第三十六話 クリエイター
一週間前。
「よいのじゃな。お主にも危険が伴うのじゃ。断っても構わないのじゃぞ」
「構いません」
スピカは千晶の熱く燃えるような力強い信念に押され、うむと言わざるを得なかった。
(パパとママの思い出の家、私が守るんだ)
老いた祖父の貯めていた貯金も底をつき、細々と経営している喫茶店の収入も二人暮らしにはいささか心細かった。しかし、祖父の源治は生活費の事を千晶には一切語らなかった。家が金銭に困っている事を知ったのは偶然の事である。祖父が黙って大事にしていた祖母の形見の指輪を質に入れていた事を、その質屋の娘が同級生であり、内密に千晶に教えてくれたのだった。そもそも、この喫茶店も借家で、家賃の支払いが滞ると手放さなくてはならないことは理解している。そんな矢先、バイトを探していた千晶にスピカが声をかけたのであった。千晶の家の不動産会社は時雨財閥のグループ子会社の一社で、条件次第では喫茶店の家賃をいくらか肩替わりしてやると。千晶にしてみれば、千載一遇のチャンスでもあった。
(進は何を考えておる?)
無論、進の指示であったがスピカは脅しをかけているようで心苦しく思う半分、新たな研究素材の協力に胸踊らせていたのも事実だった。
「ところで、先程お主の希望を聞いたのじゃが…本当にこれで良いのか?」
レポート用紙に書き込まれたイラストを手に千晶に確認する。
(肌スケスケじゃろ。これは最近の女子高生の着る服装ではないぞ)
「はい!最近のアプリゲーム内のキャラを参考にしたんですが、…やっぱりダメですか?」
「いや、実際にお主に反映されるんじゃぞ。恥ずかしくないのか?」
千晶は顎に手をあて考え込む。
「じゃあ、ここはこうして。露出を減らして武装強化しましょう。んで、右手に…」
楽しそうに語る千晶を余所にスピカは笑顔で答えつつも内心呆れていた。
(最近の女子高生の発想は分からぬ。研究材料が増えるのは良いが、不安材料も増えるのは困りものじゃな)




