破滅の力
前回のあらすじ
ベルゼブブにより、秘技エンドオブを受けた阿修羅。
彼女は神楽と共にこの世から姿を消してしまうのか?
阿修羅の姿がぼやけてゆく。それは、彼女自身がこの世界から姿を消す事を意味している。
「これは……」
薄れてゆく己の両手両足を見て、阿修羅は呟く。
「ハハハハハハッ! 正直、驚いたぞ。たかが人間の体に神が乗り移っていたとはな。我が苦戦するも仕方ないはずだ。だが、私の邪魔はさせない。ミルフィーよ、もうすぐだ。必ず、お前を甦らせてやる」
勝利を確信したベルゼブブ。
「(神楽っ! 神楽っ! 目覚めてくれっ!)」
「(神楽さん! 貴女は……こんなところで終わる器じゃない!)」
「真田神楽っ! 阿修羅だかなんだか分からんが、早く帰って来いっ!」
「もうっ! ワケわかんないけど、ベルゼブブの好きにさせていいのっ!? 貴女の大事な人を……守れないまま終わっていいの? 私なら……絶対許せないっ!」
四人の言霊が阿修羅の中に入って来る。
(人間共め。そんなにこの寝床が大切か……あたしは独り……)
(阿修羅……貴女は一人じゃないよ)
五人目の声。
「何者だ!」
周りを見渡す阿修羅。だが、その五人目の人物は見当たらない。
(貴女はあたし、あたしは貴女。小さい頃からずっと見守ってくれてたの知っていたから)
(まさか! 真田……神楽。お前……あたしの意識に介入してくるのか!? 神であるあたしに……)
(二人で一緒だから。貴女は独りじゃないよ)
瞳から涙が、口元から笑みが零れる。
(……そうか。あははっ! ここはあんたに譲るわ。絶対負けんなよ!)
「む?」
ベルゼブブは薄れゆく阿修羅に変化を見た。彼女の体が色濃く戻ってゆくのを。
「馬鹿なっ! エンドオブが決まったはず。何故……」
「(神楽っ! 戻って来たっ!)」
岬の心が満たされる。親しみと愛情に溢れる温かい感覚。
うつむいた阿修羅が顔を上げる。
「あたしは真田神楽……そして、阿修羅」
その目は既に悪鬼羅刹の阿修羅の者から、仲間を想う人の優しさを持った人間の……真田神楽の目を取り戻していた。
「ベルゼブブ。貴方には悪いけど、あたしは皆を守らなくちゃならないの。貴方のわがままに振り回されて、亡くなった多くの人達に代わって、あたしがこの理不尽な戦いを終わらせる!」
彼女の握りしめられた拳の中には敗者復活戦の時にアンドウから受け取ったロケットがあった。
そして、彼女の背後に亡くなった多くの犠牲者達の魂が集まってくる。
内藤、結美、夏梨、タケル、ミウ、団長などライフサーガ内で亡くなった者達。そして、大河や内藤の両親など現世で彼に殺された者達。
その魂達が彼女の体に……魂に取り込まれてゆく。
「おぉぉっ……」
「今度はこちらの番よ。さよなら、永遠に……真田流奥義、旋風龍牙鳳凰掌っ!」
それは、神楽に宿りし阿修羅の破滅の力と彼女の人を守りたいという想いを乗せた力がひとつになった強大な力。
今、龍の牙となり鳳凰の燃える翼となり、魂達の力を集めた一陣の渦を巻き、ベルゼブブ目掛けて射ち放たれた。
ベルゼブブにより殺された人達の魂が神楽に力を与える。
そして、阿修羅の力と神楽の力が合わさり、新たな力が生まれる。
すべてを乗せた最後の一撃がベルゼブブに射ち放たれた。
次回 魔王の死
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