一方その頃
今回は、合宿1日目の、ルリたちパートになります。
視点は後から付いて行って、合流したヘラちゃんです。
私はヘラ、組織{ガーディアン}所属の魔族で、ルリ様達のクラスメイト。
現在、合宿中でルリ様達と一緒に行動を共にしている。
本来私は、ルリ様達と一緒に行動するのではなく、影からお守りするのが役目なはずなのだが、いつもルリ様と一緒に居るはずの、シオン様が今日は別行動で、シオン様から「ルリ達の事を頼む」と、目で訴えられ一緒に行動することになった。
そんな私は、ちょっとだけ後悔している事がある。
それは、
「目の前上空に【翼竜】3体、同じ方向【レルウルフ】5体来てるよ~」
「分かったわ、【翼竜】は私がやるから、キャロちゃんは【レルウルフ】をお願い」
「了解よ、シャロちゃんは、そのまま索敵と、ヘラちゃんの安全を確保しといて欲しいわ」
「は~い」
目の前で行われる戦闘は、本当に私と同い年の子が戦ってるのか、目を疑うものだった。
組織に属している以上、アギラードさんや、他の上司にそれなりに戦闘も仕込まれてるのだが。そんな次元じゃない。
【レルウルフ】1体だって、Cランクあり。【翼竜】はBランクの魔物だ。普通の冒険者だって、1人で戦おうとは決してしないし、ベテランの冒険者でも荷が重いだろう。当然、私達学生なら、この状況に遭遇すれば、逃げられること事態が奇跡と言って他ならない。
もちろん私は、逃げる事を提案したのだが。ルリ様はそんな私を不思議そうに見ながら
「え、なんで逃げるの?」
戦う気満々だった。正気を疑って、今すぐここから逃げたかったが、本来ルリ様を守る役目を請け負ってるのに、逃げるなんてできない。というか、腰が抜けて動けない。
「もう、やだぁ」
私は気づかぬうちに、そんな事を口走っていた。この非常識な状況は、私の心を幼稚化させるには、十分だったと思う。
そこからの事は、よく覚えていない。
何か暖かい感触がして、目が覚める。目を開けるとシオン様の妹である、シャロさんの顔が見えた。
それも、ただ見えるわけじゃない。私が下からシャロさんの顔を見上げてる。
「あ~、よかった~、目が覚めたんだね~」
そう言いながら、私に対して満面の笑みを見せる。私は楽園に来たのでは、と錯覚しそうになる。私にはベルがいるのに。惚れちゃいそう。
そして、今気づいたがこの暖かい感触は、シャロさんの膝だ。私は膝枕をされてる。なんと言うか少し照れるが、それ以上の何かに目覚めそうになる。
私は、膝枕を堪能しながら、なにかを忘れてることに気づく。
「あ、魔物は!?」
思い出した。私あまりに、おかしな状況に現実逃避、もとい気絶したんだった。だが周囲を探れど、魔物の気配はない。どれぐらい寝ていたか分からないが、もし私が気絶した後、私を背負って撤退したのなら申し訳なさ過ぎる。
「魔物なら、とっくにルリちゃんと、キャロちゃんが倒したよ~」
「はい?」
聞き間違えだろうか、私は今、倒したと聞こえた。私が聞き直す前に、先ほどまで周りに居なかった、ルリ様とキャロさんが、こちらにやってくる。
「あ、起きたのね、気分は大丈夫かしら?」
「ビックリしたよ、いきなり倒れちゃうんだから」
「あの、ルリ様、先ほどの魔物はどうしたのですか?」
私は恐る恐る聞いた、いや実際、心のどこかで何となくその応えは分かっていた気がする。けれどありえないとも思っている。
ルリ様は、何もなかったかのように、私に言った。
「もう、全部倒したよ、何なら素材見る?」
「あ、いえ。結構です」
やっぱりと言うか、なんと言うか。まぁ予想通りではあった。
いや、普通はおかしいのだけれど、もう魔王だから、でいい気がしてきた。
(この人を護衛する必要って、あるのかな?)
「それより、気になってたのだけど、なんでヘラちゃんは、ルーちゃんの事を、ルリ様って呼んでるのかしら?」
確かに、ごもっともな疑問だ、正直無関係な人に事情を教えるのは、どうかとも思ったが。シオン様の妹だし、もしルリ様とシオン様が婚約されれば、キャロさんとシャロさんは、ルリ様の家族にもなるのだから、問題はないか。
とりあえず、私が魔族である話や、組織の話。ルリ様との関係を話した。その際、私の方に1つ疑問に思った事がある。
「私、シオン様の事を様付けしてるから、キャロさんとシャロさんも、様付けのほうがいい?」
「え、堅苦しいし、呼ばなくていいわ。どうせなら、さん付けじゃなくて、キャロちゃんって呼んで欲しいわ」
「私も~、シャロちゃんでいいよ~」
「わかった、キャロさ、んん。キャロちゃん、シャロちゃん。今日はありがとう」
このお礼は呼び方についてではない。強力な魔物から守ってもらった事そして、弱者だからといって、切り捨てられなかった事。
「さて、ヘラちゃんも起きたし、時間もあるから、先に進みましょうか」
「今日のルーちゃんは、グイグイ行くわね」
「まぁ~兄さんがいないし、止める人がいないからね~」
「私達は、強くなって。シオンと肩を並べられる。ようにならなくちゃ」
「「おおー」」
起き上がった私の手を引き、さらに森の奥の方に皆が進む。その雰囲気は明らかにやばいものだった。
(シオン様、ごめんなさい。私にルリ様を止めるのは無理です)
心の中で謝罪しながら。私にとって更なる地獄に向かっていった。
ベル「ヘラ、大丈夫です?」
ヘラ「ごめんベル、今だけは甘えさせて。私には荷が重すぎたわ」
ベル「い、一体何が!?」




