表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
学園英雄記譚 - Lenas (レナス)-  作者: 亜未来 菱人
ライフサーガ編
146/290

第百四十六話 不敗神話崩れる?

前回のあらすじ



愛弓の性格からよく知る一生にとって、彼女を手玉にとることは容易かった。


優勝には興味のない一生にとっても両者リングアウトはまさに好都合。


次の四試合目は名目上準決勝となる。


神楽VS解明。


ダンガムの名で前回優勝者である解明に、神楽はどう立ち向かうのか。

舞台を降りた一生は懐から一枚のハンカチを地面に敷く。ゆっくりと愛弓を肩から下ろし、ハンカチに頭を乗せ横たわらせた。



「愛弓様、このような場所で申し訳ございません。すぐに終わらせますので」



即座に鋭い眼光が解明を捉えた。



「待たせたな、眼鏡クソ野郎。さぁ、かかってきやがれ」



「うひぃ! やっぱりですかぁ!」



一生は拳を握りしめ、突進の構えをとる。受け身の解明は弱々しく両手で防御の構えをとった。



「ふん。来ないならこちらからいくぞ!」



しびれを切らし、獲物を狩る猛虎のごとく駆け出した。



「ちょっと待ったぁ!」



二人の間に入る真っ赤なチャイナ服の眉目秀麗な乙女。そう、彼女こそ真田流古武術現当主真田神楽その人である。



「か、神楽さん!!」



眼鏡の奥に希望の炎が灯る。



「解明はあたしの対戦相手なの。試合が終わったら、どーとでも好きにしていいから、ちょっと待ってくんない?」



(あれ?)



「ふ、愛弓様をお守りして下さった貴女の頼みだ。断る訳にはいくまい。眼鏡、さっさと殺られて…いや半殺しで終わらせてこい」



「結局こうなるのかぁ。分かってましたよ、あはは…」



眼鏡の奥の灯火はいたずら好きな神様に吹き消されたようだ。







彼女は真田流古武術伝承者である。



彼女の蹴りは風神の風よりも早く、その拳は雷神の雷よりも苛烈で全てを穿つ。



一旦、火が着くと誰も彼女を止める事はできない。



それはまさに吹き荒れる一陣の嵐。



「神楽選手、試合開始から息もつかせぬ連続攻撃です。一方的な試合展開と言ってもいいんじゃないでしょうか。まさに鬼神の如き神楽選手の攻撃に、解明選手は防戦一方。しかし、敗者復活戦での彼の動きと比べて違和感を感じるのは私だけではない筈です」



(力を温存しているのか? いや、神楽さん相手にとるべき戦法ではないと思うが)



シャイルの考え通り、既に解明は瀕死の状況と言っても過言ではない。






ボコッ!



踵落としを危うく避けた解明は舞台の床に尻餅をつく。ヒールの踵は容易に床のブロックを粉砕していた。



「敗者復活戦の時の勢いはどうしたのよ。それでも、あんた男なの?」



(頃合いだな)




解明はズボンに付いた土埃を手で払いながら立ち上がり、眼鏡を押し上げた。



「あ、貴女は規格外ですよ。それに僕は知ってるんです」



「何を?」



「レナスの事ですよ。貴女がレナスのサポートシステムにより肉体強化されてる事。シャワー浴びに行ってた間に岬さんから全て伺いました」



「!?」





「えー、解明選手が何やら『レナス』という単語を繰り返していますが、ライフサーガにそのようなシステムがあったのでしょうか? シャイルさんはご存知ですか?」



当然ながら、チェリーガーデンの長でもある桜庭さえも初耳の単語である。ちなみに、この世界で出会ったプレーヤーでレナスシステムの存在を知っているのはシャイルと倉前、それに花音のみの筈であった。



(マズイ! もしレナスシステムの存在が知れ渡ると神楽さん達の大会失格だけではすまなくなる!)



「ん? シャイルさん、具合悪そうですがどういたしました?」



「な、何もない。私もレナ…なんとかやらは知らんぞ」



(やっぱ、知ってるじゃねぇか。所詮、子供(ガキ)だな)






「分かったわよ。解除すればいいんでしょ! じゃあ、解除っと!」



「やめろ、かぐ…ぶ!」



神楽のレナスサポートシステム解除による余波は会場内を真っ赤な鮮血で染め上げた。



鼻血で。



解除した途端、神楽は一糸纏わぬ生まれたばかりの姿になっていたのだから。



「俺、会場に残って良かったよ」



「あぁ、俺ももう死んでも悔いはない」



ガシッ!



男同士の熱き握手。



神楽応援団の固い絆による結束はより強固になった。




「おい! 武井っ! しっかりしろ。タオルやるから、これで拭け」



「あ、すんません…てか、先輩の汗でぐっしょりじゃないっすか、このタオル!」



放り投げたタオルが倉前の顔に覆い被せられた。



「うわっ! 酷い臭いだ。例えるなら三日間履き続けた靴下にゴルゴンゾーラチーズとよくかき混ぜた納豆を…わっ!」



パンッ!



パンッ!



パンッ!



疾風怒涛のハリセン三連が男達の顔面にヒットする。



「あんたら、お姉様の裸を見たわね。万死に値するわ。でも、素晴らしいプロポーション…まるで美の女神アフロディーテに愛されしお姉様…」



「響子っ! しっかりしろっ!」



アスタロトが髪の毛を引っ張らなければ、響子は天に召されていただろう。



「汗臭いタオルの次はハリセンかよ。俺は体張ったアクション芸人じゃねぇぞ…」



一番の被害者は彼なのだが。



「それにしても、解明って奴、やっぱりあいつがベルゼブブじゃねぇのかよ」



ビクッ!



