表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/216

貴族のプライド

「キャァァァァ」


祠から、近くの場所で悲鳴が聞こえた。

この悲鳴を聞き真っ先に動いたのはノアだった。


「ノア、先に行くな!まだ状況すら掴めてないんだぞ!」


「あれは、学生の声が!俺達Sクラスの人間が助けに行かなくてどうする!!」


木や草が今はすごく邪魔に感じる。まるで俺達の行く道を邪魔するように生えている。

悲鳴が聞こえた場所に着いた時、俺たちは衝撃的なものを目にした。


「〈結界〉だ、とりあえず張り続けろ!!」


「ダメ!張ってもすぐ壊される!!」


「リーダーどうする!!このままじゃ〈結界〉が尽きるのも時間の問題だ!!」


(おびただ)しい数の魔物と、それに囲まれながら、必死に結界を張り続ける、学園の生徒。


あれは恐らくAクラスの生徒だ。Aクラスじゃなければ、俺達の年齢で、あの数の魔物から結界を張り続けるのは、不可能だと思う。


最後に叫んでた奴が言ってる通り、〈結界〉が突破されるのも時間の問題、だがそれは俺達がいなかった場合だ。


「「〈風の刃(ウインドカッター)〉」」


先頭にいた俺とノアが同時に魔法を放つ。全部とは行かないが、結界付近と1部の魔物を吹き飛ばす。

一瞬だけ道が空いて、その隙間を縫うように、俺達は結果の中に入った。


「「〈結界〉」」


できた隙間は、一瞬で他の魔物が補い、また結界付近は魔物が群がる。

だが、ルリとシャロが〈結界〉の補強をした事によって、先程までと違い、突破されることは無い。


「君達、大丈夫か?」


「ア、アレス様!?どうしてここに!いえ、それよりも助かりました!」


先程リーダーと呼ばれた生徒がアレスと短く言葉を交わす。

結界の中には負傷者もいて、あと少し来るのが遅くなれば、生徒は死んでいてもおかしくなかった、状況だ。


「とっりあえず、回復魔法かけてくね〜」


アレスの護衛である、ハナが状況を見て即座に重傷者から回復魔法をかけていく。範囲魔法ではないが、1人1人、丁寧にそして迅速に治療していく。だが中にはハナの魔法で完治しない生徒もいて、そうな生徒には、どこからか取り出した包帯やらガーゼやらの治療道具で完璧に処置をおこなっていった。


「アレス様、助けていただきありがとうございます。ですが私のクラスにはまだ傷を負った者もおります。ですので救援を呼んで来てもらえないでしょうか?」


Aクラスのリーダーらしき男は、アレスに頭を下げている。だがこの状況、俺達が離れれば確実にAクラスは持たないだろう。それは、ここにいる誰もがわかっていることだと思う。


「貴様は馬鹿か?いいや馬鹿だ!」


そんな中、ノアが声を張り上げAクラスのリーダーを罵倒した。だがそれはただの罵倒ではない。


「今この状況で、私達がこの場を離れたら、確実に貴様らは死ぬぞ。いくらハナが回復魔法で、傷を癒したからといって。私達が救援を呼んで戻ってくるまで、貴様らでは耐えられない。分かってるのか?」


事実なまでに、ノアの言葉にリーダらしき男は、何も言えなくなっている。


「ノア様、私達は確かに死ぬかもしれません、ですがこの状況、いくらノア様達Sクラスの人がいても結界が壊されるのは、時間の問題です。この数はいくらなんでも貴方達にも倒しきるのは辛いでしょう。ですが貴方達なら、この包囲網を脱出する事もできる。だったら強い者がこの場を脱出し。弱い者が残る。それ以外の選択はないはずです」


リーダーと思わしき男の目はすでに覚悟が決まっているようで、他のクラスの子たちも全員が納得しようとしている。

まぁ結界は、ほぼ確実に壊れないし。その気になればSクラスの1人を脱出させて救援を呼びに行かせることも不可能ではないが。リスクは伴う。


その覚悟に俺とかは、何か言う事は出来ないが、そこで折れないのが貴族ノアの良い所だ。


「確かに、私達ならこの状況から脱出する事はできるだろう。だが、私は貴族だ、私達を支えるお前達を放っておいてまで逃げる、クズではない。ましてや見捨てるなど断じてありえない。それに私達はSクラスだ、私含めて、たかが13歳の子供だが。Sクラスには、規格外も存在する。まぁ、任せておけ。この状況を何とかする」


