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五大学園祭

「ハァァァ!〈焔の嵐(ファイヤシュトゥルム)〉」


「おっと、〈魔法障壁〉」


いつもの鍛錬、ルリが家に来てから基本的には、一緒に鍛錬することが多い。

そして最後にはいつも軽い模擬戦を行っている。


「どうしたルリ、最近やけに気合入ってるな」


「ハァハァ。まぁ、ちょっとね」


息を切らしながら答えるルリ。普段なら、こんなになるまでやる事はないが、ここ最近のルリは違う。

正確には、ルリが魔族の土地に戻ってからだ。


「そうか、とりあえず部屋戻るか」


「うん」


お互い息を整えながら部屋に戻る、ルリはいつもの様に明るい笑顔を浮かべているが、どこかで何か迷ってるようにも、だけど俺に一歩踏み込む勇気は、なかった。





「頼むシオン君!この通りだ!」


「いや、頭下げられても...」


学園に来ていきなり呼び出しをくらったと思えば、学園長は俺に頭を下げてくる。

その理由は1つ、今月行われる、五大学園祭の新人戦に出てほしいからだ。


五大学園祭はとは、サウスの中に存在する。ステラ、シューラ、プルーラ、ヒメラ、イリトヒラ、この五つの学園が王都サブメラに集まり。開催される年に1度の大規模学園行事である。ちなみにサブメラの学園はステラ。

冒険者になる為の、五つの学園が集まると、必然的に戦いが起こる。それを大会形式にして行うのが。名誉ある戦い(ドュエルグランツ)と言う大会。


ドゥエルグランツは新人戦と、グランツ戦に分かれており、新人戦はその名の通り、その年の新入生だけが参加できる戦いになっている。

基本的に各学園から3人の代表者。そして前年の優勝した学園から、もう1人の、計16によるトーナメント戦になっている。

去年は俺達の学園、ステラが優勝していて、その前の年もこの学園が優勝している。学園長からすれば3連覇を望みたいのだろう。


だが正直、俺が出るのは、よくない。この世界の年齢で言えば13だけど、ステータス表記はおかしくなり、今では半神でもある。同年代でまともに俺と戦える者はまずいない。つまり俺が出れば優勝は確実な物になる。

だがそんな試合は、誰も望んでない。イベント事をつまらなくするつもりは、俺にはないのだ。


「学園長、言ったじゃないですか、シオン君は出ないと思うって」


フォルテ先生が学園長を説得しようとしてくれてる。だがそこで引き下がらないのが学園長!フォルテ先生のことなどお構いなく、俺に詰め寄って来る。


「お願いじゃシオン君。何でもするから」


「正直、俺も出てみたいんですけど、実は...」


「な、何があるんじゃ」


ゴクリ、と学園長が息を呑む。正直おじさんに詰め寄られても、キモイと言うか、嬉しくはない。なるべく深刻そうに、そして残念そうに語る。


「前回の、合宿の時に、ちょっと怪我してしまって、未だに治りきってないんです。時間をかけてゆっくり治すしか手がなくて、こんな状態で試合に出ても...と言う事なんです」


真っ赤な嘘である。怪我なんてしてないし、むしろ絶好調でもあるけど、出たくない為に全力の演技で学園長に訴える。それを見て学園長が若干うろたえる。

そして、諦めるようにため息をついた。


「それじゃ仕方ない、すまなかったのう。無茶言って」


「いえ、来年は出る予定なんで。それじゃ失礼します」


俺は学園長に一礼して、この部屋を後にした。最後の方に何か呟いてる気がしたが聞こえない振りをして出て行った。


「やぁ、シオン君探したよ」


「あなたは、カスミ先輩!」


教室に帰る途中、廊下で先輩と出会う。先輩はニッシッシと笑いながら、俺の傍まで駆け寄った。


「君を探しに教室に行ったら、学園長室に行ったと聞いてね、ここで待たせてもらったよ」


「そうだったんですか。わざわざすいません。それでどんな用件ですか?」


俺とカスミ先輩はそこまでの接点がない。と言うかまともに話した事がなかっただろう。情報部だし何かインタビューでもされるかと思ったが、そうでは、ないらしい。


「お願いがあってね、今月ドュエルグランツがあるだろ。それの試合で私が実況をやる事になったんだ」


「へぇ~実況ですか。凄いですねそんな大役任されるなんて!」


まぁ、カスミ先輩マシンガントークだし。きっと問題はないだろう。それでもそんな大役を任されるなんて本当に凄いと。素直に尊敬する。

だが、肝心なお願いってなんだろう。そう思っているとカスミ先輩が続けて話しだした。


「実は、実況者に選ばれたものには、解説者を決める権利があって。君に解説者をやって欲しいのだが、どうだろうか?」


正直悩む、解説者として誘ってくれるのは嬉しいのだが、俺は人前で話すのが得意な方ではない。だがこれも良い経験になるかもしれない。そう思い受ける事にした。


「分かりました、やらせてもらいます」


「ほんと!よかった~、断られた時は脅そうかと思ってたから」


...その場の空気が凍った。カスミ先輩は「アッ」と言いつつ、しまったみたいな顔をしていた。

俺はジト目でカスミ先輩を見続ける。


「いったい、どんなネタで脅そうと思ったんですか?」


「ふふーん、知りたい?それはね、君が半神だって、言いふらしちゃうぞって事」


その言葉を聞いてすぐさま強化魔法を掛ける。そして一瞬でカスミ先輩の背後を取り、首元に刃物を押し当てる。


「その話し詳しく聞きましょうか」


この声に感情はなく、ただただ冷め切っている。ただの学生が、ただの情報部の1人が知っていい内容じゃない。そして神の存在を知っている事から、邪神の使いだと予想し、今の行動に至る。

だが意外な事に、カスミ先輩は両手をあげて、戦う意思はない事を表してきた。


「わかった、話すから。その危ない物はしまって、ね。」


宥められ、仕方なく刃物をしまう。俺から解放されて「ふぅ、怖かった」と呑気に言ってる、カスミ先輩を見て、何となく悪い人じゃない風にも見えた。

だからと言って、開放するわけでもなく、近くの空き教室に入り、俺はカスミ先輩とお話をするのだった。

ルリ「シオン強すぎ」


キャロ「それは、シオンにぃだからね」


シャロ「兄さんは、化け物...いや神」

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