誰もが驚くような事
そろそろ、この合宿の後半戦に入る予定です(予定)
「ど・う・し・て、そうなったか、教えてくれないかな」
最後に合宿施設に帰ってきた、俺達にフォルテ先生が詰め寄って来る。フォルテ先生は、先生としての口調も忘れ、素の状態の、冒険者のフォルテさんになるぐらいの、衝撃を受けている。
何を説明しなければいけないのか、それは1つ。将太と腕組みしながら一緒に来た。女性の事だ。
話は少しは、少し前にさかのぼる。
「一目惚れした、って言われたのは、凄く嬉しいんっすけど。僕、合宿でここに来たんで、一緒に行動するのは、無理だと思うっすよ?」
「構わない、私は、あなたが行くところに付いていくだけ」
あ、ダメだ。リティスさん、物凄くクール系に見えて。話を一切聞かない人だ。
と、心の中で俺達は思った。俺はティターンさんに視線で「どうするんですか?」と聞いてみるも、「諦めて」と返されてしまった。
何か決めたら、その事を突き通そうとする、固い意思がリティスさんに有るのだろう。まぁ諦めることを知らない、とも言うけど。
「で、でも。僕といると危険な事にも、巻き込まれるかもしれないっすよ」
「大丈夫、私こう見えても強いから。流石にお母様には負けるけど」
何とか、諦めさせようと将太が言ってみるが、全く動じないリティスさん。そして最終的には、
「私では、あなたに釣り合いませんか?」
「そんなことないっす、むしろ僕からお願いしたいっす」
上目遣い、ちょっと高めの声で迫られた将太は、見事に落とされてしまった。
ちょっとキリッとした顔で、手を握る将太。突然手を握られて、顔を赤める、リティスさん。
見てるこっちが恥ずかしくなる。
「若いっていいわね~、ねぇあなた」
「うむ、将太殿もリティス穣を、大切にするのだぞ」
そんな、将太たちの様子を暖かく見守る、エルフの夫婦。
「将太君凄いです」
「まさか、初めての土地で、あんなに綺麗な女性に好かれるなんて、将太もすみに置けないな」
将太の様子を、遠い目をしながら見る、ベルとノア。
結局、俺達はその後も、探索などはしないで、フェータにいさせてもらった。
そして門限時間が迫り、施設に戻ろうとする時には、しっかりと将太と腕を組みながら付いてくるリティスさん。
そして今に戻る。
「と言うわけで、将太は、精霊の住む場所で恋人を作り、今に至ります」
「うぅ、頭が、問題が、どうして、ただの合宿なのに」
今にも崩れ落ちそうな勢いで、頭を抱える先生。
誰が予想できただろうか、物凄く強い魔物と出会った、でもなく。入手難易度の高い、薬草などを手に入れた、でもなく。毎年行われてる、合宿先で精霊の住む場所を見つけて、しかも、そこの長の娘を恋人にする生徒がいるなんて。
「でも、どうしましょう。この際このありえない現実を認識したとして。リティスさんが寝る部屋がありません。普段なら空き部屋の1つや2つあるのですが、今年はないんです」
いつもの先生としての口調に戻りつつ、新たに出る問題を提示する。だが、
「大丈夫です。私は将太様と一緒の部屋で寝るので」
ハッキリと言い切る、リティスさん。確かにそれなら、なにも問題ない...わけないよな。そもそも普通、1人用の部屋に男女で寝るなんて事が許されるわけないだろ。
「あ、それなら大丈夫ですね。じゃあリティスさんは、将太君の部屋で過ごしてください」
何故こうも、あっさり許可が出るのか、不思議でしょうがない。あれか、未だに日本人としての常識が頭にあるからか、この世界では恋人になれば、同じ部屋に寝泊りしていいものなのか?
