二人の思いは夜空の下で...
今回と次のぐらいで2章が終わりになります。
ちなみに3章からはクラスメイトの関係を進展させる話にする予定です。
涼しい風が肌をなでる。どれぐらい寝てただろうか?
眠い目をこすりながら、部屋に戻ろうとしたとき、横に気配があることに気が付く。
そこにはルリが寝っ転がっていた。
「エヘ、起こしちゃったかな?」
ルリの笑顔に思わずドキッとしてしまう。そして一瞬にして目が覚めてしまう。
ルリはそのまま、何も言わずに俺の横にいた。
「.....」
「.....」
お互い無言で時が過ぎる、何か言をうとしても言葉が詰まってしまう。
というか、改めて意識すると、ルリの事が凄くかわいく見えて直視できなかった。
それでもチラチラと横顔を見てしまうのは、男のさがというやつか。
何度か見ていると、見られてる事に気づいたのかルリと目が合う、そしてニコっとっ笑ってくれた。
それを見て悶絶しそうになった。
改めて見るが、背中まで伸びた綺麗な銀髪。
そして12歳とは思えないぐらい整った顔立ち、もしかしたら魔族は普通の人より成長が早いのかも。
さらに笑った時のあどけない笑顔、もうなんとも言えないぐらい素晴らしいと思う。
結局ルリの事は考えてるが何も言葉は出てこない、だけどその沈黙の時をルリがやぶった。
「シオン、今日はごめんね迷惑かけちゃった」
「え、いや、迷惑なんて思ってないよ、逆に助けるのが遅くなってすまんな」
「アハハ、なんでシオンが謝るの?」
「まぁ、それもそうか」
俺の言葉の後また少しお互い黙ってしまう。
正直気まずい、この空気どうにかして変えたいと思うが、話題の変え方がわからない。
こういう時の自分のトーク力の無さに嫌気がさす。
「ねぇシオンちょっと私の事話してもいい?」
さっきと同じで沈黙を破ったのはルリだった、けどさっきと違ってルリは真剣な表情だった。
それを見て、俺は無言でうなずいた。
「私ね魔王の娘ってこともあって、昔よく狙われてたんだ、魔王の娘を売れば高くつくと思った人達だったり、私を誘拐して、それを人間の仕業に見せかけ、人間と戦争しようと思う人達だったり、私の中にある力を欲しがる人達だったり。理由はいっぱいあるけど、とりあえず狙われてたんだ。あ、私が言った人達って人間じゃなくて、魔族の人達ね。ちょっとややこしくてごめんね」
「そうなのか、てっきり人間に狙われてたと思ったよ」
正直意外だった、魔族同時で攫いとかはないと思ってた。なんと言うか魔族は好戦的なイメージの反面、同族同士は基本的に仲がいいイメージがあった。だが実際はそうではないらしい。
その後もルリは話を続けた。
「そんな事があってね、私は一時期家族や知り合い以外の人達が怖くて外に出れなかったんだ、でもその事をよくないと思ったお母さんが、魔族の土地から離れて、人間の学園に行ってみないかって提案してくれたの、始めは迷ったけどその時の私がダメなのは、私自身がよくわかってたから行くことにしたんだ。そして、その場所で私と同じ普通の人よりも強い子に出会った、それがシオン達ね。あの時はかなり勇気を出して話しかけたなぁ~正直手とか震えてたもん」
話してる最中のルリはコロコロと表情が変わった、悲しそうな顔をしたり、嬉しそうな顔をしたりでいそがしそうだった。
その後もまだ出会って数週間なのに、ルリの感情や思い出を一個一個丁寧に話してくれた。
そして今日の事、攫われた時何があったのかとか、その後俺に助けられて本当に嬉しかったとか。ルリは思ってたことの全てを話してくれたんだと思う。
そしてルリの話が終わり一呼吸置いた後、周りの空気が変わったように思えた。ルリの顔を見れば話し終えたはずなのに、いまだに真剣な表情のままだった。そして静かにルリが話し始める。
「私ねシオンの事が好きなんだ、それは友達としてもだし、異性としても好きなんだ。はじめてみた時から何か惹かれるものがあって、一目惚れってやつかな、その後も私が魔族だって知っても受け入れてくれたり、今日も助けに来てくれたでしょ、それでさらに好きになったんだ」
「そうか、そのなんだ、好きになってくれてありがとう」
「私は魔王の娘そして魔族、シオンとは種族が違うけど、私はシオンの事が大好きなんだ、だから私と付き合ってくれないかな?」
凄い魅力的な言葉だった。自分の好きな相手から告白されるのがこれほどまでに嬉しい事なのか、その気持にすぐ答えたいと思ったが、不意に自分の隠してる秘密が頭をよぎる、そしてルリも自分のことを話してくれたんだから、俺も話さなきゃいけないと思った。
好きになった相手に隠し事なんかしたくないと思った。
「俺もルリの事凄く好きだよ、本当ならその気持にすぐ答えてあげたいけど...俺には誰にも言ってない秘密があるんだ、それを聞いてもし気持が変わらないなら、俺と付き合って欲しい」
「...うん、わかった」
「俺は、別の世界から来た転生者なんだ、この世界には転移者はいるけど、たぶん転生者は俺だけ。自分で言うのもあれだけど、俺はかなり危険な存在だと思う、そんな俺でもいいか?」
俺の秘密を聞いたルリは、ポカーン、と口をあけてる。
やはりこんな意味のわからない奴なんて好きにはなれないよな。
我に返ったルリは俺をマジマジと見てこう言った。
「え、秘密って転生者って事だけ?」
まさかの返答に俺が、ポカーン、となった。
「シオンが転生者でも関係ないよ、シオンはシオンでしょ?」
俺が重大だと思ってた秘密は、ルリからしたらたいした事のない事で、そんなふうに言われたら、俺の中でまた一つ気持が整理できた。
「そっか、ルリからしたらそんなに重要な事じゃないんだな...なら俺の答えは決まってる。こんな俺でよければ付き合ってくれ」
俺の言葉を聴いたルリは少し泣いていた、嬉し涙だろうか。
そして涙が引いた後に改めて返事をしてくれた。
「こんな私でよければ、よろしくお願いします」
こうして、二人の特別な存在が夜空の下で思いを実らせたのであった。
シオン「ルリ、改めてよろしく」
ルリ「こちらこそ」