ノアの熱い演説にAクラスは歓声を上げる。正直俺も、少し見直した。

最近は、俺に服従しすぎていて、貴族らしさが皆無だったが。根っこの部分は良い貴族なんだろう。


「シオンさん、秘術を使います。時間を稼いでくれませんか?」


さっきまでのカッコイイ喋り方はどうしたのか、急にいつもの口調に戻っている。


「おいおい、貴族様は貴族様らしく、平民にスパッと命令してくれよ。さっきまでの演説が台無しだぜ」


「シオン...さん。わかった。秘術を使う。シオン時間を稼げ」


「了解、貴族様」


ノアが詠唱をし始めて俺は結界の外に出る。そのついでに他のメンバーにも指示を出していく。


「ルリ、キャロ、2人は俺と一緒にザコ処理を頼む。結界の中に入れるなよ」


「「了解」」


「シャロは結界の維持、将太、リティスさん、ベル、ヘラは万が一、結界の中に魔物が入ったら対処してくれ」


「分かったよ~」


「了解っす」


「わかったわ」


「任せてほしいです」


「任せてください」


本来なら、俺とルリが広範囲魔法で倒していけば、もっと効率よく、もっと早く終るとは思うのだけれど。今回はノアの心意気を買って、俺達が使われ役に回る。


「アレス様、よいのですか?このままではノア様に見せ場をそう取りされてしまいますよ」


「そうだなハンス、こうなれば僕も秘術を使うしかなさそうだ」


「アレス様、やっちゃってー」


「アレス様、サポートは任せてください」


アレスも、ノアに感化されたのか。秘術の詠唱をし始めた。

王族の秘術は見るのが初めてなので、少し楽しみではある。


魔物の数は多いがその中でも特徴的なのが【翼竜(ワイバーン)】の変異種と思わしきドラゴンと、ゴブリンの進化種だと思われる。ゴブリンキング。おそらくは、この2体がボス格だろう。

つまりこの2体さえ倒せば、他の魔物はバラけるかもしれない。





「すごい!」


「これが、Sクラスの1位と2位と3位」


「これならもしかしたら...」


シオン達の動きを見ながら、Aクラスの生徒達は戦慄していく。Aクラスの人間では、倒すのがほぼ不可能な魔物達を、次々と倒していく。

それを見せられれば、自分達は生きて帰れるのでは、という希望も生まれてくる。

だが一向に魔物の数が減るようには見えなかった。





「ノア!アレス!2人とも詠唱し終わったら。でかい奴を各自で狙え。そうすればこの群れも消えるかも知れない!」


魔物を倒しながら、詠唱がもうそろそろ完了しそうな2人に指示を出す。今回はおいしい所を2人にやる。

俺の言葉が聞こえて、2人とも首を縦に振る。


その間も休まず魔物を倒し続けた。だがどれだけ魔物を倒しても、新たな魔物は次々と押し寄せてくる。流石にキリがない。俺はまだやれるが、ルリとキャロが心配になってくる。


「シオン達!退け!!」


詠唱が完了したノアが、俺達に指示を出す。俺、ルリ、キャロはその言葉を聞いた瞬間その場を脱出。結界の中に戻った。


「くらえ、帝王級の炎(カイザーフレア)!」


王族の一撃(キングパニッシュ)


ノアとアレスの放った、最大火力の魔法は、【翼竜(ワイバーン)】の変異種と思わしきドラゴンと。ゴブリンキングに直撃した。ドラゴンの方に〈帝王のカイザーフレア〉が当たり炎に包まれながら、ドラゴンが絶命するまで、燃え続け。ドラゴンは灰に変わっていった。


アレスの放った魔法は、流石王族の秘術というべきか。再生力が恐ろしく高いゴブリンキングを縦一直線、に真っ二つにしてそのまま絶命させた。


「ハァハァ、これで」


「ハァハァ、魔物も退くか?」


肩で息をしながら魔物の動きを見ている、ノアとアレス。あれほどの魔法を使ったのに意識があるだけで、物凄い事だと思う。普通の人なら発動すら出来ずに倒れるから。


ボス格が消えた事で、今まで集まっていた、魔物が森の中に消えていく。普段なら1匹でも多く仕留めるのだが、今はそれどころでもなかった。


「アレス、ノア、お疲れ。2人のおかげでみんな無事に帰れそうだよ」


「ハァハァ、何言ってるの、シオン君ならもっと手際よく出来ただろう?」


「そうだぞシオン、お前ならできた筈だ」


2人は軽く俺を睨んでくるがその表情は、清清しいものだった。

まぁ確かに、出来ない事もないとは、思うけど。


「Sクラスの皆さん、ありがと」


「あっれ~、生き残りがいるぞ~」


「ワレノ、シモベヲ、ホフッタノハ、ナンジラカ」


リーダー格の男がお礼を言おうとした時、森の中からまた別の知らない奴と、1匹の魔物が現れた。












~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


魔法解説


風の刃(ウインドカッター)〉初級の風属性魔法、目に見える風の刃を目標に飛ばす。


帝王の炎(カイザーフレア)〉ノアとその家族が使える超級、炎属性魔法で独立(オリジナル)魔法、元の魔法は不明。


王族の一撃(キングパニッシュ)アレスたち王族の者が使える秘術。無属性、帝王級で本当の独立(オリジナル)魔法。その威力は大抵の物なら真っ二つにするほどの威力。

将太「シオン君、いつ見てもパネぇっす」


ベラ「本当の意味での規格外、です!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