封印の祠
「それでシオン、考えってのはどういうものなんだ?」
合宿2日目の朝、森に入る前に昨日説明してない事が何なのか、アレスが聞いてくる。
と言っても、そこまで複雑な事は俺も考えていない。
「ひとまず、全員で魔物が封印されてた場所に行く。それで周囲にその魔物らしき奴がいれば、俺とルリで対処する。皆は、他に魔物がいなければ、シャロの張る結界の中に居てくれていい、だけど周囲に魔物がいるなら。各自で身を潜めるなりして欲しい」
「なんと言うか、思ってたより普通だな、シオンの事だから。もっとぶっ飛んだ事を言うのかと思ってた」
「確かに」×7
「お前ら」
ルリと妹達とリティスさん以外がアレスに同調した。俺をどんな風に見てるのか、よくわかる。
もういっそ、想像通り無茶な特攻でもさせようかな?
「シオン、時間も勿体無いし、早く行きましょう」
「そうよシオンにぃ、何が起こるかわからないのだから」
「早く行こうよ~」
ルリ達に急かされ、さっそく移動する事にした。俺って尻に敷かれるタイプかも、そんな風に思ってしまった。
改めて、行くメンバーの確認。今回の要になるのは、俺とルリ、ティターンさんの話では俺達2人以外、封印されてる魔物を倒す事は出来ないと言っていた。
俺の妹達、キャロとシャロ。キャロは単純な近接戦闘においては、俺と互角、そしてルリ以上の力を持っている。シャロは魔法においては、俺を除いてクラスで1番か2番に才能がある。魔力量ではルリより少ないが、それを補うぐらいの、センス技術を持っている。
あくまで予想だが、2人もその魔物に対しての有効な戦力になるのと、思っている。
アレス、ハンス、ハナ、アリン、この4人は流石、王族とその護衛なだけあって、俺達に比べると劣るが十分な戦力である。俺が懸念しているもう1つの事態、それが起こればこの4人にも戦ってもらうしかないだろう。というか4人以外に他のクラスメイトも戦ってもらわなければ困る。
将太はこのクラス唯一の転移者、そして何かしらの能力の持ち主。花蓮さんが〔自然治癒〕を持っているように、将太も何か持ってると思うけど、俺はその能力を聞いてない。
まぁ将太は、何かあったときの切り札要因だと思ってる。
ノア、長い詠唱はネックだが、それと引き換えに、強力かつ広範囲の魔法〈帝王の炎〉を使える。まぁ使わせる場面は、ないと思うが。これも切り札って事でいいと思う。
ベルとヘラ、この2人はクラス順位だけを見るなら、一番下にいるが、学園の成績と実力は一緒ではない。過去に、シャロの〈索敵〉の中、ギリギリまで接近した事を考えると。その隠密能力はクラスでもかなり上位に入ると思う。もし例の魔物に対しての攻撃手段があるのなら、先制を2人に任せたい。まぁ攻撃手段があるのなら、だけど。
そして最後にリティスさん、正直、どんな魔法を使えるのか、どれぐらい戦えるか分からない。〔完全鑑定〕を使えば魔法やステータスは、分かるけど。俺は基本的に〔完全鑑定〕では、見えないようにしている。そこまで見ると気が引けるから、まぁ時と場合にもよるけど。
そんな訳で、リティスさんについては分からない事が多すぎるが。それでもこの森について一番詳しいのはこの人だし、仮に俺達だけで対処できない場合、逃げ道や裏道を、リティスさんなら教えてくれる。
魔物が封印されてる場所までの道のりは、何事もなく安全に進めた。周囲に魔物がいない事や、封印されてる場所までの道が整備されてたことに、若干の疑問はあったが。
リティスさん曰く、魔物がいないのは、もともと封印されてる魔物の気配が、強力で他の魔物が近づけなかったらしい。仮に封印されてる場所から、魔物がいなくなっていても。その気配自体はしばらく残るらしい。
そして道が整備されてるのは、フェータの精霊達が一定の時期事に、封印の確認をするため、整備し田らしい。
「着いたわ、魔物が封印されてる場所。別名封印の祠。でも...」
ようやく俺達は、魔物が封印されてる場所にやって来れた。別に魔物と戦ったわけではないけど。歩いてくると意外と距離があった。
そして、魔物が封印されてる、であろう所は、祠みたいになっていて。だから別名が封印の祠なのだろう。
最初俺は、リティスさんが言葉を止めたい意味が理解できなかった。そしてリティスさんの視線の先にある、祠を見て分かった。この祠、すでに破壊された後で、中に魔物らしきものがいない。
つまり、ティターンさん予想は合っていて、この森のどこかに封印されてた魔物が潜んでいる。
「シオン、これって」
「分かってるよアレス。どうしたものか」
この状況に気づいたアレスが俺に尋ねてくる。だけど魔物は〈索敵〉では見つけられない魔物。今はどうしようもない。
「リティスさん、魔物がどんな魔物か、わかりませんか?」
「ごねんなさい、それは分からないんです」
魔物はかなり前に封印された魔物。流石にリティスさんでも分からないか。
完全にお手上げ状態の時にキャロがある物を見つける。
「シオンにぃこれ見て」
「!?これは、足跡?」
祠近くから、移動してある足跡があった。見た感じ動物のような足跡で四速歩行の生き物。この周囲には魔物が近寄れないし、間違いなく封印されてた魔物の物だろう。流石にこれだけで魔物は分からないが、情報にはなる。すぐに足跡を〔完全鑑定〕しようとしたのだが。
「キャァァァァ」
祠から、近くの場所で悲鳴が聞こえた。
何事かと思い、俺達全員は、祠から離れその場所に向かう。
そこで俺達が見たものは...
シオン「道は思ったより綺麗だな」
キャロ「なんだか寒いわ」
シャロ「もう帰りたいよ~」




