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王族としての仕事

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「騒がしいな」


耳をすませば学園内でいろんな先生の声が聞こえる。


今日は転移者が学園に来て、俺たち生徒を指導してくれる、ちょっとしたイベントになっている。

学園内もどこか忙しい雰囲気がただよっていた。


「そうだね~フォルテ先生とかも忙しそうだったもんね~」


現在、俺達はいつもの四人でお喋りをしてる最中だった。


花蓮さんを救ってから一週間、ちょくちょくお見舞いなどに行っているが、花蓮さんはもう完治したといっても間違えないだろう。昨日なんかうちの親とパーティー組んでクエストにいったらしく。父さん達いわく


「間違いなく、王都でもかなり凄腕の治癒術士(ヒーラー)だと思ったね」


「そうね、回復のタイミングもバッチリだったけど、細かい気遣いもよくできていて、パーティー内の精神状態もこまめに把握しようとしていたわね。私あそこまでいい子はじめてみたかも」


と絶賛していた。


「シオンちょっといいか?」


俺達が話していると珍しくこの国の王子、アレスが俺に話しかけてきた。

普段、別に接点があるわけではない。クラスないでも必要な会話か、ちょっとした雑談ぐらいしかしない。

そもそも俺は普段から積極的にクラスメイトと会話などしないから、本当に珍しい。


「まぁ、別にいいけど、どうした?」


俺は軽く答える。ちなみにアレスに対してタメ口で話してるのは、このクラス、いやこの学園の中では俺だけだ。

別にアレスがそうさせてるわけではないが、何故かみんな自然と、様呼び、敬語になってしまうらしい。


突然アレスは俺の耳元まで近づいてきて、周りに聞こえないように小声で言った。


「ちょっと、聞きたいことがある。他の人がいる前だとまずいから場所を変えたい」


何かの面倒ごとだろう。そうとしか思えない。

だいたいあるあるで、学園、王子、同級生、転生者、秘密ごと、が揃うと何かのイベントしか思いつかない。

俺はこういう残念な頭なのだ。


声は出さず無言で頷きアレスと2人で別の部屋に移動する事にした。


「キャロたち、悪いけどちょっと話があるから、行ってくる。すぐ戻るから待ってて」


「わかったわ」


「はーい」


「行ってらしゃい、シオン」


皆にはクラスで待ってもらい、誰もいない教室でアレスと2人きりになる。

これがルリとなら、どれだけドキドキするだろうか。


「それでアレス、話って?」


「すまないが、ちょっと待ってくれ」


そういうとアレスは壁全体を見渡したり、扉の方を確認し始めた。そして


「〈音声遮断〉〈気配遮断〉〈反魔法(アンチマジック)〉」


魔法を発動し始める。そして終ると同時に「これで大丈夫だろうと」アレスは息をついた。


部屋にかけられた三つの魔法が今回の話の重大性を物語ってる。

でも俺、アレスとそこまで大事な話あったっけ?


「シオン、急に声をかけてしまって悪かったな」


「いや、別に大丈夫。それで話って?完全に外と隔離してまで、重要な事なのか?」


重要だと思っているが、あえて聞いてみる。

それと同時に俺は、構えはしないが何があってもいいように神経をめぐらせた。


そもそも大事な話や、聞かれたくない話がある場合。〈音声遮断〉〈気配遮断〉を使う事はあると思うが〈反魔法(アンチマジック)〉をアレスが使った時点ですでに警戒態勢に入った。


反魔法(アンチマジック)〉はその空間に対する魔法を無効化する、もちろん中にいる人物は、使用者以外は魔法を使う事はできない。つまり暗殺やら殺害やらするには最高な空間が作り出せるわけだ。

まぁ、そんな事アレスがするとは思っていないけど、念には念をという奴だ。


「そうだな、まぁかなり重要だ、だから〈反魔法(アンチマジック)〉まで使ったわけだし。さて今日は忙しいし早めに済ませようか」


そう言って、今まで以上に真剣な表情になったアレス。もしかしたら、俺が神に合った事があるのが、ばれたのじゃないかと焦る。そう思わされるほど、アレスの気迫は凄かった。


「質問は つだ、1つ目は、蒼井花蓮さんの事についてだ」


とりあえず、神がらみじゃなくてホッとする。だけど花蓮さんの事でもいえない事はある。それはたとえアレスが相手でもだ。


「知っての通り、僕はこの国の王子だ。それでこの王都にいる転移者の人とは基本的に面識がある。将太のお姉さん、花蓮さんが【バジリスク】の状態異常を受けて、倒れてから。将太に助けを求められた。もちろん僕はできる限りのことをおこなった。が、何もできなかった」


