第三十五話 千晶命燃やして
「さて、後は貴方達の番です。一人づつ体の隅々まで見て差し上げましょう。この茨木の体に相応しいパーツがあればよいのですがね」
柚子はこの絶対絶命の窮地に恐れ、体を小刻みに震わせた。頬を伝う涙が千晶の手の甲に落ち、その震えが体に伝わる。唯一の戦闘経験者である清音はもう動くことさえままならない。優音はもちろん、柚子も戦うことはおろか逃げることも叶わないだろう。
(今のあたしに出来ること…)
千晶は柚子の体を優しく撫でて言った。
「柚子ちゃん、待っててね。あたしが必ずみんなを守って見せるから」
「えっ?」
そっと柚子の体から離れ立ち上がると、無意識下にレナスシステムにアクセスしている千晶がいた。
「やめ…ろ。ちあ…き…」
意を察して清音はかすれた小さな声で千晶に呼びかける。生命エネルギーを著しく消耗した彼女にレナスシステムを介して伝えるべき術はなかったので、その声は千晶の耳に届くことはなかった。
優音は清音の肩を支えていることで精一杯だった。止まることのない清音の血が彼女の手を今も真っ赤に染めている。
(レナス緊急用システム作動。使用者の生命に関わるダメージを負う可能性があります。リミッターを解除しますか?)
綺麗な女性の声音が機械的に千晶に質問を促す。千晶は躊躇した。走馬灯のように今までの人生で自分の回りにいた人達の笑顔がフラッシュバックして思い出される。
(パパ、ママ、おじいちゃん。柚子ちゃん、優音ちゃん、清音さん…神楽さん、そして充之…)
無表情で立ち尽くす茨木。腕は元に戻っている。晴明は一瞬、武器も持たず歩いてくる千晶が降伏したかのように見えた。が、考えを改めるのに時間はかからなかった。
(イエス!リミッター解除。戦闘モードアクセス!)
(了解しました。リミッター解除します。バトルモードに移行します)
稲光を発し、千晶の体がふわりと宙に浮いた。制服姿の彼女の体に変化が起きる。まず、両肩にはプロテクターが装着される。右肩にはカノン砲が備わっている。両膝から脛、足元にかけて金属製であろうか、ブーツが現れた。右腕にはコンパクトな握りから光を発するサーベル状の武器。左肘の辺りには銀色のシールドが固定される。胸部には胸当て程度の大きさの銀色のアーマーが。腰部にはスカートタイプの煌めく腰当てが装着され、その両サイドには二丁の小型のガトリング砲が設置されていた。最後に頭部にサファイアらしき宝石を中央にあしらったサークレット。この間、わずか1秒。
(ここまで、リアルなんだ)
千晶は自分の姿に驚きを隠せず、興奮冷めやらない気持ちになった。




