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学園英雄記譚 - Lenas (レナス)-  作者: 亜未来 菱人
ライフサーガ編
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窮地

前回のあらすじ


ベルゼブブの前に倒れた解明。


なんとか、岬の時間静止能力で一命をとり止めているが能力は30分が限界である。瀕死の解明を救うべく城内のアスタロトを連れてこようと、シャイル達は城へ繋がる回廊へと向かう。


そして、対峙するベルゼブブと神楽。



緊張の一戦が始まろうとしている最中、城内に侵入を試みる立石達レナスメンバーは……


カイザル城内へ続く回廊は一際、静かであった。武闘会場であるコロシアムの空気とはうって代わり、警備の兵士は無論、ネズミ一匹すら彼等の前に姿を現さない。



回廊には一定の間隔ごとにマジックキャンドルが明かりを照らしているが、常人の目ではその暗さ故に数メートル先を見るのが関の山である。



反射神経と動体視力に優れた立石を先頭に響子、武井のレナスメンバーが駆けてゆく。そして、少し離れて倉前が後を追っていた。



「おーい! 君たち速すぎるぞ。少しは年長者を思いやる心はないのか!」



足元をふらつかせ、息切れしながら叫ぶ彼の言葉に返答はない。先を走るレナスメンバーはまっしぐらに前に向かって走ってゆく。



(ったく、煙草早めに止めるべきだったかな)



倉前との距離がみるみる離れてゆく。



「まるでもぬけの殻だぜ。城っていうと、こうさ、なんつうか華やかさがあってよ……」



「ボクシングのリングのような試合は華やかさとは違うんですのよ。わかってらっしゃいますかしら?」



「ボクシングをなめんじゃねぇ。あそこには男のプライドが……」



(あぁ、また始まりやがった)



立石と響子のいがみ合いは今に始まったわけではないのだが。



アスタロトの指示を受けて、香川達の救出に向かった一向だった。



アスタロトは彼らと途中まで一緒にいたのだが、城内に張り巡らされていた魔力結界が解除された事に違和感を感じて先に飛んで行ってしまった。



アスタロトにおいてけぼりにされた事をきっかけに、響子も内心苛立っていたのだろう。それからずっとこの調子である。



不意に立石の足が止まった。



「なんで急に止まるんですのっ!」



響子は足を止めるなり立石に突っ掛かる。武井がなだめる。お決まりのパターンだ。



「あれ……沢村だよな?」



真っ直ぐ続く回廊の遥か彼方に小さな人影のようなものが映った。



「あなたの野人のごとき視力とは私違いますの!」



「まぁまぁ。とりあえず近付いてみればわかるだろ?」



人影に向かって駆け出そうとする武井を立石が片手で制止した。



「駄目だ」



「はぁ? 何言ってるんですか、先輩?」



「裸だ」



二人は間の抜けた顔をする。頭上にクエスチョンマークが現れたかのようだ。



「沢村は今、真っ裸だって言ってんだよ」



「!?」



「ぶっ!」



グラビアクイーンである沢村の一糸纏わぬ裸体を想像した武井が前屈みになるやいなや、鼻から大量の血液を放出した。



「俺と生徒会長の二人で行ってくる。お前は倉前さんが追い付くまで待機しておけ」



「な、なんで先輩が……う!」



立石に反論しようとするも、鼻から血が止まらない。



「だから無理すんなよ。しかし、香川やアリスの姿どころか先に向かったアスタロトもいないぜ。どうなってんだ?」



「本人に聞けばわかることですわ。早く行きますわよ!」



「おい、待てよ!」



二人は武井を置いて、沢村らしき人影に駆け寄る。



しかし、百メートルほど走り出したところ……沢村までわずか5メートルほどの所でまたもや立石の足が止まった。



この距離からは、さすがに響子でも沢村を確認出来た。彼女は立石の言った通り裸体である。スタイルの良さとその素顔の美しさは響子も舌を巻くほどなのだが、どことやら先日の彼女との雰囲気が違っていた。普段の明るい感じから一転して、冷たい瞳と自信に満ち溢れた表情からは魔性の女と呼ぶに相応しい。



「沢村さん……ですわよね? ともかく、無事で良かったですわ」



響子がレナスのシステム画面から、一枚の毛布をセレクトし、彼女に掛けようと近付いた瞬間だった。



「沢村に近寄るなっ!」



ザンッ!



立石の怒声に咄嗟に足を止める響子。毛布は引き裂かれ、彼女の前髪を止めていたヘアバンドが真っ二つになり、綺麗に整えられていた前髪がほどけた。金色に輝くブロンドの髪が数本ハラリと宙に舞った。



「あ……」



「あ……じゃねぇ! 下がれっ!」



慌てて飛び退く彼女は、沢村の変わり果てた姿を改めて目にした。



背中に生えているらしい真っ黒な翼は蝶の羽のようであり、両手の指先には人とは思えない鋭い爪が伸びている。先程の攻撃は、おそらくその爪によるものらしかった。



さらに、彼女の背後には無数のスケルトンが迫って来ていた。



「沢村さん! どうしたのっ! あなた、操られてるのっ?」



「操られている奴が、操られれてますとか言うかよ!」



立石の言うことにも一理ある。悪態を突きたいとこだが、今はそんな場合ではない。響子は太陽の剣サンブレードと月の聖なる光を浴びたムーンブレードを腰の鞘から抜き放った。



「むっ!」



二本の剣を目にした沢村の姿をした悪魔は、その魔を祓う力に怯む。背後にいたスケルトンの数対が蒸発するかのように姿を消した。



「すげぇな。流石、聖騎士様だぜ!」



「そんな悠長な事言ってられないみたいですわ」



響子の額に汗が光り、前髪が張り付いている。



「冥界から来たりて黒き炎よ。我の前に向かいし愚か者共をその炎の壁で焼き尽くせ! ダークネスファイアウォール!」



ゴウッ!



「ぐあっ!」



「熱いっ!」



二人の3メートル前後から突然黒い炎の壁が現れ、狭い回廊を塞ぐ。その炎の壁はジリジリと二人を挟み込むかのように迫っていた。





沢村……彼女の体を女王紫苑が乗っ取っている事を彼らは知らない。



迂闊に手を出せない中、紫苑が放ったダークネスウォールにより、黒き炎が二人を襲う。




次回 魔道士



今回もご覧頂き、ありがとうございました。

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