アスタロトの小さな体に戦慄が走る。



「な、なんと申した立石っ! ベルゼブブだと!?」



「あぁ、アリスが…いや、今はサーヴェとかいう敵の隊長になってるんだっけな。ま、いいや。さっき入れ違えで来て参加者の中にベルゼブブがいるらしいって言ってたぜ」



「なんと!」



倉前が間に入り順序立てて細かな説明をする。話の要点が解りやすく、簡潔にまとめられていたおかげでアスタロトは理解した。



「なるほどな。裏で糸を引いていたのは、やはりベルゼブブであったか」



呻くアスタロト。



その時、囁くような小さな声がアスタロトの頭の中に語りかけてきた。



(アスタロト様、アリスです)



(アリスか! 無事だったか。事情は倉前らから聞いた。して、今どうしている?)



アリスの報告はアスタロトを驚愕させるに充分だった。



「分かった。予定通りに動いて。こちらは私が対応する。くれぐれも無茶しないように」



アリスとの会話はレナスシステムの通信とは違い、アスタロト独自の強力な魔力通信である為、皆には会話の内容が聞き取れていない。



だが、素振りだけでもアリスからの連絡だった事は理解できる。



「あーちゃん、さっきの会話の相手はアリスさんだよね」



「色々と込み入った事になっているわね。でもはっきり分かった事が一つだけ。ベルゼブブが誰なのか分かったわ」



皆の表情が険しいものに変わる。



「内藤よ」





「は、恥ずかしかった…さ、やるわよ」



改めてレナスのバトルシステムのみを解除した神楽。顔を真っ赤にさせながらも、闘う気構えは残している。



「これで対等…ですね」



大嘘眼鏡である。



(確かにどちらもレナスとやらのサポートはない。が、僕にはライフサーガで得た経験値がある。筋力、敏捷力、体力ともにこちらが上なんですよ)



「な、なんだ! 神楽さんのステータスを見ろよ!」



「レベル3だと!? いや、パラメーターも俺たちより遥かに下だぜ!」



神楽応援団であるプレーヤー達は、急に貧弱なパラメーターになった神楽に驚きを隠せない。確かに応援団とは名ばかりで、いずれもライフサーガでは上位ランカーのプレーヤー達なのである。



「なんか外野が騒いでいるけど、早く勝負決めるわよっ!」



「ご自由にどうぞ!」



「やけに余裕みたいだけど。じゃあ、手加減なして…って!」



ズベターン!



足元の地面の凹みに足をとられ、盛大に前のめりに倒れる。したたかにおでこを打ち付けた。



「あ、いったー! 何よ、この凸凹は?」



「気付いてなかったんですか? 全部、神楽さんが開けた穴ですよ」



「へ」



当の本人は全く気付いていない。解明は呆れつつも説明を加える。



「貴女の踏み込みの跡です。僕が見たところ、神楽さん…いや、真田流は軸足からかけての踏み込みに力が入って繰り出す一撃こそが常勝の秘密にあると見ました。なので、地面を凸凹にしたんです。レナスシステムとやらの強化で凸凹をものともしなかったようですが、今は床の小さな窪みにもつまずく始末。今の貴女は、まさに、羽をもがれた水鳥に等しいっ!」



ズビシィッ!



突き付けた人差し指が自信満々に伸びきった。



「あ、説明ありがと。ま、気をつけたらなんとかなる…」



バキィッ!



「神楽っ!」



神楽の頬に解明の強烈な右フックが炸裂した。口元から血を流し、ふらつきながらも体勢を整える。



「ほら、サポートがないから今の一撃だけでもかなりのダメージでしょ?」



「あ、あんたねぇ…」



片手で血を拭い、笑みを浮かべつつも解明に鋭い眼差しを送る。



しかし、解明の話はまんざら嘘ではない。周回プレーヤーの解明の右フックは今の神楽にとって必殺技に等しい威力だったのだ。



(まずいわね。次にあの一撃をまともに受けたら昇天しかねないかも)



「大丈夫ですかぁ? ただの右フックなんですけど。あ、辛いならレナスシステム再起動してもらってもいいですよ」



勿論、神楽のプライドの高さを読みきっての挑発である。



「だ、誰が…戻すもんですか!」



「じゃあ、真田の技を見せてください。全て受けてみせますから」



解明は両手をだらりと下げたまま、無防備状態をアピールした。



(そうか! あいつは神楽から真田の技を引き出し自分のモノにしようと…いかん!)



「神楽っ! 挑発に乗るなよ! そいつはお前の…」



しかし、頭に血が上っている神楽に岬の声は届かなかった。



「いいわよ。見せてあげようじゃない。とっておきの奥義をね」



「ほほぅ、そりゃ楽しみです」



解明の眼鏡が太陽の光を反射し、キラリと光った。

アリスによって突き止められた内藤の正体は魔王ベルゼブブであった。



魂を喰らう魔剣ソウルイーターの持ち主であるベルゼブブ。


奇しくもキュイジーヌが身を呈してアリスに知らせる事になったのは、全て運命の歯車に組み込まれていた事なのだろうか。



そして、不適な笑みを浮かべる解明に勝算はあるのか?



真田流始祖以来、不敗を誇る真田流の絶対絶命の窮地に神楽が導きだした答えとは?



次回 答えはひとつ



今回もご覧頂き、ありがとうございました。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