第十五話 消えた柚子
「やっぱ、長い黒髪に巫女服は映えるわぁ。ウチが着ぃへんで正解やったわ」
大阪出身の手芸部副部長、羽衣亜紀子が手放しに誉めている。それに対して、巫女服を着た…いや、半強制的に着せられた柚子は恥ずかしさで顔を隠している。
「これなら次の仮装大会グランプリ間違いなしやな。な、みんなもそう思うやろ?」
頷く手芸部メンバー。
「な、なんで私なの?アッコが着るって…」
「その予定やったんやけど、多数決で柚子に決まったんよ。ウチ髪短いやん。柚子っちの綺麗で長い黒髪と比べたらなぁ。ホンマごめん」
その笑顔には反省の色よりも好奇の色が強く現れているのは間違いはない。部員からは部長コールが巻き起こる。
「今度、デニクロのスイートパフェおごるから、大会出てって。ホンマ頼む柚子っち!」
両手を合わせてお願いポーズをとられると押しに弱い柚子はたじろいだ。
その時、
「キャーっ!」
「じ、地震やん。みんな早よ、机の下に隠れや!」
足元から突き上げる大きな地震の揺れで教室内がパニックになる。
「キャッ」
部員達が頭を押さえて机の下に潜りこんだが、柚子は着なれぬ巫女服に足を引っ掛けつまづきそうになる…と、不思議と身体中に微かな違和感を覚えた。それは、足元から柚子の身体中を飲み込む波のような感覚だった。
(身体が…動かないよ。口もきけない…どうなってるの?)
波に飲みこまれる感覚と少し遅れて、自分の身体が透明感を帯びてくる。
(いや、いや…た、助けて…)
やがて、地震がおさまり部員達がおずおずと机の下から出て来た。
「スッゴい地震やったわぁ。みんな怪我とかしてへん?…あれ?柚子っちは?」
亜紀子の声に部員達が教室内を見渡したが、巫女服姿の柚子は見当たらない。
「怖くて教室から出て行ったんやろか?大丈夫やろか?」




