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学園英雄記譚 - Lenas (レナス)-  作者: 亜未来 菱人
幕末編
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坂本と神崎、そして睦月

前回のあらすじ


充之達の前に現れた少年『真』はレナスの加護を受けた者だった。


充之は記憶を失った彼の素性を調べようと考えるが、能力千里眼により、彼の記憶を探ろうとした場合に罠が発動する事を看破する。


その時、充之の記憶に遠い過去のビジョンがよぎった。


それは幼い頃に家を出て行った真一の姿であった。




一方、坂本竜馬と神崎は睦月を追っていた。

「はぁっ、はぁっ!」



白い息が粉雪の降る宵闇に溶けてゆく。



神崎の手にした小さな携帯用ライトが道を照らしていた。



二人の男は一人の女を追って走っていた。坂本竜馬と神崎竜馬である。



坂本竜馬はぴったりと神崎の横につけて走っている。着物姿の袴であるにも関わらず、神崎の速度について来ていた。



「やるのぅ。わしも足には自信があるんじゃが」



「へっ。坂本さんもその格好でなかなかやるぜ。ていうか、あいつ速すぎだろ」



二人の視界には睦月の姿はない。薄く降り積もっている睦月の草鞋の後を目印に追っているのである。



坂本は言った。



「おんし、惚れちょるんじゃろ?」



「な!? 俺は……」



「言わんでもわかっちょる。男の約束じゃ。誰にも言わんきに」



(面倒くせぇな……)



神崎は思った。もし、隣にいるのが坂本竜馬でなければ一発殴り飛ばしていたかもしれない。



だが、彼のいう事は間違いではなかった。



土方の投げた刃から睦月を守る為に飛び出したのは、静音の為だけではなかった。



彼女の美しさに惹かれていた。



今まで仕事で超のつく一流のモデルや女優の警護を行ってきた事もあったが、どんな飾り付けられた容姿や美貌も彼の目を引く事はなかった。



勿論、女性に興味がなかったわけではない。ヘイムダルのメンバーである瑠美には普段から実は男色家じゃないのかなどと冷やかされているが、彼は色恋沙汰は二の次に、仕事と兄の敵討ちを最優先として行動してきたのである。



頭では分かっていた。



静音を見れば答えは簡単である。



彼女は最終的に坂本竜馬を好きになるのである。



自分が出る幕ではない。いや、歴史を変えてはならない。何より自分は兄の仇を討たなければならない。その為に生きて来たのである。



神崎の心と体は揺れていた。



「キャアァァァァッ!」



その時、彼等の前方左手側から女性の悲鳴が聞こえてきた。



「睦月か!」



「いや、違う……」



坂本と神崎は足を止めた。そこは左右の分かれ道。しかし、足跡は右側に続いていた。悲鳴は左側から聞こえてきたのである。



(どうする? いや、ここは一択だ!)



「坂本さん、あんたは睦月を追ってくれ! 俺は左側へ行く」



「神崎……よいのか?」



「今は急ぐのが先だ! 雪が積もれば足跡が消えちまう。こいつを持ってけ」



神崎は坂本にライトを渡し、左の道を走ってゆく。



その先には二人の人影があった。ほっかむりした男が若い着物姿の女性を襲っていた。



「うらあっ!」



「げっ?」



必中の飛び蹴りで男を地面に這わした。神崎の蹴りに男は気を失った。おそらく夜盗であろう。だが、倒れた男の手には木槌が一本。木槌では人は斬れない。



(こいつ……じゃねぇのか。ならば、やはり沖田が……)



「ありがとうございます!」



「夜中に外出歩くんじゃねぇよ!」



礼を言う女性をそのまま捨て置いて神崎は来た道を戻ってゆく。



(間に合ってくれよ!)





道に捨て置かれた死体が一つ。



ナンバー10である。元よりGuardiansではない彼の体は通常の人間と何ら変わりはない。沖田の一撃により既にあの時命は断たれていた。



その死体を担ぎ上げる者がいる。成人男性の身長に等しい巨大な斬馬刀を二本、ペケの字に背負った大男。



その側におかっぱ頭の小さな少女が佇んでいた。



「お前達、何をしている!」



それは疑問の問いかけではない。威圧である。



睦月は闇夜に死体を運ぼうとしている二人を不審に思い、声で威圧したのである。



普通の人間。夜盗程度ならば、その一喝で怯んだであろう。



しかし、相手の二人はゆっくりと睦月を振り返って見ただけである。



(がん)(しん)。あんたが鈍間(のろま)だから人間に見られちゃったよ」



「う……お?」



大男は少女に叱責されたにも関わらず頭を捻っている。おそらく少女の叱責を理解すらしていないのだろう。



「それは死体だな。お前達が殺ったのか!」



少女はさらさらと揺れる髪を手櫛ですいて言った。



「あんた……じゃないよね。ナンバー10を殺ったの。そうだ。あんた、もう一人小さな男の子を見なかった? 私より少し背が高いぐらいの」



(おそらく、あの子供か。こんな幼い少女が殺すだの物騒な話を持ち出すとは……普通ではないな)



「知らん」



睦月は素っ気なく言い切る。



「あ、そう。じゃあ、もう用はないわ。巌の信、その女、好きにしていいわよ」



「う、うおっ! うおっ!」



大男は女というキーワードに反応し、担いだ死体を投げ捨て、体を大きく前後にゆらした。



睦月はゆっくりと刀を抜いて正眼に構えた。その時、彼女は気付いた。いつも肌身離さず持っていた護身刀の短刀を旅籠に忘れていた事を。







沖田を追っていた睦月が遭遇したのは、ナンバー10の死体を回収しようと動く二人の影。


普通ではない二人を前に睦月は刀を抜く。


しかし、いつも彼女を守ってきた護身刀……風刃丸は旅籠にあった。


果たして、彼女を追っている坂本竜馬と神崎は間に合うのか?





次回 死を選ぶか不自由を選ぶか



今回もご覧頂き、ありがとうございました。

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