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学園英雄記譚 - Lenas (レナス)-  作者: 亜未来 菱人
ライフサーガ編
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第七十一話 血の聖域(ブラッディサンクチュアリ)

今回のヤマ場でもあります。




どうぞご覧ください。

1日目。日本時間22時35分同時刻。


内藤と別れた春川は、応接間から一階の自室へ戻ろうとしていた。


「春川さん、待って下さい」


振り返ると川崎の姿があった。先程、立石達と自室に行ったのを見かけていたので不思議に思っていた。


「あら、川崎くん?どうしたの?」


「大事なお話がありまして。ここでは何ですから、春川さんのお部屋でいいですか?」


春川は戸惑った。女子の部屋に男子を連れ込む事に躊躇したのだ。年頃の娘として当然だろう。


「参ったなぁ。変な目で見てます?立石さんじゃないんだから、僕はそんな事しませんよ。あくまで、今後の行動についてお話したいんです」


熱心に頼み込む川崎に根負けしたのか、春川は頷いた。もし、彼に襲われたとしても、このレナスシステムでは戦士タイプの自分の方が腕力などステータスは上だったからだ。


「お風呂入りたいから、少しだけよ」


「ありがとうございます」


渡り廊下を歩く。隣の川崎は自分より頭一つ背丈が低い。自然と見上げる形で川崎が話かけてきた。


「春川さんのエキストラスキル。絶対聖域サンクチュアリコートでしたっけ?あれって凄いスキルですよね。うらやましいなぁ」


「そんなでもないわよ。あれは発動したら自分も動けないもん」


絶対聖域サンクチュアリコート。春川のみ使用できるエキストラスキル。一人もしくは一体を対象とし、テニスコートのように互いの間に不可侵なネット状の結界を張り、お互いを攻撃不可状態にするスキル。術者がスキルを解かない限り、自身を含む対象者はその結界から脱出する事は不可能である。相手を束縛するのに最適なスキルだが、複数名の仲間がいる場合は攻撃が通る為、主にボス戦などで重宝された。


「僕のスキルなんか影を移動するぐらいなんですよ。腕力ないんで逃げるだけの自分にはうらやましいです。僕なんて、正直パーティのお荷物ですよ」


「そんな事ないわよ。あのクレタ島のミノタウロス戦は貴方のパソコンのマッピングがあったから攻略できたんだし」


川崎は、まるで女子のように恥ずかしそうにうつむいた。


春川の部屋に着く。彼女は予め、内藤から受け取った鍵で部屋を開けた。先程皆で応接間に集まる前と変わらない空間。ベッドがあり、中央に花が活けられた花瓶のあるテーブルと椅子が二脚。やや大きめの窓から月明かりが差し込んでいる。今夜は満月だろう。


春川に続き、川崎が部屋に入る。彼は後ろ手にドアを閉めた。


「やっと、二人きりになれましたね」


「!?」


川崎の口調が変わった。普段の弱々しいイメージとは違う、男の口調。


「な、何?私を口説くつもりなの?駄目よ、今は部活に集中したいんだから…」


その時、窓ガラスが割れて突如、黒装束に身を包んだ人物が部屋に躍り込む。覆面で顔を隠したその人物はナイフを手にしていた。


「敵っ!…絶対聖域サンクチュアリコートっ!」


その人物を対象に長方形のちょうどテニスコートを縮めたような結界が張られる。覆面の音は否応なしに身動きを封じられ、あくせくと身をもがいている。


「おいおい、話が違うぜ!か弱い女子じゃなかったのかよ?」


声からして中年男性らしい。会話から察するにNPCではなくプレイヤーだろうか。


「人の部屋に土足で入って来て何言ってんの!川崎くん、私があいつを押さえてるから、ベッドの側にあるロープであいつを縛って」


先程、雑貨屋で仕入れたロープがベッドの側にあった。が、川崎は動かない。


「早く!何してるの…え?」


激しい痛みが春川を襲った。彼女の背中にはナイフが突き立てられ、赤い血が流れ出す。結界が解けた。荒い息を吐き、男は力なく倒れ込む。


「ナイスタイミングでした。もう貴方にも用はありません。影刃シャドウブレイドっ!」


男の首が影の中から現れた漆黒の刃ではね飛ばされた。床に転がり、覆面の間から見知った顔が見える。たまたま居合わせた銀行強盗を取り押さえた市役所職員である。ニュースや新聞、ネット等で大々的に取り上げられていた。


「おや、貴方だったんですか。英雄気取りが金で人殺しを請け負うなんて、とんだ世の中になったもんですね」


一変した川崎の口元に嫌らしい笑みがこぼれた。


「所詮、いいとこの大学を出て公務員になったところで、これですよ。茶番も茶番。ねぇ、春川さんもそう思いませんか…あれ?もう喋れませんか。あいにく、先程の絶対聖域サンクチュアリコートで力を使い果たし、レナスシステムは消失したみたいですね。助けは呼べませんね。残念でした」


春川は何かを抱きしめ、床に倒れ込んだ。傍らの血溜まりに彼女の手にしていたハンマーが落ちた。真っ赤に濡れた人差し指で必死に床に何かを残そうとしている。


「うざいな。死ねよ、もう」


(唯、母さん…ゴメンね…)


真っ赤な鮮血がほとばしった。


推理物みたいになってしまいました。


惨劇はメンバーに暗い影を落とします。


川崎の目論みは果たして…。


今回もご覧頂きありがとうございました。

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