その表情はとても悔しそうで拳を握って少し震えている。王族の権力とかを使っても治せないのは、まぁしょうがないだろう。なんせ状態異常のレベルがおかしかったし。


「だけど、花蓮さんは治った。数日前城に来て報告してくれた。正確には治してもらったらしい。シオンという少年に...それはお前の事だよな?」


「確かに、治したのは俺だ」


あぁ、言ってしまったか。口止めしてなかったのを少し後悔する。だって治したのがわかった、という事は


「やっぱりか、頼む。どんな物にかかっていたか、そしてその治し方を教えて欲しい!」


そうなるよな、詳細は知らずにはいられない。未知の事は知りたくなってしまう、しかも知ってアレスは損をしない内容だから。


「はぁ、まぁそうなるよな。っわかった花蓮さんの体に何が起こったかは教える。だけどその治し方は言えない、それは治す上でその素材をくれた人との条件だから」


「そうか、わかった。とりあえず詳細だけ教えてもらえれば大丈夫だ」


とりあえず、花蓮さんにかかった5つの状態異常について簡単に説明した。5つと言ったが実際、説明したのは、寿命半減 終りなき苦痛の2つだけだ。終りなき苦痛が勇者パーティーの誰かが仕掛けたものだと言った時のアレスの顔はやばかった。


「そうか、そんな状態異常が...そしてにわかには信じられないが勇者様のパーティーの誰かがやったと、いう事だな。だが確かにその可能性以外は考えられないのも事実ではあるが...」


「ところでアレス、2つ目の質問ってなんだ?」


さっきまで、悩みで頭パンクしそうだった目の前の奴はすぐに表情を切り替えた。

さすが王族だな、いちいち顔に出てたらやっていけないのだろう。


「実は、こっちの方が重要だったりするんだが。シオン、お前は転移者なのか?」


...は?今なんていったんだ?聞き間違えかな?


「ごめん、なんていった?」


「だから、実は転移者なのかと思った」


聞き間違えではなかった。どうするか、記憶操作して、なかった事にしてしまおうかな。

あまり知られたくないんだよな。


「なんでそんな風に思った?俺は一応この世界で生まれて、いろいろあって、今の父さんに拾われて育ったんだが」


「実は、花蓮さんと将太と話してる時に、にほん?と言う別の世界の話になってな、その話ならお前もいた方がいいって、将太が言っていてな。もしかしたらと思ったんだ」


あの野郎、やりやがったな。こうなったら説明しないわけにはいかないじゃないか!

俺は頭が痛くなる。いっそこの場から消えようかとも思ったが、今後も学園で会うたびに聞かれてたんじゃ、他の人にばれるかもしれない。


「はぁ、実はな...」


俺は正直に転移者であることを話した。もちろん神の事やスキルの事など隠す部分ははぐらかしつつ。アレスもその説明で、取り合えず納得してくれたようだ。

何故、転移者かどうか確認したのは。どうやら、王都の中で転移者の名簿らしきものあるらしく、もしそうなら、それに登録するらしい。


「なるほど、転生者か。この話、父上に話してもいいか?」


「アレンの父さんって事は国王様だろ。なら別にいいよ。だけど広げないでくれよ、知られると厄介な事もあるからな」


「わかった、約束しよう」


俺の条件を承諾した瞬間、部屋にかかった魔法が解けた。まぁアレスが解いただけなんだが。

部屋を出ると目の前にはアレスの護衛である、ハンス、ハナ、アリンが立っていた。


「うわ、ビックリした。何やってんの?」


「ただ、アレス様をお待ちしているだけだ」


「中で、何を話してたの?ハナも知りたい」


「やめなさい、ハナ。部屋から出てきても詮索はするなって仰っていたでしょ」


「ちぇ~、まぁそっか。仕方ないよね」


なんて言うか、この護衛組みの中で、ハナだけ個性が飛び出しすぎだよな。

ハンスも、アリンも基本、表情にでないタイプっぽいから。何を思ってるのか分かりずらいが。ハナだけはわかりやすい。喜怒哀楽がはっきりしてるから。まぁ13才なんてこれぐらいが普通だろ。むしろ2人は少し大人びやしてないか?


「ま、まぁ、教えてやれなくてすまんな、先教室戻ってるぞ」


「あぁ、俺たちもアレス様が出てきたらすぐ戻る」


「じゃあねー」


「えぇ、また教室で」


3人と短く会話し教室に戻る。後からアレス達も戻ってくる。

そしてすぐにフォルテ先生が来て今日のイベントが始まろうとしていた。

シオン「おい、将太お前ポロッたな」


将太「え、急になんすか、って近づいて来ないでほしいっす!」


シオン「安心しな、痛いのは一瞬だけだ。歯食いしばれ!」


将太「い~や~だ~、こんなの理不尽っす」

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