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契約成立

この合宿の話、まだまだ続きます。

「この森の異変を、調べてきてください」


ティターンさんは確かにそう言った。森に詳しい精霊が、しかも自分達が住んでる森の異変の調査を、人間に任せようとしてるのだ。


「どういった異変かも分かってないんですか?」


「大体の予測は付いています」


「それは一体?」


「この森の、最深部に封印されたとされる。魔物が動き出したのではないかと思っています」


昔、何かの本で見たことがあった気がする。森の最深部には何かしら強力な魔物が封印されてると。

そして、それは、ここズイーゲルも例外ではないのだろう。

その魔物の正体までは分からないが、かなりの人数、そしてかなりの種族が手を取り合い。初めて封印できる。それほど強力な魔物。

仮に本当だとしたら、かなりまずい状況かもしれない。


「もし、もし仮に、その魔物の封印が破られていて、その魔物がこの森の中のどこかにいる場合。俺達が見つけても、どうにか出来るとは思えないんですが」


「いえ、シオン君のたちの実力なら、何とかなると思いますよ。魔物はまだ封印から、開放されたばかりだと思います」


「どうして開放されたばかりと、思うんですか?」


予測と言う割りに、かなり細かい所まで、考えているティターンさん。やはり流石と言うべきか、精霊は凄いと言うべきか。


「その理由は、森の最深部付近で強力な気配を感じたのが、数日前だからです。もちろんそれが、本当に封印から開放された魔物かどうかは、断定できません。この森の最深部ともなれば、強力な魔物はたくさんいます。ただその反応は妙だったんです。私が特定する前に、気配が消えたんです。本当に一瞬で。おそらく私にばれるのを避けるために、自分で気配を消したんだと思っています」


確かに、強力な魔物の気配が一瞬で消えるのは、おかしな事だ。だが気配が消えたのでは、なく。魔物自身が()()()のなら、説明も付く。

それに強力な魔物の中には、意思を持った魔物もいると、本で目にした事がある。その意思は友好な意思ではなく、邪悪な意思。それは、殺意や憎悪のような黒い意思だけで形成される感情。

そんな魔物は、どのみち、討伐か封印しなきゃならない。


「開放されたばかりでも、何かできるとは思えません。俺の実力を過大評価しすぎですよ」


「「「どの口が」」」


若干3名ほど、俺と一緒に来たメンバーが突っ込みを入れてくるが、俺は気にしない。

俺にもできないことはある。と思いたい。


「いえ、私は過大評価しているわけではないです。ドリアーナとリーランの話を聞き。シオン君とルリちゃん?の2人で戦えば、倒すこともできます」


なるほど、打算的なことではなく。話を聞き、考え、結論を出す。そこまで考えての頼みとなれば、俺に断る事はできないな。


「わかりました。異変は調べておきます。結果がどうなったかは、俺達の合宿が終わり次第、また改めて報告に来ます。それでいいですか?」


「えぇ、お願いします。どうかこの森の事ですが力になってください」


これは決して、ギルドを通した、正式な依頼ではない。

だけど、契約が結ばれるのに、言葉だけで済まされるのもどうかと思う。

と言うことで、俺は腕を出し、握手を求めた。ティターンさんもそれを見て、何となく察したのか、俺の握手に応えると同時に、改めて「お願いします」と言ってきた。


ここで、初めて俺は、公式ではないが依頼を受け持った。いよいよ持って、冒険者を目指す者らしく、なってきたと思う。


俺が依頼を受けると同時に、何となくだが、周りの空気が和らいだ気がする。まぁ、それだけティターンさんも切羽詰ってたのだろう。

一息つくと、あることに気が付く。俺達がいる部屋の扉の置くから、こちらの様子をジィーと見つめる瞳があった。


俺と目が合って、しばらく見つめ合い。部屋に入ってきた。

入ってきたのは、女性で、おそらく精霊族。この部屋にいる、ティターンさんとは対照的で、スラリと伸びた足、服の上からでも分かる細いウエスト、控えめではあるが、女性として出るところは、出ていて、モデル体系とは、まさしくこの事を言うのだと思わせるぐらい美しかった。

俺達人間組みは、その美貌に思わず目が奪われてしまう。


「あら、リティスどうしたの?」


「部屋に入ろうと思ったら、お母様達が、何か大事なお話をしてるっぽくて、入る機会を待っていたんです」


まじか!?このリティスって子はティターンさんの娘さんだったのか!?だがよく見れば、目はキリッとしているが、目元はそっくりだし、緑色の髪色が二人とも一緒だった。


部屋に入ってきたリティスさんは、そのまま自然な感じで()()()()()座った。


そして将太のことを見ながら一言


「私、あなたに一目惚れしました」


顔を少し赤らめ、俯きながら掠れそうな声で言った。

その言葉に俺を含め全員が驚く。将太なんて、完璧に固まっていた。


「私、この人に付いていくから、ダメって言われても付いていくから」


知らなかった、お調子者の将太がモテルなんて。まぁたしかに、将太は見た目だけならイケメンな気もするけど、それにしてもいきなり過ぎる。

流石にティターンさんも許可は出さないだろう...


「その目は、本気なのね。いいわ、リティスの好きなようにしなさい」


なんと、あっさり許可下りちゃったよ。さっきまでの重い空気ではないけど。なんだか変な空気になってしまった。

そして、その変な空気のまま時間は過ぎていった。


花蓮「むむ、お姉ちゃんセンサーに、何か反応あり」


将太「う、寒気が」


リティス「大丈夫ですか、将太様」

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