第十八話 熱い想い
スピカは一人夢見心地のまま語った後、残った紙パックの牛乳を一気に飲み干して握り潰した。
「そうレナス…レジェンドタイムナビゲーションシステムの始まりはそこなのじゃ。おじちゃんは己の考えを証明したかったのじゃろうな。で、作って…いや創ってしまったのじゃよ。過去の伝説や伝承を追い続ける事が可能な意思を持つ神の世界への道案内人をな」
あまりの壮大な話に誰しも言葉にならなかった。夢物語と言っても過言どころではない。人類の歴史を大きく覆す否科学的な空想論だ。特に岬は自分の知らない父の姿に言葉を無くしていた。
「先日、立石と山県を含む四名をクレタ島にある伝説上の迷宮へ送ったことで確信した。そこには実際、頭は牛で体が人だというミノタウロスもいたのじゃ。仮にレナスシステム自体が空想の産物…いや、この世界自体が夢の世界かも知れぬ。じゃが、ワシは信じてみたい」
熱弁に気圧されていた中で一人、充之だけは違った。
「神だ、宇宙人だのなんて興味はねぇよ。今の俺がやらなくちゃならないのはアイツらをここに連れ戻すことだけだ!」
充之の精一杯の気持ちが皆を突き動した。今、一同の気持ちが一つになった瞬間であった。スピカはそれを見てニヤリと唇の端をあげた。
「くふふ。正直、恐れいったわ。その志にワシも今後の行方が見とうなったわ。世界の滅亡以前に大切な者を守りたい気持ちの強さの行く末をの。さて、そろそろ転送先の座標とミッションが出るはずじゃ」