「ありがとうございます。フォルテ先生。じゃあ将太様、部屋に案内してください」
先生に一礼して、将太と腕を組み直し、施設に入っていく。
そんな2人を、俺とノアとベルと先生は眺める事しかできなかった。
「まぁ、そういう事があってね。なんか疲れたよ」
「そうなのね、さっきの知らない女性がリティスさんなんだ」
現在、夕飯前の自由時間、俺の部屋で、ルリと2人お互い今日あった事の報告をし合っていた。
まぁ、報告と言う名の部屋デートみたいなもので、その証拠に俺とルリはぴったり肩をくっ付け合っている。
ルリの髪からほんのりいい香りがして、ドキドキは止まらない。
「それよりさっきの話だけど、実際シオンはどう思うの?」
「正直分からんな、俺も帰ってくるまでの間、〈索敵〉で確認してたけど。それらしい魔物の気配はなかった」
封印から開放された魔物。その正体が何なのか探ろうとしたけど。失敗に終った。やはり気配を完全に消してるか、そもそも、まだ封印されてるか。
この事は、俺の信用できる者なら、話してもいいと、ティターンさんから許可をもらっている。そこで明日から、ある事をしようと計画していた。
「シオン、そろそろ集まってると思うし、私達も行きましょう」
部屋デートは終了、ちょっと名残惜しいが。呼んだのが俺なので行かないわけにもいかない。
俺達が向かったのは、施設の中にある大きな一室。そこはミーティングなどで使われる場所らしい。
そこにはすでに、俺とルリ以外のクラスメイト。そしてフォルテ先生とリティスさんがいる。
「夕食前の自由時間に急遽、集まってもらって悪い。今から説明する事は知ってる人もいると思うが、改めて聞いて欲しい」
そこから俺は、今日あった事をクラスの皆に向けて話した。将太達、知ってるメンバーは、俺の話を頷きながら聞いているが、知らなかったメンバーは、いきなり過ぎる事に衝撃を隠せなかった。
「な、なるほど。将太と一緒に居る女性が誰なのか、とりあえず1つの疑問は解決した」
アレスは、自分に言い聞かせるように納得した。確かに今まではいなかったのに、いきなり将太と一緒に行動してるリティスのことが気になるのは当然だろう。しかもあの美貌だし、男とか女とか関係なく気になると思う。
「初めまして、さっきシオン君が軽く紹介してましたけど、改めて。私は精霊族のリティスと言います。今後将太様と一緒に行動していますので、よろしくお願いします」
リティスさんの方から、改めて軽く自己紹介をする。なんと言うか、お辞儀してるだけなの、1つ1つの行動が美しく見えるんだよな。
ちょっと話が逸れてしまったが。ここで話を戻す。
「話を戻すが、さっき言った、魔物がいるとして、それに対抗できるのは、俺とルリだと、ティターンさんは言っていた。と言う事で、明日と明後日は全員で行動したいと思う。理由はこの中の誰かが遭遇しても、直ぐ対処できるから。何か意見のある奴いるか?」
「シオンにぃ、全員で行動するのは、いいんだけれど。具体的に何をするとか決めてるのかしら?」
キャロが明日からの事について質問してくる。だがそこは、俺にも考えがある。
「大丈夫だ、問題ない。俺にも考えはある。その事に関しては明日の朝。また改めて説明する。他に何か質問ある人いないか?」
周りを見るが、特に何か思ってるクラスメイトはいなさそうだ。時間もいい時間なので、ここで解散して。各自明日に備えてもらうようにした。
その後は夕食を食べ。寝るだけで今日の一日は終る。色々ありすぎて疲れたが、明日の方が、疲れるかもしれないと、思うと。いつもより早く寝て。熟睡して、疲労回復に専念した。
このときの俺は、明日あんな事が起きるなんて、思ってもいなかった。
アレス「ノア、精霊の話は本当なのか?」
ノア「本当です、アレス様。この目でしっかり確認しました」
アレス「やはり父上の話は本当だったのか、だとすれば...」




