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学園英雄記譚 - Lenas (レナス)-  作者: 亜未来 菱人
ライフサーガ編
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第百四十一話 タイムリバース

前回のあらすじ



フランソワの恐るべき能力エンドオブを受けた岬。


フランソワ…結実ゆみは、エンドオブが覚醒した当時の記憶を思い出していた。


そして、今、妹を傷付けた内藤の仲間である岬を手にかけようとしていた。

「不様ね。間もなく貴方はきれいさっぱりとこの世から消えてなくなるの。ちなみにこの能力に解除法はないわ。一度発動したら、あたしにももうどうする事もできないの。一分だけ猶予をあげる。残された時間を最後のお別れに使いなさいよ。さようなら色男のお金持ちさん」



フランソワは余裕たっぷり皮肉たっぷりに言葉をかけた。



「そんなっ! 岬っ!」



神楽は舞台を上がろうと手を掛けようとする。しかし、岬は振り返り笑顔でゆっくりと手を上げて制止した。



「神楽、さっきの内藤さんの話を聞いていなかったのか? 第三者が戦闘中に介入するのは試合放棄に見なされると」



「な、何を言ってるの! だって、岬の体は…」



岬は再びフランソワに向き合う。



「お別れの挨拶はもういいの?」



「お別れ? いや、それはないな。残念ながら君の能力は私に通用しない。相手が悪かったと諦めてほしい」



フランソワは表情に出さなかったが、目の前の男の落ち着き払った態度に恐怖を感じていた。



(はったりよ。もう10秒もすれば消えてなくなるのよ。気でも狂ったんだわ…)



「タイムリバース!」



「え?」



岬の体に色が戻ってくる。会場にいるプレーヤー達が驚きの声をあげた。



(あいつ、何をやった? フランソワのエンドオブが破れるわけはない! あの力はゲーム外の能力なんだぞ!)



桜庭は舞台の上ではっきりとした輪郭を取り戻した岬を、稀有の存在として睨み付けていた。



シャイルはそんな桜庭を横目で見ながらほくそ笑む。



(神楽さんの言ってた事は本当だったのね。時を操る人間なんているわけがないと疑っていたけど)




しかし、すっかり元通りになった岬と対峙するフランソワの表情に変化はない。



「あたしの力、味わいなさいな! エンドオブ…って、こっち見なさいよ」



「あぁ、さっき存分に味わったので、もう結構だ」



明後日の方角を見ながら答える岬。



(味わった? 何を言ってるの? あたしのエンドオブはまだ発動していないし、こいつには見られていない筈。まさか、内藤が教えたの?)



慌てふためくフランソワに説明するよう語りかける。



「君は先程の能力…確かエンドオブだったか。その能力は人間の存在を消してしまうという恐るべき能力だと思う」



(知ってる! あたしの能力を!?)



「しかし、相性があまりにも悪かった。私の能力は時間を操る能力でね。君だけは覚えていないだろうが、私を中心に半径3メートルの空間の時間を少し巻き戻した」



会場にどよめきが起こる。時間を操る能力。そんな能力はこのライフサーガにおいてあらゆる職業クラスさえも持ち合わせていない能力である。



ガタッ!



「わっ!?」



勢いよく立ち上がる桜庭にシャイルは椅子から転げ落ちそうになる。



(まさか、あの男。フランソワと同じマジもんの異能力者かっ! 神楽といい、そんな奴達がこの世界に何をしに集まってるんだ?)





「何を言い出すかと思えば。そんなハッタリが通用するとでも? 大方、ナイトハルトの入れ知恵でしょう。わかったわ。ひとつ賭けをしようじゃないの。もし、あんたがあたしのエンドオブを受けても平気であるなら信じようじゃない」



理解し難い説明に苛立ちを覚えたフランソワは明らかに岬に不利な条件を突き付ける。無論、承けない事は承知の上だ。この交渉の利点は、反論しようと試みる岬が自分に視線を移す事だ。フランソワの真の目的は、その無防備な岬にエンドオブをかける罠であった。



だが、フランソワの予定はあっさり覆された。



「受けよう」



再びどよめきが巻き起こる。



「さぁ、いつでもやりたまえ。今度は君にも理解出来るよう意識を保てるようにしよう」



岬はしっかと目蓋を開き、フランソワの瞳を見つめた。



「ば、バカじゃないの? いいわ、後悔しつつ消えててしまえ! エンドオブ時雨岬っ!」



岬の体が再び色を失ってゆく。



「スエカリクモドンナデマルキデイカリガミキ」



「は?」



(何かの魔法の詠唱? いや、この会場内ではライフサーガの魔法は結界障壁により発動できないはず。やっぱり、気が狂っていたんだわ)



フランソワは安堵し、一歩踏み出すと岬を指差し勝利を宣言しようと思ったのも束の間、体に異変が生じるのを理解した。



上げようした腕が降り、足が一歩下がる。



流れる時の中で周りの風景はそのままに、自分と岬だけが逆行している。



(これはハッタリじゃない!)



そして岬の口からはっきりと聞こえる声。



「キミガリカイデキルマデナンドモクリカエス」

フランソワのエンドオブをタイムリバースにより打ち破る岬。


時を操る岬だからこそ回避できたのだ。


しかし、フランソワとの戦いはまだ始まったばかりである。



次回 思わぬ勝利と敗者の決断



今回もご覧頂き、ありがとうございました。

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