特別回:クリスマスの1日
このお話は勇者との話も終り、かなり時間の進んだ物語になっています。
そして普段23時投稿ですが、今回と年末年始に限り特別に0投稿をします。
「はぁ、寒すぎ」
毛布に包まりながら、いつもの時間に目が覚める。この時期は気温が物凄く低くてベットから出るのが辛い。
季節は冬、今は12月、この世界に来てから13回目の冬を過ごそうとしていた。この世界は地球よりの季節の温度差がはっきりしていて。夏は物凄く暑いし、冬は物凄く寒い。まぁ季節なんて概念が生まれたのもここ数百年の間らしいけど。
「うぅ、寒い、凍えそうだわ、シオン毛布ちょうだい」
隣で俺から毛布を奪おうとする少女がいた、ルリである。
ルリは居候の少女でこの世界の魔王の娘、そして俺の彼女でもある。
ルリとは学園入学の時に出会い、ある事件の後に付き合い始めた、その時の事を話したら、お互いが初めからなんとなく意識していたことがわかった。
ルリが居候してるのは、学園に通うのに王都の宿や学園の寮では不安と、ルリのお母さんアイラさんが言ったからだ。まぁそのおかげで俺はルリと付き合えたようなものだし、アイラさんには感謝している。
「ねぇ、本当に寒いから、毛布を早くちょうだい」
「俺、鍛錬行くけど今日は来ない?」
俺が鍛錬に行くというと、無言で立ち上がり自分の部屋に戻っていった。何故ルリの部屋があるのに、俺の部屋で寝てるかというと、寝るときも一緒に居たいらしい。そんな事言われたら断れるはずもなく。今では毎晩一緒に寝ている。
ちなみに居候し始めた時も時々俺の部屋で寝てることがあった。その時はただ寝ぼけていただけらしいが。あんな美少女が起きた時に横にいると心臓の鼓動が早くなるに決まっていた。
「ふぅ、お疲れルリ」
「シオンも、お疲れ様。私先にシャワー行っていい?」
「いいよ」
俺とルリは朝の鍛錬を終えて部屋に戻る。いつもなら学園の準備をしてるのだが今は冬季休みで学園も暫くはない、俺は私服の容易をして、シャワーを待つ。今日は俺にとってとても大事な日だから。
今日は12月25日、地球で言うならクリスマスの日だ。彼女のいる俺は始めてクリスマスデートをすることができた。今まで彼女いない歴=年齢だった俺は意味のないイベントだったが、今年は違う。
元々この世界にはクリスマスなんて文化はなかったらしいが。それもここ数百年で定着したらしい。季節の件といい、地球にいた頃のイベント、正月やハロウィン、クリスマス、それに暦の事だったり。こっちに来た転移者が色々と文化を発展させすぎな気もする。
「おはよう、って誰もいない?あぁイブであれだけ騒げば誰も起きないか」
今日のデートの仕度をして。リビングに向かうと。いつもなら朝ご飯を作ってる母さんやそれを手伝う妹達はいない。クリスマスイブで騒いで皆疲れてるのだろう。今日は何もない日だから別に俺が起こしに行く必要もない。とりあえず俺とルリ、2人分の朝食を用意してルリを待った。
「シオン、先シャワーありがと。あぁやっぱり皆起きてないのね」
「ちょルリその格好で歩き回るなって」
「?私の裸ぐらいハプニングで何度か見たことあるでしょ?今更何恥ずかしがってるの?」
「いいから、部屋行って着替えてきて。それと朝食作り終わったから食べといてね、それと予定どうり王城付近で10時ぐらいに集合な」
「はーい。じゃあ、先食べて出てるわね」
シャワーから出たばかりのルリは、下着とタオル一枚というとんでもない格好でやって来た。まぁルリの行ってる通り、裸を見るのは初めてじゃないが、それは全て事故である。決して覗いたりお願いしたりした事はない。夜一緒に寝たりするけど、そういう事に発展した事もないし。
俺も入れ違いですぐにシャワーに入る。何故一緒に住んでるのに、一緒に行かないのか、それはそっちの方が新鮮でドキドキできると思ったからで、2人で話し合って今日はそうすると決まったからだ。
俺はシャワーを浴び終わって、着替え朝食を食べたら。家を出た。
待ち合わせの30分前、俺はすでに集合場所について待っていた。
