第七十八話 想い出
戦闘再開。
川崎の影刃に対して、武井のスキル重力破壊が発動する。
短めですが、ご覧くださいませ。
(そうか!あれは、クレタの時の…)
川崎は考える。
武井のスキル。先程、岬の言った重力破壊。おそらく、武井の手の平から何らかの形で超重力を発生させ、対象物に重力での圧迫、もしくは小型のブラックホールに近い現象を発生させるのではないかと。
川崎のスキルの一つ、影刃は負の力の具現化。影と言ってもそれは悪魔の力として暗黒世界から召喚した影の形をした闇の力を刃に変えて攻撃をしている。故に物質として存在している。
最も、あれがブラックホール状の物ならば光ごと消し去る事ができる筈なのでこの世に存在する物ならば全て無に返してしまうのだろうが。
何れにしても、武井の手の中に握りしめられたモノは無効化させられてしまうことは間違いない。
「どうやら、お前の影刃ってのは単発での発動しか出来ないようだな。同時に二発、三発と発動されればこちらも手の打ちようがなかっただろうな」
「くっ!影刃っ!」
川崎が手を振りかざす。
またもや、影の刃が出現する。次は武井の首元すぐに。
(そこは死角だ。立石の視覚には映らないっ!)
が、武井の左手はなんなく刃を握り潰した。
(そんな!?僕の攻撃が読まれているのか?)
「さて、今度はこっちの番だ!」
「ぐふっ!」
一気に近距離の間合いを詰め、右手の拳で川崎の腹部にボディブローを入れた。
ふらつきながらも、後退し息を整える。部屋の位置から遠ざかり、応接間のソファに手をつき武井を睨んだ。
「くそっ!…影刃っ!」
次は足元からの刃が武井を襲う。だが、またしても予知しているかのごとく潰された。
「そんなもんかよ、お前の力は?」
(何故だ?何故、刃の場所が読まれている?…まさか!?)
川崎の脳裏に中学の時の記憶が蘇った。
「えいっ!」
喉元を狙った鋭い突きが繰り出されるが、まるでそれを見越したように武井の竹刀が唸る。
「甘いっ!」
バシッ!
下段から打ち上げられた竹刀に、川崎の竹刀は弾き飛ばされる。両腕に痺れが来る。
武井は竹刀を肩に担ぎながら、へたりこんだ川崎を見下ろした。
「トシは目線で読まれやすいんだよ。打ち込んでくるとこがさ。実際の剣道の試合なら面を被っているから分かりずらいけど。今みたいに面を外してると視線で分かるんだよ。俺も小さい頃は爺ちゃんからよく言われたよ。剣道は相手のヘソを見るんだって。視線を動かさず、相手の全体像を見るんだよ」
(そうだった…ヘソだ)
スッと立ちあがり、視線を武井のヘソに合わせる。
「影刃っ!」
(またか…いや、さっきとは雰囲気が違う!?)
腹部に手を差し出した武井は咄嗟の判断で反復横飛びのように真横に体を入れ替えた。
刃は先程いた彼の頭上から落ちて床を破壊した。もし、そのまま腹部を守っていたなら頭は潰されていただろう。
「はぁ、はぁ…やっと思い出したか」
「はぁ、はぁ…おかげさまでな」
二人は睨み合ったまま硬直状態となる。
「まずいな、岬さん自分も…!?」
香川が振り向き岬に声をかけた時、彼は仰向けになった春川の遺体に寄り添っていた。
「すまんな。君を置いていかなければならない」
岬はそう彼女に語りかけるように呟くと、首からペンダントを外して彼女の胸元に置いた。
「それは、岬さんが神楽先輩からもらった…」
それは美しく輝く青い石が埋め込まれたペンダント。
「岬ぃ!誕生日っ、おめでとぉ!」
「おいっ!後ろから抱きつくな」
背後から急に抱き締められた学生服姿の岬は狼狽した。仮にも下校中とはいえ校内である。
「いけずぅ。でも、そんな岬にあたしからのプレゼントっ!」
そのまま後ろから首元にペンダントをかける。青い石をあしらったペンダント。チェーンは特に高価なものでもないようだ。
「これは?」
「これはあたしがお母さんにもらったペンダント。海外からのお土産でもらったんだ。この青い石はどんなに離れても想い人との間を繋ぐ奇跡の石だって。ほら、あたしは対になってる赤い石。ペアルックだねぃ」
惜しげもなく自分の制服の胸元を広げ、同じように輝く赤いペンダントを見せて頬笑む神楽。岬は恥ずかしそうにペンダントを胸元のシャツの中に突っ込んだ。
「今だけだぞ!絶対、後で外すからな!」
「うん。それでもいいよ。でも、大切な物だからポケットにでもしまっててくれたら嬉しいな」
ランタンの炎に照らされ、春川の胸の上で青い石がキラリと光を放っていた。
考古学者の母が持ちかえってきたいわくつきのペンダント。
岬が肌身放さず持ち続けていた強い想いが込められた青い石は何を意味するのか。
今回もご覧頂きありがとうございました。




