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学園英雄記譚 - Lenas (レナス)-  作者: 亜未来 菱人
ライフサーガ編
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第五十七話 赤光のナイトハルト

今回はゲーム内のお話です。


新キャラクター登場回です。彼らはこの世界のキーマンです。覚えておいてくださいませ。


では、ごゆっくり。

岬達選抜メンバー一行は街道沿いの宿場町ナセールへとたどり着いた。この宿場町は王都カイザルに一番近い町であり、旅の行商人が集う事で活気がある町である。それ故、冒険者ギルドには依頼を求めて多くのパーティーが集まっていた。


岬達は、進の情報とこの異変について情報を集める為に、腕利きのメンバーが集まる酒場へと向かっていた。


「あれ、何の集まりだろ?」


「さぁな、あまり近寄りたくはないがな」


春川の質問に武井はぶっきらぼうに答えた。剣道一筋の彼にはあまり、女性には免疫がないらしい。


紅一点の春川はテニスルック、武井は面と胴を外しているが剣道着、立石はいつものボクサーパンツにTシャツ、香川は弓道着、川崎は制服姿と、かなり目立つ格好で周囲の目を集めている。


岬はスピカにレナスでの戦闘用に仕立てあげられた金の甲冑を着こんでいるので、この世界においては最も違和感のない姿であった。


「あれは教会でしょうね。調べてみたところ、怪我や呪い、死者の蘇生までを有料で行う施設らしいですね」


眼鏡を人差し指でくいっと上げながら、ノートPCを操る川崎はパーティーの頭脳的な役割を担っていた。


教会に押し寄せる人ごみはごった返し、多くのプレイヤーが我先にと押し合い、それがさらに怪我人を増やしているかのようだ。


「俺が先だ。ゴブリンにやられた傷が塞がらねぇ。痛いんだよ」


「あたしのパーティーの僧侶が瀕死なんです。回復薬も効かないし、ゲームなのに本当に死にそうなんです。お金ならありますから、なんとか助けてください」


男女の悲痛な叫びも空しく、列は一向に動かない。


「やはり、異変のせいだろう。とりあえず酒場とやらで情報を集めなければ」


一同は酒場に到着し、昔のウエスタン映画に出てきそうな木製の扉をくぐった。店内は複数のテーブルに冒険者パーティーが席を陣取っている。一人で木製のジョッキの酒をあおるものもいれば、パーティーメンバーで今後の目的を話し合う者もいる。いずれも、実際のゲーム外での体になっていることを口々に話しているようだ。


ある者は一生この世界に留まりたいと言う。また、ある者はゲームをクリアすれば元に戻れるのではないかと、悲嘆と楽観が入り交じる会話に岬達は圧倒されていた。


「やっぱり、私達だけじゃないんだ。みんなこのゲームの世界に閉じ込められているんだわ」


春川は崩れ落ち、半ば泣きそうになっている。


「バカ野郎!帰れるかどうかやる前に諦めんなよっ!やる事やってから考えろよ」


立石は逆境に強いタイプであった。


酒場の奥には、プレイヤーとは別にNPCノンプレイヤーキャラと言われるゲーム内のキャラクターが歌っている。差し詰め、吟遊詩人という立場であろうか。彼はプレイヤーのランキング情報を伝える役目を担っているらしい。


「あの吟遊詩人に聞いたところ、クリア組という、上位クラスのプレイヤーが複数いるらしいです。彼らはゲームを何周にも渡って周回プレイをしているそうなので、この世界について詳しいのではないでしょうか」


川崎は吟遊詩人から聞いたプレイヤーの名を上げた。


「一人は『閃光のシャイル』僕達はプレイヤー自身の名前ですが、彼らはハンドルネームを使っているみたいですね。あと、『黒のダークシオン』や『紫のソウルシェイド』『赤光のナイトハルト』という方々が有名らしいですね」


「わかった。とりあえず、今日は宿で体を休めて明日からその四人の情報を集めよう」


岬の提案に春川はいち早く賛成した。


「早くお風呂入りたい!もう、体ベトベトだよ」


「俺も腹が減ってたまらん。この世界の飯が食えたもんか分からんがとりあえず宿へ行くか」


武井、立石、川崎も春川の後を追う。


選抜メンバー達は岬の後を追いかけるように酒場を後にする。が、最後尾にいた香川が店を出たところで、ふと目線を一点に向けた。フードを目深にかぶった女性を数人の男達が追いかけている。


「川崎、私は少し用事が出来た。すまないが、岬さんには後で宿で落ち合うと伝えておいてくれ」


「はい、わかりました。用事が何であれ、お気をつけください。この世界は何が起こるかわかりませんから」


「すまん」


香川は川崎に一礼し、男達を追った。



「な、何するの!」


「大人しくすれば痛くはしねぇからさ」


路地裏に追い詰められた女性は男に腕を掴まれ、身動きできないでいる。


「お前らよく見ておけよ」


そのリーダー格らしき男はローブ姿の女性のフードを払った。


「ひょおっ!やっぱりだ。こいつアイドルの沢村栞だぜ」


それは今人気絶頂のグラビアアイドル沢村栞その人だった。


「アイドルがこんなゲーム世界で何やってんだよ」


「あぁ、こいつこのライフサーガのイメージガールやってたはずだぜ。それにしても、いやらしい体してんな」


男達は栞の体をなめ回すかのように視線を浴びせた。


「いやっ。腕を離してくださいっ!」


「ばぁか、離す訳ねぇだろ。どうせ、この世界からは出れねぇんだ。ゲームの中だ、法律もお巡りなんかも関係ねぇ。イメージガールなら俺達プレイヤー様を楽しませてくれるのも仕事のうちだろ?な!」


「だ、誰か助けて…むぐ」


男は栞の口を抑え込んだ。そして、片手を胸元に伸ばそうとした時。


ヒュンッ!


突如、飛来した矢が男の頬を掠めるように飛び去った。


「誰だ、やりやがったのは!」


「女一人に男が寄ってたかって恥ずかしいと思わんのか」


香川が残心(弓を射った後の構え)のまま、叱咤した。


「優男がカッコつけやがって。見ろよ、グラビアアイドルの沢村栞だぜ。お前にも最後に回してやるから、大人しく見てろよ」


「沢村…栞…知らんな。とりあえず女性に狼藉を働く輩は許さぬ」


「堅物野郎が、お前らやっちまえや」


リーダー格の男の掛け声に、香川に一斉に遅いかかろうとした彼らの足が止まった。香川が振り返ると背後に深紅の鎧に身を包んだ男が立っていた。


「あの鎧っ!赤光のナイトハルトだっ!やべぇよ、逃げろっ!」


一人、二人と逃げ去り、やがてリーダー格の男も腕を振り払い舌打ちしながら走り去った。


「大丈夫ですか、怪我はありませんか」


ナイトハルトと呼ばれた男は沢村に近付き、手元にあったハンカチを彼女に渡した。


「大丈夫です。あの人が助けてくれたから」


沢村は香川を指差した。


(この男がナイトハルトか?)


香川の険しい表情に笑顔で話しかける男。


「ありがとうございます。彼女に何かあったら、私が社長から怒られますので本当に助かりました。あぁ、今は名刺を持ってないのですが、私は内藤遥人ないとうはると。彼女の所属している事務所のマネージャーです」


まさかのグラビアアイドルにマネージャーさん。


何故彼女達はここにいるのか。


謎が深まるばかりです。


ここまでお読みくださいましてありがとうございました。



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