(はぁ~寒い、それにしても今日も人が多いな)
人は多いが今日は武装してる人も少ない、いつもなら冒険者達がギルドに向かったりするから武装したごっつい人も、ほとんど全ての人が私服で王都を出歩いてる。
「あれ、なんでシオンもういるの?」
俺が周りの景色を見ていたら。ルリが慌てた様子で駆け寄ってきた。
ルリの服装は白のモコモコの上着とこれまた白のモコモコのスカートの全身真っ白コーデ。なんていうか雪の妖精みたい。
「ルリ、とっても可愛いよ」
俺は素直にほめる。実際物凄く可愛いし人前じゃなきゃ叫んでるかもしれない。
現に周りの男性がルリの可愛さに見とれている。
「え、あ、ありがとう。ってちがう、なんでこんな早い時間にいるの?!」
一瞬照れたと思ったら、すぐに怒り始める。ルリはどんな表情でも可愛い。
俺が何故早くこの場所にいるのかというと、地球の時に見たラブコメのお約束「ごめん、まった」、「全然、今来たところだよ」をやりたかったからだ。でもうまくいかなかった。
「確かに俺は早いけど、ここで俺と合流できったことは、ルリもこの時間から待つ予定だったんだよね?」
「ウッ、それより行きましょ」
分が悪くなりそうなのを察してか、話を強引に終らせて、俺の手をとり、歩き始めた。もちろん普通に繋いでるわけじゃない。今の状態は、恋人繋ぎってやつだ。
「ところで、ルリ行きたいお店とかあるのか?」
「え、特にないけど?シオンあるの?」
一緒に歩いてはいるが、俺達はお互いに目的地はない。そして行きたい場所も事前には決めてない。何となく良さそうな店があったらそこに入って行くのが、俺達のデートの仕方。だけど今日は少し違う。
「それじゃ悪いんだけど、一箇所行きたいアクセサリー店があるんだ、行ってもいい?」
「別に構わないけど?それじゃ行きましょ」
俺はルリを連れて、目的地であるアクセサリー店を目指す。
そこは見るからにオシャレな建物であり、かなり大きいお店。実は貴族様達がよく利用する。名店だったりもする。本来は一般客は来れないらしいが、事前にアレスに紹介状を書いてもらい、今日は特別に買い物できる。
「ルリ、悪いけど、お店の人と話があるから。適当にみててくれ」
「りょうかーい」
一旦ルリと離れてカウンターに急ぐ、そこにはサンタコスをしてる店員がいる。
「いらっしゃいませ、本日はどのようなものをお求めですか?」
「前に、ここに来た時に一個商品を頼んでいまして、それを受け取りに来ました」
そう言いながら、一枚の紙を見せる。紙を確認した店員さんはすぐに裏に行き、丁寧に包装された物を渡してくれた。
「今日は他に、何か買っていきますか?」
「はい、後いくつか買わせていただきます」
「わかりました、ではごゆっくり」
俺は商品をもらった後、ルリと合流して妹達のプレゼントを一緒に選んでもらった。
「それにしても、さすが妹思いのお兄ちゃんだね」
買い物が終った後、俺達はよく利用する喫茶店でお昼を食べていた。このお店はデートの時によく利用させてもらって、すでに店員とも楽しく話すぐらい仲がいい。今日は話しかけてこないで、遠巻きに俺達の事を見ている。まぁきっと空気を呼んでくれたんだろう。
「まぁな、大事な妹達だから、それより午後は行きたい場所はあるか?午前は俺の用事で付き合ってもらったし、俺はどこにでも付いていくよ」
「うーん、私は特にないし、いつもみたいに適当に歩きましょ」
お昼ご飯を食べ終わった俺達は、店を出て特に行くあてもなく歩き回った。
そこで見た景色の話をしたり。お互いの事を語ったり。
「なぁ、ルリ王都は楽しいか?」
ルリは元々魔族の領土に住んでいた。まだこっちに来て1年、不安などもあるんじゃないか、そんな風に思った。
だけどルリは不思議そうな顔をして俺に尋ねた。
「どうして?私は楽しいと思ってるよ、シオン達によくしてもらって。クラスメイトとも仲良くなって。楽しくないわけがないよ」
曇りのない笑顔で答えるルリを見て、安心した。初めの頃は「魔王の娘だから、特別な存在だから」と若干ネガティブだったけど、今はそうでもないらしい。
