花蓮さんの決断
「おはよう、そして初めまして」
「えええぇぇ!!」
俺は、朝の早い時間から、驚愕の声でうるさくしてしまった。
まさか、花蓮さんが起きているなんて、思いもしていなかった。
「うぅ~ん、シオン?どう...した..の?あれ?」
「シオン君、いきなり大声出して、どうしたん...すか?あれ?」
俺の声で将太もルリも起きてしまった。2人は不思議そうに俺を見たが、その途中で花蓮さんの事も見た。そして思考が停止している。
こういう時、俺が何ていうべきか心得ている。
「あ、ありのまま今起こったことを話すぜ、目が覚めて周りを見たらよ~、花蓮さんが起きてたんだ、夢とか幻覚とかそんなチャチなもんじゃない。これは間違いなく現実だったんだ」
俺の姿を見て、ルリは「こいつなに言ってんの、頭おかしくなった?」という目をしている。将太の奴は未だに放心状態。花蓮さんはネタを知ってるのか、笑えるのを堪えていた。
「ね、姉さん?本当に姉さんなの?これ夢とかじゃあない」
あまりの出来事に将太は口調すら崩れている。それほど目の前の光景は信じられないのだと思う。
それを分ってか花蓮さんは将太のほうを見て微笑みながら言った。
「私は、間違えなく将太のお姉ちゃんだよ。今まで辛い思いさせてごめんね」
「おね~ぢゃ~ん」
将太が泣きながら花蓮さん抱きついた。それを受け止めまるで子供をあやすように「よしよし、お姉ちゃんはここにいるよ~」と頭を撫でながら言っていた。
この場にいるのは無粋と思い、ルリとアイコンタクトをしようとする。ルリも同じ考えだったらしく俺の方を見ていて、お互い頷き気づかれないように外に出た。
「よかったね、シオン無事に助けられたみたいで」
部屋を移動してルリが俺に言ってきた。だが俺の中で心残りがないわけではない。
今回の事件の事、そしてエルフの里でシイナちゃんがくれた神草、あげればいろいろ気になることはある。だけど
「そうだな、もう少し問題はあるかもだけど、とりあえずはよかった」
今の一番の気持ちはこれだった。俺は元だが同じ日本人を助けられて嬉しくないはずがない。それにさっきのネタにも反応してくれたから。今後の話し相手にもなってくれるかも知れないし、とりあえずはいい結末をむかえられたと思う。
しばらくして、泣き止んだ将太が申し訳なさそうに俺たちのいる所まできて。また花蓮さんのいる部屋に案内された。
「さて、改めて、初めまして、私は蒼井花蓮、将太のお姉ちゃんです。2人とも本当にありがとうね」
花蓮さんはベットで座りながら自己紹介をする。顔は綺麗に整っており、髪はちょっとだけ茶色くて肩辺りまで伸びている。そして、一年以上寝てたとは思えないぐらい、体が引き締まっているのが服の上からでもよくわかる。
「はじめまして、俺はシオンです。将太君とは学園での友達です」
「はじめまして、私はルリです。まぁ私も将太君とは友達でいいのかな?」
ちょっと疑問に思ったのかルリは将太のほうをチラッと見る。将太は「僕達はもう友達ッす」といわんばかりの、いい笑顔だった。
考えてみれば、クラスで時々喋るぐらいで、ここまでしっかり話したのは、俺も昨日が初めてだと思い出した。だけど、まぁ友達って事で大丈夫だろう。将太も否定してないし、元日本人同士だし。
「シオン君と、ルリちゃんね、本当にありがとうね。私を助けてくれて。あなた達からすれば私なんて知らない人同然なのに、本当にありがとう」
俺からすれば助けれるなら、助けて当たり前だと思うが、しっかり感謝されるとやっぱり嬉しいと感じる。助けられて本当によかった、心からそう思う。
「ところで、2人は今何歳?」
「えっと、13歳です」
「私も13歳です」
たまにだけど自分の年齢が分んなくなることがある。だって、転生してからは13年だが、あっちの年齢とあわせると...考えたくない。
何故年齢なんか聞いたのか不思議だったか、次に花蓮さんは爆弾を持ってくるのだった。
「シオン君とルリちゃんって付き合ってるでしょ?!」
「「!!??」」
別に俺たちも隠してるわけではない、ただ言いふらしてないだけだ、だけど何故ばれたんだろう。
「その反応、図星だね~、まぁなんで分ったかというと、さっきシオン君が寝てるルリちゃんの頭を撫でながら凄くいい表情してるのを見たからなんだけど」
まじか、あれ見られてたのか、物凄く恥ずかしい。ルリなんか顔を少し赤くしながら小声で「シ~オ~ン~」と言いつつ俺を少し睨んできた。この仕草最高にたまらん。
「あ~ごほん、姉さんちょっといいっすか?」
この変な空気を変えようとしてか、将太が花蓮さんに話しかけた。花蓮さんは「ん~」と言いながら首を傾げた。
「今後どうするんすか?僕の友達に頼めば、しばらくは何もしなくても暮らせるぐらいの、お金は貰えるとおもうっすけど。まぁ姉さんの事は報告しなきゃいけないっすけど」
おそらく友達って言うのはアレスの事だろう。まぁたぶんだけど。
花蓮さんの方を見ると、どうやら答えは決まってるようだ。
「将太、お姉ちゃんね完治したら、また冒険者をやろうと思うの。あんな事があったけど。またやりたいんだ」
「そうっ...すか」
まぁやっぱり将太のほうは納得はできないだろう。あんな事があればしょうがない。
「将太、悪いが俺とルリは先に帰るぞ、後のことは家族で話す事だしな」
「そうね、そろそろ帰らないとね」
この場にこれ以上いてもしょうがない、今後話さなければいけない事はまだあるが、今じゃなくていいと思うし。
「あ、そうなのね、2人ともまた遊びに来てね。待ってるから」
「そうっすね、シオン君たちの家族も心配してると思うっすから、これ以上引き止めてもまずいっすからね」
「そういうことなので、花蓮さん、将太、また今度」
「さようなら、将太君、明日また学校で合いましょう」
こうして蒼井姉弟の家を出て、自分達の家に帰る。まだ昼前ではあるが今更学園にいくのも面倒なので2人でサボり、また王都デートをする事にした。
家に帰ってから、父さん達に煽られたり、からかられたのは言うまでもない。
花蓮「シオン君なんでジョ○ョネタ知ってるの?」
将太「それは、彼が元日本人だからっすよ」
花蓮「え!?そうだったの!?じゃあもっといろんなアニメの話しないとね」
将太(やべー姉さんのオタク魂に火がつきそうっす)




