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学園英雄記譚 - Lenas (レナス)-  作者: 亜未来 菱人
ライフサーガ編
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第百四十五話 剣と拳

前回のあらすじ


特務機関ヘイムダルの一員、黒鉄一生。


彼は愛弓の兄とも言えるほど親しき人物である。


闘いの最中、一生は愛弓を止めるべく一つの案を出すのであった。

「やっ!」



キィン!



「ほっ! 腕を上げましたね、愛弓様」



一生は愛弓の刀を腕の甲で軽く弾くようにしてあしらう。



「手甲ですね。あのタキシードの袖の下は。それも軽くて丈夫な金属によるものだ。おそらくミスリル製でしょうか」



破れた袖の間から鈍く光る物が見え隠れしている。



「へぇ、さすが眼鏡(かいめい)。伊達にニートやってないわね」



「反論の余地はありません」



「しかし、驚くのはあのムラサキのスピードに余裕で合わせている体術だ。生半可な動体視力と運動神経ではないぞ」



岬は感心するように一生の動きを観察していた。



「「そう?(そうですか?)」」



二人の評価は辛口のようだが。





「凄まじいスピードのムラサキ選手。しかし、その速さの更に上をいく黒選手の体捌き。まだ、クリーンヒットの一撃は出ておりません。シャイルさん、この闘いどうご覧になられますか?」



実況に慣れ、まさに本人かの如く振る舞う桜庭。



「うむ。ムラサキのあの手数に合わせている黒の動きは極めて的確だ。おそらく、自ら隙を作ってムラサキに打たせているのだろう。これならば、その場所を一点集中して防御すればよいのだからな。ただ、反撃が出来ないのが難点だが」



シャイルも桜庭としてではなく、実況のクリスとして認識するようになっていた。



「解説のシャイルさん、貴重なご意見ありがとうございました。では、そのあたりに注目して試合を見ていきたいと思います」






「はぁ、はぁ…」



「おや? まだ五分と経っていませんが、愛弓様はお疲れでしたか。そろそろ、お考え改めていただけませんか。大会は諦めて、私と安全な場所にて避難しましょう。その内、勘の良いうちのリーダーが助けに来るでしょうから」



「五月蝿い。私は一生とは違う。もう十八だ! 子供ではない。自分の事は自分で決める」



一向にヒットしない攻撃の手を休め、呼吸に専念し体力の回復を待つ愛弓に対して、余裕綽々の一生は腰に手を当てたまま、彼女の体力の回復を待っているかのようだった。



「うーん、十八歳も法律上未成年なんですけどねぇ。よし! いいでしょう。愛弓様が好きな道をお決め頂くのは勝手といたします」



「へ? いいのか?」




「ただし、今から30秒以内に私に一撃でも攻撃を食らわせる事が出来たら…ですがね。それが出来なければ降参して、大人しく私に従っていただきます」



刀を納め、顎に手をやる愛弓。



「んー、どうするべきかな」



愛弓は迷っていた。いや、迷うフリをしていたのだ。



実は先程の疲労は見せかけであった。力も半分ほどしか見せていない。これは策であった。



(やっぱり、いつもの一生の癖が来たな)



もう小学校の時からお目付け役として、ある時は家庭教師、ある時は体操のお兄さん、またある時は忙しい巧の代わりに授業参観に出席するなど、常に側にいた一生だ。彼の事は嫌でも分かっている。



一生は愛弓が何かを一生懸命にやっている時に必ず間接的に手を貸す癖があった。それは今回のような時間制限を設けた提案みたいな物である。彼は最後の五秒間だけ、ほんの少し手を抜くのである。



「よし、その提案乗った! 偽りはあるまいな」



屈託ない笑みがこぼれる。一生は二十六歳。大人である彼は年齢にそぐわない子供のような無邪気な笑みだった。



「オーケイです。では、ここからは本気でいかせて頂きます」



ドンッ!



「え!?…うっ!!」



三メートルの距離を一気に詰めた一生は、ムラサキの腹部に強烈な当て身を喰らわせた。



「な、なんで…」



「反撃しないとは言っておりませんよ。愛弓様の事は全てお見通しです。どうせ、実力の半分もお出しになっていないのでしょう? だから、最初からスポーツも勉強も最初から全力を出してくださいと言っているのに。いつも制限時間ギリギリにならないと力を発揮されないのですから」



「あ、そう…か…」



(一生が手を抜いてたのではなく…私が普段から力をセーブしてたのか…)



「困った人だ。ん、しょっと!」



気を失い一生の肩に抱えられる愛弓。



彼はそのまま舞台を降りる。



「おや? 勝利宣言を上げておりません。このまま、二人共場外に降りた場合…」



「カウント9までに戻れば二人同時なので罰則はなし。だが、カウント10で両者リングアウトだな」



1、2、3…



機械音声によるカウントが告げ始められた。



…9、10!



「カウント10入りました! 両者リングアウトです。これはなんという事でしょう! unbelievableな結果になってしまいました」



「これで両者敗退。準決勝は不戦勝。つまり、次の四試合目の勝者が決勝進出となるわけだ」




愛弓の一枚上手であった一生。


シャイルが言うように両者リングアウトにより準決勝の一つが不戦勝、つまり次の四試合目勝者が実質決勝進出となる。



神楽と解明、敗者復活戦にて手を合わせた二人がお互いの目的の為に凌ぎを削る闘いを行う事になる。


次回 不敗神話崩れる



今回もご覧頂き、ありがとうございました。


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