻った。


「なんだ、そういうことだったんですね」

「私はてっきり、コウヤがニシカタをここに連れたと思ったわ」

「一体拙者をどういう目で見てたんでござるか」



「なんかその魚見たらお腹が空いてきたわ」

「私もです」

「は?」


こいつら、本当にどんな腹してんだよ。


「わかったよ。お前等も食べていいよ」

「本当ですか?ありがとうございます」


ああ可愛くて眩しい。


「じゃあ、いただくわね」

「お前もお礼くらいしろ」


さりげなく魚をとるライカの頭を手の平で叩く。


「痛っ!」





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