その後もいろんな場所に行って、2人で色々話して、最高のデートを満喫した。
「「ただいま」」
「あら、お帰り。もう夜ご飯もできてるわよ」
2人で家に帰り、それを母さんが出迎えてくれる。さすがに夕方も過ぎれば、みんな普通に起きていて、リビングで夕食の準備などをしていた。
「あ、シオンにぃとルーちゃんお帰り、外は寒いのに、2人は本当にアツアツね」
「兄さんにルリちゃんお帰り~」
「キャロ、からかうなよ」
「なに、シオンにぃ照れてるの?」
「お前なぁ」
「シオン、落ち着いて」
ルリに止められて、一旦落ち着く。プレゼント買ってきて損した気分。
最近、よくキャロに煽られる。この前なんかデートしてる時にばったり会って「リア充爆発しろ」とか言っていた。どこでそんな言葉、覚えてくるんだよ。
「それより2人には、プレゼントを買ってきた、はいこれ、メリークリスマス」
「え、うそ、プレゼント、ありがとうシオンにぃ」
「私のもあるんだ~兄さんありがと~」
2人に贈ったのは腕輪。キャロには、疲労軽減の付いた物で、シャロには、魔力増加の物どちらも、身に付けやすさと、性能を重視して選んだものだったが、喜んでもらってなによりだ。
「よし、ご飯の準備も終ったし、シオンとルリちゃんの今日の話を食べながら聞くとしようか、なぁミリア」
「そうねフィン、準備ありがと、じゃみんな席について、ご飯の時間よ」
今までキッチンの方にいた、母さん達も集まり夜ご飯の時間になる。そこで今日の事を事細かく、皆に聞かれて大変だった。
「シオン達、僕達は先に部屋に行くから、あまり遅くまで起きてちゃダメだよ。おやすみ」
「うん、みんなおやすみ」
「お義父さん達、おやすみなさい」
夕食を食べ終えてからかなり時間が経ち、外はほとんど何も見えないぐらい真っ暗になっている。
「なぁルリ、庭に行かないか?」
「ん?いいよ」
俺はルリを連れ出して、いつも鍛錬などをしている庭に出た。そこで2人で仰向けになり空を眺めた。
周りは真っ暗で、他の家の電気も付いていない。あるのは空にある月と星の輝き。俺もルリも無言でそれを眺めていた。
だがずっと無言でもしょうがないので俺は体を起こした。
「ルリ」
「どうしたの?」
「月が綺麗だね」
「...そうね、綺麗ね」
やはり伝わらないか。今の月が綺麗と言うのは、地球の頃に聞いたプロポーズの一種類らしいけど。伝わらないのはしょうがない。そもそも伝わるなんて思ってなかったから。
ルリの方を向き改めて本題に入る。
「ルリ、これプレゼント、メリークリスマス。ってもうクリスマスも終っちゃうけど」
俺は〈ディメンションバック〉の中からルリ用のプレゼントを渡す。
「中見てもいい?」
「どうぞ」
丁寧に包装された包装紙を取り、中から箱が出てくる。その箱を開けると、金のネックレスが入っている。ルリはそれを手に取り自分の首につけて、俺に見せるようにした。
「どう似合ってる?」
「あぁ、さいっこう」
「うん、ありがとう。それじゃ部屋に戻りましょ」
プレゼントも渡せて、もう今日は満足していた。部屋に入りベットにダイブしようとしたら。ルリに止められた。
何かと思って振り向くと、ルリがすぐ近くにいて。俺の唇を奪った。
「ねぇ、シオン私からもプレゼントがあるんだ」
そう言って、ルリは俺をベットに押し倒す。ルリにそういう知識があるっぽくて俺はビックリ。まだ13歳なのに。
「いいのかルリ、自分が何をしようとしてるのか分かってるのか?」
キスは、何度かしたことあったが、ここまでに至った事はない。口では注意してるが、内心は歓喜している。
「私じゃ不満?」
「ハハ、愚問だね」
そうして、聖なる夜が過ぎても、俺とルリはお互いを求めるように、ベットの上で絡めあった。
そんな風にして彼女との最高なクリスマスを過ごしたのだった。
フィン「そういえば、僕達シオンから何も貰ってないね」
ミリア「まぁ、シオンがいることが私達にとってのプレゼントなんじゃない」
フィン「それもそうか」




