第六十六話 スピカと柚子
タイトル迷いました。
でも、これが一番シンプルで分かりやすいかなと。
その理由は…
続きをどうぞ。
スピカは室内が冷えてきた事もあり、暖房を入れた。
「ホットミルクじゃ、飲むかの。少しは落ち着くぞ」
「ありがとうございます」
お互い黙ってホットミルクをすすった。研究室内は空調と二人がホットミルクをすする音だけである。コピーは口を閉ざしたまま、規則的に瞬きをしている。
「…ワシはな。充之がお主達を救う為にワシの子供の頃、進おじちゃんに聞いた話をしたのじゃ」
「え?」
「確かに進おじちゃんは昔話をしてくれた。レナスを調整したワシでさえ、あの話は半信半疑であった。神じゃの宇宙人だの、科学で証明できぬ物に真理が解けるわけないと。じゃが、実際に過去の歴史を見て来て本当に神や宇宙人が存在しているのかも知れんと考えを改めることにした…筈じゃった。じゃが、心のどこかで自分を捨てきれんかった」
スピカは一気にコップの中のミルクを飲み干した。
「ワシは今までの自分を否定しとうなかったのじゃろうな。ひたすらワシの科学を信じ、オカルトなぞもっての他じゃった。ワシの理論を足蹴にしてきたじじい達を見返してやろうと必死に研究に没頭した。若さを未熟さと捉えられるのが嫌で、あえて年寄りの口調に寄せてみたりもした。その結果、知恵はついたが、何か幼き頃に持っていた筈の大事なモノを忘れてしまっていたみたいね」
柚子はじっとスピカの話に耳を傾けていた。
「私はね、子供の頃からロケットが作りたかったの。ただ、それだけを求めてた。子供の頃に進さんと宇宙に行くっていう約束を果たしたかっただけなの。だから必死に勉強してた。でも、進さんは行方をくらましていなくなっちゃった。それから、自分の夢を忘れちゃった。青春時代も棒に降っちゃって、やっと会えたと思った進さんもいないなんて。私、ずっと何してたんだろうね。ちょっと、肩貸してもらっていいかな」
柚子の肩に額を乗せる。スピカの瞳から涙が一粒流れ落ち、柚子の手の甲を跳ねた。
「スピカさん…」
「………よし!もう大丈夫!星野スピカ完全復活じゃ!」
「はいっ!」
スピカの復活に柚子も気持ちが乗ってくる。
「ちなみに、さっきの話聞いた充之がなんて言ったか知りたいかの?」
「ふふ、知ってますよ」
「そうじゃ、レナスとLINKしてたのじゃったな。さてと…」
スピカは勢いよく立ちあがり、モニターのコピーに話かける。
「お待たせしたの。さて、これからはこっちの質問じゃ。現在、岬達がゲーム世界に閉じ込められているのじゃが、状況と救出方法を教えてくれるかの?」
コピーは少し時間をおいて答えた。
「現在、彼らに対しレナスのシステム自体は順調に稼働している。だが、外部と内部のコンタクトが強制的に遮断されており、状況は掴めない」
「…それじゃ。私がアクセスしても向こうに音沙汰ないわけ。方法はあるのかの?」
スピカのやり取りに緊張した面持ちで見守る柚子。
「アクセス方法は可能だが2日程の時間はかかる」
「そう。じゃあ、原因は分かってるのじゃな」
その問いの答えは不可解なモノだった。
「悪魔だ」
「は?」
「悪魔の呪いにより、転送された者達の魂が縛られている」
二人は顔を見合わせた。そしてコピーに向かって口を揃えて言った。
「悪魔なんて興味はねぇ。今の俺達がやらなくちゃならないのはアイツらをここに連れ戻すことだけだ!」
二人は心から笑いあった。
二人の息がぴったりなのがお気に入りです。
スピカの口調を戻すか迷いましたが、やはり、のじゃ路線で。
分かりやすいからね。
今回もご覧いただきありがとうございました。




