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学園英雄記譚 - Lenas (レナス)-  作者: 亜未来 菱人
ライフサーガ編
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第七十二話 追う者逃げる者

遂に真犯人が。


いえ、これはローファンタジーです。


お間違えない方は続きをどうぞ。

1日目。日本時間22時32分頃。


岬達が春川の部屋に到着すると部屋は開け放たれていた。


「春川っ!」


部屋に飛び込んだ岬の目には背中に一本のナイフを突き立てられ、血だらけになって倒れ込む春川。さらに側に座り込み、号泣する川崎の姿があった。窓際には見知らぬ黒装束の首がない屍体。首は岬の足元に転がっている。


岬は直ぐ様、春川の元へ行き脈をとり、胸に耳を当てる。既に鼓動は止まっている。


「春川っ!しっかりしろっ!」


「川崎っ!一体、何があったんだ!?」


香川は泣き止まぬ川崎の肩を両手で掴み揺さぶった。


「わ、わかりません。ぼ、僕がここに来た時には既に…春川さんが血まみれで倒れて…う、うわぁぁん!」


更に大声で泣きわめく。


「どうした…う、うわっ」


「これは…」


下着姿で駆け付けた立石に、武井、内藤、沢村が続く。


「ひっ!」


内藤は沢村の視線を遮った。


岬は力なく項垂れる。


(岬さん…)


室内には、黒装束の遺体がある。側に転がっている首を見て武井が気付いた。


「こいつ、テレビで見たぞ」


「あ、そうだ。銀行強盗取り押さえた奴だ。なんでこいつが」


香川は冷静に内藤達にも心当たりがないか聞いてみた。内藤は首を振る。沢村は顔を見はしなかったが心当たりはないようだ。


「始めに春川を見たのは川崎だろ?とりあえず話してみろよ」


立石に急かされ、川崎はやむを得ないといった表情で話始めた。


「僕が春川さんに用事が会って部屋に来たんです。彼女に僕が新しい武器の新調をお願いしようと。武器については彼女の方が詳しいと思って。すると、部屋のドアが開けっ放しで。中には血まみれの彼女が倒れていて。多分、この男と格闘の末に相討ちになったんだと」


岬は立ちあがり、黒装束の男の体を調べ始めた。何か鋭利な刃物の用な物で首を落とされている。


(春川の武器はハンマー。叩き潰す事は出来ても、首を落とす事は難しいな。となると…)


男の手には小型のナイフがしっかりと握られている。


(血はついていない。凶器となると、後は春川の背中に刺さったナイフだが。首を落とされた男がナイフを背中に刺す事ができるのか?)


春川の側には床に何かを残そうとした後がある。しかし、無理だったのだろう。途中で息絶えたのか、犯人に遮られたのか、文字や図形にすらなっていない。


改めて外傷の背中を見るとズタズタに切り裂かれた傷跡の中心にナイフが刺さっている。


(致命傷はこれだが。周りの傷は後で付けられたもののようだ)


その時、彼女が両手で抱えている何かが光っていた。


(あぁ、そういう事か)


岬はゆっくりと立ちあがり、川崎に向かって言った。


「春川の遺体を埋葬したい。この近くに墓地があるな調べてくれないか?」


「墓地なら…」


沢村の口を内藤が塞いだ。内藤も理解しているようだ。


「え?マッピングですか…あ、パソコン…部屋に忘れて来てしまいました。取って来ますね」


「動くな。そのまま両手を頭を抱えるように後ろに回せ。さもなくば射る」


駆け出そうとした川崎の背後から香川が弓を構えている。


「か、香川さん!冗談は止してくださいよ」


「早くしろっ!」


川崎は頭の後ろで手を組み、チラリと目線を岬に向けた。岬の手は春川の胸元にあり、彼女が抱き締めていたノートPCを掴み出した。


「何故、彼女がこれを?」


「あ、そうだ。春川さんに貸してたんでした。そうそう!」


ギリッ…


ノートPCに手を出そうとした瞬間、香川の弓が弦を引き締める。


「川崎…お前、そのPC俺にも貸した事なかったよな。確かプライベートな物だからパスワードは誰にも教えないって。お前、まさか…」


「ちっ。邪魔ばかりしやがって。どいつもこいつもですよ。そう、春川は僕が殺しました。何故かって?こいつの絶対聖域サンクチュアリコートが邪魔だったからですよ。こいつさえいなければ後はどうとでもなりますからね」


今まで怯えるような目付きだった川崎の目が爛々と輝きを増している。その狂喜と自身に充ち溢れた口調に誰しもが疑った。


「あぁ、悪魔かモンスターに取り憑かれているんじゃないかって思ってますか?残念ながら、これが僕の本性ですよ、ははっ」


「川崎、冗談は止めてくれ。いつものお前じゃない」


武井はすがるような目で川崎を見ていた。中学時代から一緒だった彼は信じたかった。しかし、川崎の口から出た言葉は武井の想いとは全く真逆だった。


「お前はいいよな、武井。勉強も出来るし、口うるさい母親がいないんだからな。僕の家はお前ん家と違って上流階級なんだ。父は議員で兄は医者。僕は必ず医者か公務員にならなきゃいけないって小さい頃から言われ続けたんだ。僕はゲームデザイナーになるのが夢なのにさ。だから、考えた。この、『ライフサーガ』の中で生きてやろうって。それを邪魔するやつは誰であろうと許さない。武井、お前でもな」


「そんな事の為に…春川を…」


武井は床を睨みつけている。涙をこぼしながら拳を力いっぱい握り締め震えていた。


「そんな事?いやいや、相手の強い武器を叩くのは戦略だよ、戦略。ゲームでは当たり前じゃないか」


武井の視線。床には、先程岬がノートPCを掴み出した際に一緒に出てきた春川の生徒手帳が落ちていた。裏面には、春川が妹と母と笑顔で写っているプリクラが貼ってあった。


「春川さ、あいつテニスで一番になるんだって言ってたんだぜ。普通に考えりゃ出来ねぇよな。でも、あいつ本気でプロになって、ウィンブルドンで優勝して、家族を楽させてやりたいって言い切りやがった。それに比べてお前、何だよ?逃げんじゃねぇよ!」


武井は拳を振りかざした。


夢を追うもの。


夢を追う事に挫折し逃げるもの。


夢を叶える為に努力する。例え叶わなくても、その努力は別の形でよい方向に向かってゆく。


と、自分では思ってます。


自意識過剰?(笑


今回もご覧頂きありがとうございました。



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