魂の在り処 神崎編 その壱
前回のあらすじ
安倍晴明の復活を目論む大陰。
そして、育ての親であり師匠でもある道満の仇を討つべく、式神天后を使役する鬼の血をひきし陰陽師神居方安。
その数奇な運命に巻き込まれてゆく充之達。
未来を救う為、更なる戦いの足音が彼等に聞こえ始めていた。
ぴくりと何かに気付いたかのように、天后が視線を移した。視線の先は壁に向かっており、美しい顔が眉をひそめて見るそれはあたかもその先を透視しているかのようである。
「主様。どうやら、先程の者が大陰と遭遇いたしました」
「始まったか」
「何? 始まったって……まさか!」
充之の千里眼は未来を見る事は出来るが、過去を遡って見る事は出来ない。だが、レナスによる記憶の共有から、彼女達の少し前の出来事を知る事が出来た。
「神崎が来たのか。っていうか、大陰と遭遇したって……お前っ!」
充之の中で怒りがこみ上げて来る。つい半日前まで自分の命さえ狙っていた神崎だが、和解を遂げ、今彼の中では強い絆で結ばれた仲間意識が芽生えていたからである。
「利用したのか! あいつをっ!」
「うぐっ」
「主様っ!」
主の襟首を捕まえ詰め寄る彼の手を、天后はいつの間にか手にした扇のようなもので払おうとした。ゆっくり頭を振る方安。
「や……めろ。天……」
苦しそうにうめく方安の表情にスピカの影が重なる。充之はハッとなり即座に手を放した。
「げほっ、げほっ」
「あ……すまない。俺……」
仲間。充之にとって、大切な人達の事になると後先考えずつい手が出てしまうのが彼の悪い癖であり、若さが為せる行動であった。
「すまぬ。話しておくべきであったな。大陰はもう、我々の目と鼻の先におる。その大陰を討つべく追って私はここに来た。お前達とここで出会ったのは偶然なのだ。いや、運命かも知れぬがな」
締め付けられた喉をさする。彼女は鬼とはいえ、非力な人そのものであった。
「くっ! だけど、神崎……それに一緒にいる睦月や坂本竜馬まで巻き込んだのは許せねぇよ」
神崎にはまだレナスの保護がある。しかし、睦月や竜馬は達人とはいえ生身の体。大陰という神を相手になんら普通の人間と変わらぬのである。
「ご心配なさらぬよう。主はその辺りも考えておられます」
大陰と同じ神、式神十二天将である天后の言葉に、充之は小さな陰陽師を見る。
「あの者には私が使役する式神十二天将の一柱『青龍』を授けた。青龍は大陰にとって最も苦手とする相手ゆえ、むざむざ殺られることはない。必ずお前達の仲間を守ってくれるはずだ」
(………………)
得意気に語る方安。だが、それとは逆に、充之は何か得もい言われぬ一抹の不安を心の中に感じた。
即座に彼は地を蹴った。
突然の充之の行動に驚きつつも、彼を追う方安と天后。彼女もまたレナスの力か鬼の力か、充之のスピードに追いつき並走している。
「突然、どうした?」
「今のあんたなら分かると思うが……ひとつ、大きな間違いをしていたんだよ」
「間違い?」
「神崎がこの世で一番嫌いなモノ……それが『神様』なんだよ」
充之の言葉の意味とは。
神崎の悲しい過去が、また明らかになる。
次回 魂の在り処 神崎編 その弍『神裂』
引き裂かれるのは、神との縁か、それとも……
今回もご覧頂き、ありがとうございました。




