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学園英雄記譚 - Lenas (レナス)-  作者: 亜未来 菱人
酒呑童子討伐編
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第四十話 覚醒

何も出来ない歯痒さに柚子はただ祈ることしか出来なかった。


(神様…私の全てを捧げます。この悪夢から千晶ちゃん達を助けてください)



柚子は普段から信心深い方ではない。だが、この時ばかりは神に願った。そう、存在しているかも分からない神に。だが、その祈りに応えるかのように。



(柚子…柚子…)



柚子を呼ぶ声が聞こえる。それは柚子の頭の中、柚子だけに聞こえた声だった。



(か、神様なのですか!?)



信じられない事であった。気付けば、晴明も鬼も、千晶や優音さえもまるで人形のようにピクリとも動かない。いつの間にか風も止み、空を流れる雲も、小鳥のさえずりや木々の葉がこすれ合う音さえも。自分以外の全ての時が止まった。



(ワタシはレナス。管理する者。今、貴女の心に語りかけています)



優しげな女性の声が脳内で語りかける。



(レナス…様?神様ではないのですか?)



(ワタシは貴女をこの世界へ誘いました。それは貴女にしか出来ない事があるから。今から貴女にワタシの意思を伝えます。安心して下さい、すぐに済みます)



(えっ!きゃっ…)



レナスはそう語りかけると、柚子の脳内に圧倒的な記憶と知識を流し込む。それは、太古の昔よりこの地球に現れたモノ達の歴史や知識の記録であった。生物が生まれ、子を産み死に絶え、また次の子達の歴史が繰り返される。陰陽道、魔術、伝承、文化、芸術、宗教、戦争…ありとあらゆる知識がスムーズに脳に入ってくる。だが、苦痛ではなかった。人が生きてきた歴史を彼女は受け入れた。そう、初めからそうなる事が分かっていたことの様に。



(さぁ、貴女に出来る事をやりなさい。ワタシが貴女に与えたのは過去の記憶。新しい未来の記憶を創り、伝えてゆく為に)



時が再び動き出した。鬼は柚子に背を向け、今にも優音の心臓をえぐらんとしている。



「レナス…貴女の意思は私が継ぎます」



(柚子ちゃん?)



柚子は小声だが、力強く答えた。柚子の心に燃える強い意思が、彼女の瞳をグリーンに変える。その変化に真っ先に気付いたのは千晶だった。普段の柚子と違う。いつも隣にいたから分かる事だった。



柚子はゆっくりと空に向かって両手を掲げた。



「勇気ある者よ。今、真の意思を持ち再び立ち上り給え。悠久を越えし我が力と共にあらんことを」



眩しい光が空から降り注ぐ。それは、倒れて力尽きた兵馬、愛洲、清音を照らした。奇跡だった。三人は何事もなかったかのようにゆっくりと立ち上り、自身の体をまじまじと見た。傷は全て癒え、清音に突き立てられた短剣は塵となり消えた。



「柚子ちゃん!」



直後、糸の切れたようにぐったりと地面に倒れこみそうになった柚子を駆けつけた千晶が支えた。



「ち、千晶ちゃん、みんなもう安心だよ…」



大粒の汗をかき、笑顔で目を細めていた柚子はゆっくりと瞼を閉じた。極度の疲労感が彼女を襲っていた。



「(千晶っ!大丈夫か?)」



通信からスピカの声が聞こえる。



「(スピカさん?はい、不思議と今は身体に問題はありません。でも、柚子ちゃんが)」



「(心配ない。疲労し眠っておるだけじゃ。それにしてもその娘、一時的じゃがレナスシステムの管理者権限を取得しおった。わしでさえまだ把握しておらぬ機密情報などレナスに蓄積された膨大なデータの転送が行われた形跡がある)」



スピカは手元のコンソールパネルを操りながらデータを抽出していた。



「(む?そろそろ英雄ヒーローが到着する時間じゃ)」



「(え?)」

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