彼女は、激怒した
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「あれ?」
シャロを慰めてから、会場に戻ろうとしていたその時、身を潜めているキャロを見かけた。
こちらには、気が付いておらず、思わず悪戯したくなったので、ばれない様に接近する。
そして、
「キャロ、何してんだ?」
「うわぁ!、シ、シオンにぃ!あっ」
俺に気が付いて、驚きの声を上げたキャロだが、俺の口を押さえて何かから、隠れるように一緒に身を潜めた。キャロの様子から、ただ事ではないのが伺える。直ぐにテレパシーを使って声が出ないように会話を試みた。
『キャロ、どうした?』
『それが、少し外の空気を吸おうと外に出てきたら、ルーちゃんとアンリって人が一緒に居るのを見かけて、後を追いかけて来たの。そしたら、こんな人気のないが所に来て、私もビックリだわ』
俺に伝えながら、ある一点を指差すキャロ。その指の方に視線を向けると。確かにルリとアンリがいた。
さっきにキャロの声が聞こえていたのか、アンリは周りをキョロキョロしている。幸いこちらには、まだ気が付いていない。ルリの方も確認するが、やはり気が付いていないみたいだった。
そんな2人を見ながら、俺とキャロは、聞き耳を立てる。何か話しているのは、アンリのほうだった。
「いきなり、連れ出してごめんね。ルリさんに話しておきたい事があって」
「その用件は、何?」
「ルリさんの事を、1試合目からずっと見ていたよ。とても可憐で美しかった。そこで、次の試合僕が勝ったら、僕の婚約者になってくれないか。僕はこう見えても良い所の出でね、身分的にも問題ないと思うし、どうかな?」
(何言ってんだあいつ)
そう思うときには自然と割り入ろうとしていた。だが、それをキャロが必死に止める。そこで我に返り、2人の様子を、特にルリの様子を確認する。
「ごめんなさい。私付き合ってる人がいるので、貴方と婚約する気はありません」
申し出を、申し訳なさそうに断るルリ、だがその目は一切の感情を映していなかった。アンリは断られると思っていなかったのか、一気にルリとの距離を詰める。
「その恋人って言うのは、誰なのかな?」
「えっと、シオンって言って。解説をやっている子です」
ルリが、俺の名前を出した瞬間、アンリは勝ち誇ったような表情を見せたのを、俺とキャロは見逃さなかった。
「...そうか、彼なのか。なら、やっぱりルリさんとは、不釣合いだと思う」
「それは、何でですか?」
「彼は、この新人戦の本選には出ていない。ルリさんよりも実力が下なのだろう。それに僕は、調べたんだ。彼は予選にすら出ていない。腰抜けだ。君とは不釣合いだよ」
アンリの言葉を聞き、今度はキャロが飛び出そうとする。それを慌てて止めながら、言われっぱなしは癪なので、俺が出ようとしたが、そこでルリから、異様なまでの圧を感じて、その場に止まった。
「シオンが私よりも下?シオンが腰抜け?貴方見る目がないんですね。わかりました、次の試合でもし私に勝てたなら、いや、私に傷を付けられたら、私はあなたと婚約でも貴方の奴隷にでもなりましょう」
「ほ、本当なのか?!」
「ただし、負けたら...今度一切私に、近づかないでください」
ルリの放つ異様な圧に、アンリも黙ってしまう。そしてそのまま、ルリは会場に去ってしまった。その後を付けるようにアンリも会場に戻る。
「シ、シオンにぃ。なんか凄い事になったわね」
「ルリが、あそこまで怒ってくれるのは、嬉しいけどな」
こうして、俺とキャロも少し時間を空けた後。会場に戻っていった。
「さぁ、時間です!すでに選手は、揃っております。ステラ学園2位、魔王の娘のルリ選手対、氷を使う美少年。アンリ選手です、シオン君、この試合どう見ますか?」
「正直、ルリ選手の圧勝だと思いますよ」
「へぇ、それは何故。確かにルリ選手は強いけど、アンリ選手だって相当だと思うよ」
凄く興味深そうに、俺を見つめるカスミ先輩。理由を早く聞きたくて、しょうがないんろう。
ルリには、今までの2試合と明らかに違う所がある。まぁ先輩みたいに気が付かない事もあるっぽいけど。
「今回のルリは、初めから〔魔王:覚醒状態〕なんです。正直この状態のルリに勝てるとは、思いませんね」
「なるほど...アレス選手との試合で見せた最後の状態なんだね。これに対して、どう戦っていくのか、アンリ選手が気になる所ですね」
いい感じに言葉を交えて、場が整った所で、2人の選手の準備も終ったらしい。お互い開始位置に付き、レイピアを構えるアンリといっけん無防備に立ってるだけの様に見えるルリ。
「では、始め!」
「〈氷の世界〉」
開始合図の直後、アンリ選手は魔法を使う。そしてこの会場全ての温度が下がっていくのがわかる。
一応、観客席や俺とカスミ先輩がいる場所には〈障壁〉があり、魔法や飛んでくる物の二次災害が出ないようになっている。この温度も一定以上に下がらないようにはなっていると思うが、それでも鳥肌が立つぐらいには、冷えている。
そして選手達の場所は、目に見えるぐらいの青に染まり、温度はとっくにマイナスを超えているだろう。足元も氷、会場を作るという点では、アンリ選手が上に行ったといっても言い。
「この空間は、僕の空間だ。ルリさんはもう何もすることができない」
アンリ選手の声がやけに響く。そしてゆっくり一歩ずつルリ選手に近づいていった。対するルリは一歩も動かない。
「先手を打たれたルリ選手、アンリ選手の前の作戦が見事に決まったのか」
両者、互いに腕の届く距離まで近づいた時に、それは起こった。
レイピアを構えて攻撃を行おうとしていたアンリ選手の〈防壁〉が、壊れたのだった。
「しょ、勝者、ルリ選手!!」
あまりに異常なその光景に審判すら、合図を忘れかけていた。当然アンリ選手は何が起こったのかわからず、だけど自分が負けた事はしっかり認知していた。
「シオン君、これは一体?」
「おそらくですが、温度の問題でしょう。生物は寒すぎる環境にいると凍死する。ルリ選手はアンリ選手と、同じタイミングで〈氷の世界〉を発動し、アンリ選手の体に影響が出るまで温度を下げた。結果それを〈防壁〉が感知して、アンリ選手の変わりに受け続けて耐えられなくなったんだと思います」
正直、ルリの魔法のタイミングを全く見ていなかったから、これが正解なのかは、わからない。だが考えられるのは、これしかなかった。
ここに来て、今まで以上に圧倒的な試合を見せられ、観客は大盛り上がり。声援と拍手が送れられる中、ルリは静かに会場を後にした。
そして本日残る試合は、2試合になったのだった。
カスミ「次の試合は、第3位決定戦となります」
シオン「シャロ選手対アンリ選手ですね」
カスミ「アンリ選手は、戦えるんでしょうか?」
シオン「さぁ、どうでしょうね」




