表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
学園英雄記譚 - Lenas (レナス)-  作者: 亜未来 菱人
ライフサーガ編
59/290

第五十九話 須藤家の事情その弐

合宿編が始まります。


岬メンバーが気になると思いますが、暫しお付き合いください。

「とうっ!」


影辰は屋根から飛び降りた。3階建てマンションほどの高さである。


空中で膝を抱えて華麗に三回転を決め、低姿勢で着地する。


(よし、決まった。私に注目の視線が集まるのが分かる)


影辰がゆっくり顔を上げた。目の前には…氷目の尻があった。影辰が地面に着地したと同時に氷目も着地していた。直立で。


「兄様。せっかくの攻撃の機会が台無しです。油断させるにしても、それはやり過ぎでは?」


「……そうだな」


二人のやり取りに気付いた千晶が声をかけた。


「あっれぇ?氷目と影辰先輩だ。いつからそこにいたの?」


「今来た」


「う…うむ」


(だ、誰も着地の瞬間を見ていなかっただと!?不覚っ!)


「おっ!辰、遅いって。部長なんだから早く来なよ」


神楽は腕組しながら影辰を上から見下ろしている。


「は、はいっ!不肖、この須藤影辰、只今から古武術愛好会の合宿を取りまとめさせて頂きます!翁っ!翁はいるか?」


「はい。影辰様の目の前に」


影辰が気付くより早く、翁は目の前に杖を片手に立っている。


「二日間、この翁が考えた練習メニューを行う。ちなみに、女子もいることだし、それぞれに合わせたハンデを付けさせてもらった。詳しい事は翁に聞くように」


口調はまともだが、皆が手裏剣ジャージに突っ込みを入れたくて我慢している。氷目は自分の事のように恥ずかしさを感じてプルプルと震えていた。


しかし、その緊張張り詰めた空間に一人切り込んだ強者がいた。


静音である。


「うっわぁ。ダサダサのジャージだよ。特注なのかな?絶対、売ってないよね、これ」


「ださださ…?」


影辰の眉間にシワがよる。場の空気が凍った。


「兄様を愚弄した。許さぬ」


氷目がいつの間にか取り出した苦無くないを手に構えをとる。しかし、翁はそれを杖で制した。


「氷目様、お控えください。ここはわしに任されよ。…さて、我が主を愚弄した小娘にはお仕置きが必要ですな」


翁の体から一瞬凄まじい空気の波が走る。その場にいた皆が足止めをくうほどの気の使い手だろうか。


「充之、これ?」


「あぁ、ヤバいかもな。」


真田姉弟には翁の力に気付くだけの力があった。


「うわぁ。何これ!巨大扇風機の風浴びてるみたい!」


「ち、千晶ちゃん巨大扇風機なんて浴びた事あるのっ!」


「ない。そんな感じで表現したら分かりやすいかなって」


千晶と柚子はお互いに手を繋いで、必死に地面にうつ伏せになり張り付いている。


「充之、これ?」


真田姉弟には翁の力に気付くだけの力があった。


「あぁ、気の力だけで風を操っているんだろうな。かなりの使い手だよ。ま、あいつは大丈夫みたいだけどな」


静音は真っ向から気を体に受けて平然と立っていた。その顔は笑顔である。


「スッゴイね!こんな気の流れ久し振りに感じたよ。乱気だったっけ?」


「ワシの気を平然と受け止めておる。しかも、乱気を知っておるとはお主何者じゃ?」


静音はなびく髪をかきあげて言った。


「あれ?ボクを忘れたの?『ポチ』」


「ポチ…ま、まさかっ!?」


途端に嘘のように気の嵐が止んだ。


「…し、静音様?」


「だよ。ボクの顔忘れちゃった?って、輪廻転生したから顔変わってんだ!てへ」


影辰は勿論、周りの皆は唖然としていたのは言うまでもない。氷目は無言で苦無を腰の帯にしまった。とりあえず二人が知り合いだと言うことは理解できた。


「すみません! まさか、静音様がこの時代に転生していたとは。確かワシが静音様を最後に見たのは江戸時代、ワシがまだ三十路を越えた頃でしたな。その頃の静音様は8代目でしたか…」


「しばらく空いて今は13代目になるのかな。でも、ポチも今までよく生きてたね。長生きしたねえ」


翁の面の下から顎を伝い涙が流れ落ちた。


「こうしてまだワシの体が動ける間に静音様に逢えたのは奇跡でございます」


「まさか、ポチに会えるなんてボクもびっくりしたよ。あの時は素顔だったからね。お面じゃこっちも最初分からなかったよ。声も気もあの頃とは雲泥の差があるしね」


千晶がそっと静音に耳打ちする。


「しずちゃんってこのお爺さんの知り合いなの?」


「うん、ずっと子供の頃からボクの後を付いてきてたからポチって呼んでいたんだ。あ、今はボクより年上だからポチって呼んだら失礼だよね。ポチ…あ、いや本名で呼んだ方がいいのかな?」


翁は頭を振ってにこやかに笑う。


「はっはっは。静音様はそのままでよろしいのです。今は翁という名で呼ばれていますが、若い頃は『平賀源内ひらがげんない』と呼ばれておりました」


またもや一同は唖然とした。柚子はレモンの蜂蜜漬けを取り落とし、千晶は頬に手を当てムンクの叫びのポーズをとっていた。


ただ神楽だけ、明らかに違う態度をとっていた。


「平賀源内…ね。あんたのせいで、小学生からうなぎ食べれない家の子ってクラスの皆にのけ者にされたのよっ!この恨み晴らさでおくべきかっ!」


「姉さん、やめろっ!家の貧乏をさらけ出さないでくれっ!」

偉人が出てきました。(笑


平賀源内には諸説ありますが、この世界の源内は発明家でもあり、実は忍の技を会得していたのです。


その秘密は次回に。


今回もご覧頂き、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