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学園英雄記譚 - Lenas (レナス)-  作者: 亜未来 菱人
ライフサーガ編
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第五十四話 選抜メンバー

ゲーム内に転送した岬をリーダーとした選抜メンバー。


選抜メンバーというだけあって、実力者揃い。(ちなみに今、レナスの存在を知っているメンバーは30人ほどで、皆、他の生徒達には機密保持を守っています)


果たして、岬の父はこの世界にいるのか。


どうぞ、お時間ある方はご覧ください。

「各自、無事か確認せよ。周囲の状況把握を怠るな。ゲームとはいえ油断は禁物だぞ」


岬の掛け声でライフサーガ内に転送された選抜メンバーの五人は各自の位置とお互いの無事を確認する。


「剣道部部長、武井重成たけいしげなり無事です」


「弓道部部長、香川秋人かがわあきと問題ない」


「テニス部部長、春川亜希はるかわあき問題ないですわ」


「ボクシング部部長、立石丈たていしじょう問題ないぜ」


いずれも40レベルに到達する岬が厳選した精鋭だった。


六人は月明かりの中、街道沿いの平原に転送されていた。正規ルートでの参加ではないので、ゲーム内のプレイヤーに怪しまれる事を視野にいれ、夜間、町から程なく離れた位置での転送をスピカに依頼していた。そして、それは問題なく成功していた。


「電脳部部長、川崎利晴かわさきとしはる問題…ありです」


「川崎?どうした?」


二年生で同じクラスメートである武井は、明らかに動揺し、地面にしゃがみこんだまま動かない川崎に声をかけた。


「ん…草?その草がどうかしたか?」


川崎が雑草を引き抜いたまま、まじまじと見ている事に違和感を感じた岬は不思議そうに尋ねる。


「草に…根があるんですよ。そもそも、草が抜けるんですよ」


川崎の言葉に一同が唖然とする。


「何言ってんだよ。草に根があることぐらい小学生でも分かるぜ」


立石は明らかに川崎の挙動不審な行動に納得いかず、苛立ちを隠せなかった。


「あなた方はまだ分からないのですか。あぁ、そうでした。レナスに慣れ過ぎているんですよ」


「レナスに慣れ過ぎる?どういう事だ…ま、まさか!?」


川崎の次にいち早く気付いた香川は、側に生えていた花を引っこ抜き香りをかいだ。


「やっぱりだ。学園長、ここはおかしい!」


岬は二人の不可解な行動に疑問を感じた。岬はわかるはずもなかった。何故なら、岬はゲームをやった事がなかったのだ。


「そうです。リアルなんですよ。あまりに現実的なんですよ。VRの比じゃない。草を抜いた感触、土や花の香り。ゲームにしてはこの世界リアル過ぎるんですよ」


川崎の言葉に一同は気付いた。レナスを体験し過ぎている。それは、あくまで現実世界に限りなく近い。しっかり、五感を感じとれる。


だが、このライフサーガはゲーム世界である。そもそも、一般のゲームの中に香りを本物に近づける事はないのである。


「しかし、レナスを利用してアクセスした我々だから…なのでは」


「いや…あれを見てください」


川崎は街道に佇む二人の冒険者を指差す。月明かりで、照らされた程度の明かりだが、川崎は目ざとくほんの少しばかり前に気付いていた。


「敵意を持っているかもしれん。皆、気をつけろ」


岬はあらかじめ川崎に冒険者狩りという特殊なパーティーが存在する事を聞いていた。武具や金銭を奪う盗賊同様の行為をおこなう者達だ。彼らは下手をするとモンスターより厄介な相手だと言えた。


岬を先頭にメンバーはそっと気付かれないように接近する。人数的には優位だが、万が一の場合もある。包囲した上で、友好的な相手か確認しなければならない。


友好的なら、こちらが、あらかじめ所持していり金銭などで情報を聞き出すことも可能だろう。


街道には二人の男女がいた。男はまだ十代の中学生。あまりにもサイズの合わない大きさの戦士の鎧を身に付けたまま、座りこんでいる。女性は神官系の職業であろうか、修道女の格好をしている。手鏡を覗きこんだ彼女は微動だにしない。


(これは?)


「どうしたんだ!しっかりしろ!」


岬は充分に距離をとった上で女に声を掛けた。顔に深いシワを刻んだ五十代ほどの女だった。


「私の顔!顔が!美しかった張りのあった顔が…」


一方、中学生に声をかけていた春川は岬に駆け寄って来た。


「あの中学生の子、つい一時間前まで屈強な戦士だったそうです。でも、いきなり現実と同じ体になって鎧の重さに堪えかねて街道に座りこんでいるらしいです」


(一体、何が起こっているんだ)


異変が起こっているのは間違いなかった。


「学園長、とりあえず当初の予定通り、人の集まる町で情報収集するべきではないか」


レナス初期メンバーとして岬を支えてきた香川が提案する。彼は常に岬のクエストには補佐として参加しており、心強い参謀の立ち位置にいた。


「それもそうだが、一応本部に状況を確認してみた上で行動する」


「了解」


皆、口を揃え岬に従った。


「本部、応答せよ。こちら、ゲーム世界に到着した。本部、応答せよ!」


しかし、通信はノイズがかかったまま返答はない。本部には万が一の為に教師の加藤と生徒会組が交代制で待機しているはずである。


「トイレにでも行ってるんじゃないっすかね」


いまいち緊張感のない立石が言った。これは場を和ませるわけではなく本心だろう。


「あんた!女の子の前で変なこと言わないでよね」


立石と同じクラスの春川がポニーテールを揺らしながらプンプンと怒っている。


その時、システムを確認していた川崎が何かに気付いた。


レナスのシステムはこの世界に合わせて改良されている。全員がいつでもログアウト出来るようになっていた。


「ログアウトの表示がない…」


ここまで、お読みいただきましてありがとうございます。


今回は岬と選抜メンバーがゲームの世界に取り込まれてしまいました。


果たして彼らは皆無事に現実世界に戻ってこれるのでしょうか。

ちなみに注目は弓道部部長です。

長い髪を束ねたイケメン男子で頭も切れる岬の右腕です。


今回もご覧いただきましてありがとうございました。

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